今野敏さんデビューから40年!「今野敏の軌跡 作家生活40周年」記者発表と質疑応答!

今野敏さんデビュー・作家生活40周年

こんにちは、ブクログ通信です。

今野敏さんが1978年に「怪物が町にやってくる」で問題小説新人賞受賞でデビューして以来、今年2018年で作家生活40周年を迎えます。今野さんはエンタメ小説の書き手として190作超の作品を記しており、2006年『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞、2008年『果断』で山本周五郎賞・日本推理作家協会賞を受賞、2017年『隠蔽捜査』シリーズで吉川英治文庫賞を受賞し、高い評価を受けています。

1月19日、作家生活40周年を記念した記者発表会が開かれました。
 

今回ブクログではこの記者発表会に潜入し、その様子をお伝えします!

「今野敏の軌跡 作家生活40周年」記者発表会!今野敏さん登場!

記者発表会には多くの報道陣がつめかけ、今野さんを待ち構えていました。

今野敏さん記者会見
今野敏さん記者会見場モニター

この40周年企画を仕切っている中心は、「若手会」。若手会とは、今野さんの担当若手編集者たちによる有志の集まりとのことです。出版社という枠を超えて、各出版社の編集者達がこの記者会見を開きました。

そして記者発表会開始。今野さんが登場!今野さんからご挨拶がありました。

今野敏さん近影
今野敏さんが入場されました!

 
今野さん::40周年というのは作家の個人的なお話で、皆さんにお集まりいただく話ではないような気がするんですけれど。申し訳ない思いでおります。

ただ、このイベントでこの一年を盛り上げるにあたって、担当してくれている各出版社の若手の人が頑張ってくれている。これから出版界を担っていくのはこういう若手の人たちに他ならないと思います。こういう「若手会」グループを作って、何かをやるというのは、彼らを育てることになると思いました。

だったら、40周年記念もやる価値があるのではないか?非常に僭越ながら、私をダシに使って何かを成し遂げていってほしい。1年間にわたるイベントの紹介、お付き合いいただきたいと思います。よろしくお願いします。

著者:今野敏(こんの・びん)さんについて

1955年9月27日北海道三笠市生まれ。上智大学文学部新聞学科在学中、「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞。大学卒業後、東芝EMI入社。ディレクターと宣伝を勤める。主な担当は、TMネットワークの前進バンド『スピードウエイ』。宣伝では、オフコース、甲斐バンド、チューリップなどニューミュージックを担当。1981年、同社を退社、作家に専念。2006年『隠蔽捜査』で第27回吉川英治文学新人賞を受賞。2008年『果断 隠蔽捜査2』で、第21回山本周五郎賞、第70回推理作家協会賞を受賞。

今野敏さんの作品一覧

今野敏さん40周年記念企画の概要

今野敏さん略歴・プロフィール
今野敏さんの略歴とご活躍

司会の方から、今野さんの40年の活躍について、その概要が語られました。

今、改めて今野敏とは?

「名実ともに日本のエンタメ小説のトップランナー」
40年の間、第一線で作家活動を続けてきた今野さん。警察小説、武道小説、伝奇小説など幅広いジャンルで執筆しています。その著作数は、2018年1月刊行の『棲月』で194作を数え、それらの累計部数はなんと1,500万部を超えるそう!毎月、新聞・月刊誌・週刊誌に12~15回の〆切を抱えています。分量にすると400字詰原稿用紙で毎月200枚超!驚異的な執筆のペースですね。

「業界全体の活性化や後進の育成など、日本の小説界を牽引する存在」
日本推理作家協会代表理事、江戸川乱歩賞・大藪春彦新人賞・角川春樹小説賞の選考委員を務め、後進の育成や新人作家発掘にも尽力されています。

「作品にも活かされる、多彩な趣味」
「空手道今野塾」を主宰して空手・棒術を指導するほか、かつてレコード会社に勤務されていた経験を生かして音楽レーベル「78レーベル」を主宰。さらにガレージキットの祭典「ワンフェス」に毎年出品。その成果が執筆活動に大いに生かされているということです。

出版界初の試み!出版社14社で一斉に小説誌ジャック

そして今野さんの40周年記念企画が次々と明かされました。

今野さんがデビューした1978年5月にあわせ、4月~5月発売の月刊誌5月号で、出版社14社合同で様々な角度から今野敏さんを特集します!

企画名は「今野敏 小説誌ジャック」。こうした大規模な横断企画は出版界初とのこと。

企画に参加予定の小説誌は、『小説幻冬』(幻冬舎)『ランティエ』(角川春樹事務所)『オール讀物』(文藝春秋)『小説BOC』(中央公論新社)『小説宝石』(光文社)『Webジェイ・ノベル』(実業之日本社)『一冊の本』(朝日新聞出版)『小説すばる』(集英社)『小説現代』(講談社)『サンデー毎日』(毎日新聞出版)『小説新潮』(新潮社)『小説 野性時代』(KADOKAWA)、『読楽』(徳間書店)、『小説推理』(双葉社)です。

一日店長や「今野敏大賞」など、様々なイベント企画!

都内書店で一日店長!
そして、今野さんと同じく今年メモリアルを迎える書店とのコラボが決定しました!特別合同企画として、今野さんがその書店の一日店長に着任!お客様をお迎えします。フェアも開催予定。ファンとの密な交流が生まれそうですね。3月18日(日)開催予定とのこと。一日店長企画の詳細は、追ってTwitterで発表されるそう!楽しみですね。

「今野敏大賞」開催!!

40周年記念Twitterアカウントにて、ハッシュタグとリプライによって、一般読者・書店員・編集者のみなさんから今野さんの全作品の中でもとりわけ大好きな作品を募るそうです。ランキング上位の作品は、Twitterや書店店頭フェアで発表予定。また、抽選で今野さんからプレゼントも予定しています。

質疑応答

質疑応答:今野敏さん
力強くもフレンドリーに質問に答える今野さん

ブクログからも今野さんに質問を!

30分を超える、活発な質疑応答がありました。ブクログからも、ユーザー・読者のみなさんがお聞きしたいことを代弁しようと、編集者・今野さんに質問を試みました。

Q.書店フェア企画については、どのような形で行われるのでしょうか。全国書店で、全国の読者が、今野さんの作品を手に取ることができる規模になるのでしょうか?

編集Kさん::まだ調整中ですが、規模として大きなものにしたいです。フェアの告知は4月、書店フェア・今野本大賞の発表は秋ごろになるかと思います。これまでの今野さんの仕事も色んな形で紹介し、Twitterなどでこれまでの著作リストも提供したいです。今野さんの作品を推してくださる出来るだけ多くの書店で、出来る限り全国で行うことができたらと考えています。

Q.では今野さん、書店の一日店長として、どういうことをしたいかお伺いできますか?

今野さん::一日店長としてやりたいこと……嫌いな作家の本や売れてきてヤバいな、という作家の本を返品する!(笑)…………というのをやりたいけれど、冗談です(笑)。

やっぱり、現場の最前線で本を売っている人たちに、少しでも感謝の気持ちを表したいなと思っています。日頃あまりお会いできない書店員の方たちと、少しでも触れ合う機会にしたいです!

小説を書くことへの思い

力強くお答えいただきました!書店でのフェアや一日店長企画については、今後Twitterで紹介されるとのこと。楽しみですね。今野さん、ありがとうございます!

ほかにも、多くの記者から質問が寄せられました。その中から今野さんの思想に迫る質疑を中心にご紹介します。

Q.若手会というのはいつできて、今何社、何人の集まりなのでしょうか?

編集Kさん::2016年11月ごろに発足、10社が中心になっています。発足の理由は今野さんの計らいによるもので、強腕ぞろいのベテラン編集者さんに負けないように一緒に飲んで楽しく盛り上がりながら、編集として鍛えてやろうという思いからです。それまでも若手は情報交換で繋がっていたのですが、それが元になってお声かけいただいたものと思っています。

今野さん::昔我々は編集者と無茶やったんですよ。その中で色々な小説が生まれてきたんです。今の若手は、なんかお行儀が良いんだけど、元気が無い。もっと楽しそうに遊ばなきゃだめだ、と。出版業界が冷えてるというけれど、中にいる人が楽しんでいない業界に、お客さんはついてこないと思うんですよ。無理やりでもいいから楽しもう。そうすると面白いものも生まれて、読者もついてくる。じゃあ一緒に飲み会でもやろうよ、というのがはじまりです。

編集Kさん::このキャンペーンそのものは、若手会から今野さんにお声かけして始まったものです。

Q.今野さんの、平均的な一日のスケジュールを教えてくださいますか?

今野さん::だいたい朝10時くらいに起床しまして、午前中はテレビを見たりしています。午後から家の近くにある仕事場で、夕方まで執筆。19時くらいから人と会って食事したり、飲みに行ったり。最近酒をあまり飲まなくなったので23時過ぎに帰ってきてから執筆をして、夜中3時くらいに寝る、という感じだと思います。昼間に用事が入っちゃうと執筆ができないわけで、その分は夜、翌日に頑張りますね。

今野敏さん2
活躍を続ける今野敏さん

Q.多彩な趣味は、作品に活かすためだったんでしょうか?

今野さん::空手に関していえば執筆より早く、大学のときから始めています。趣味は趣味なのでやりたいことを面白そうだから始めているのであって、小説に生かそうと思ってやることはないですね。

Q.ここまでの多作と、ご自身の歩みのなかで、着実に成長した、上手くなってきた、という実感はおありですか。

今野さん::実感は間違いなくあります。100冊くらいの頃から、急に小説を書くことが楽になりました。それまでは最後まであらすじを全部決めておかないと、不安で書き出せなかったんですけども。100冊になって、(細かいところを決めないほうが面白いんじゃないか?)という気がしてきた。実際に、書いてみるとそのほうが面白いという気がしてきました。それは実際、数を書かないと分からなかったことだな、と今では思います。

今現在も、自分は小説が上手くなっているんじゃないか?と思います。今よりも来年のほうが、来年よりも再来年のほうが上手くなっているだろうと期待感を込めてですが、そう思っています。

Q.上手くなっているであろうと思うことって、書く原動力になっているのでしょうか?

今野さん::そうですね。もちろん上手くなりたいという気持ちはある。でもそれは結果論だと思うんですよ。

自分がアウトプットするものが、想定の中でここまでしか書けなかった、と思う自分がいる。でも書くものが段々想定に追いついているという実感があります。アウトプットの理想像は40年前と変わっていないんですね。

職人と一緒で。ある(自分の)理想の姿があって、毎日やっているとそれに段々追いついていく、ということだと思うんです。

Q.空手を続けていること、書き続けていることにリンクするものはありますか?

今野さん::空手の稽古ってものすごく地味で、同じことの繰り返しで回数を続けることなんで、感覚的に執筆と似ています。「(稽古で)100本突いて疲れたけれど、もう30本突いておこう」っていう感覚が「今日は20枚書いて疲れたけれどもう3枚書こう、明日が楽だ」というような。空手のトレーニングをしたことが、毎日執筆をたゆまなく続けていくことが出来ている原動力といいますか。間違いなく空手は役に立っています。

警察小説についての思い

今野敏さん近影
全ての質問に誠実に答える今野さん

Q.『隠蔽捜査』の1作目を書かれたとき、ここまでのシリーズになると思っておりましたか?

今野さん::そうは全く思っていなかったんです。その手前の作品、『ビート』が話題にならないならダメだろうと思ってたら、案の定それがコケたんですよ(笑)

それで「どうでもいいや」と思って「やっつけ仕事」で書いたのが『隠蔽捜査』です。やっつけ仕事というと言葉が悪いのですが、作家として、こういう瞬間ってあるんですよね。全力投球したあとに肩の力が抜けて、より良いバランスで小説が書ける、という瞬間が来るんです。

Q.警察への取材はされているんでしょうか?

今野さん::何度か記者クラブなどには行きましたが、直接お話を聞くことはあまりないんです。警察官現職の方はしゃべってくれない。空手の支部に警察の方がいらっしゃるようになって色んなことを話していますが、「あれはどうなの?」と聞いても教えてくれないんです。知ってることを確認することはできますが、知らないことを聞き出すような取材はできませんね。

警察小説のリアリティについては、自分のサラリーマン経験からの類推です。組織における上司と部下の関係は変わりませんからね。リアリティというのは、本当のことを書かなくてもよい。本当のことだけを書くと警視庁24時みたいな小説になってしまいますが、そこにリアリティは感じないですよね。本当「らしい」ことを書けばいいんです。そこは、40年間で培ったテクニックを駆使しています。

Q.警察小説というジャンルの広がりについて、どのようにお考えでしょうか?

今野さん::まず警察小説が一時期ブームになって、書き手が増えたことは喜ばしいものだと思っています。ジャンルとして一つの勢力を構成できる、ということで、心強いことです。あの人まで警察小説を書いたんだ?という驚きもありますが、それも一つの楽しみですよね。トータルで言うと自分の作品が埋もれてしまうんじゃないかという危機感は無いのが実感です。ジャンルの広がりを頼もしく思っています。

Q.今野さんにとって、警察小説を書く意味とは?

今野さん::それは僕も長年考えています。最初は海外の翻訳小説にあこがれて書き始めたんですけど、書いてみたら物凄くピッタリはまって。その理由は何なんだろうと考えたんですが。

武力を持った公務員、それはお侍さんなんです。僕はずっと侍の話を書き続けているのだな、って気付いたんです。それはいまだに僕にピッタリきている理由だと思っています。僕が侍になりたいというわけではなく(笑)侍みたいな佇まいが好きなんでしょうね。

Q.今後書きたい作品などはおありですか?

今後ですか。40年を迎えたんですけども、将来こんな夢があるというわけではなく、ずっと職人としてコツコツと同じことをしてきた、という実感です。ただ去年、若手の小説を読んで衝撃を受けたんですね。江戸川乱歩賞作家の佐藤究さんの『Ank:』って小説です。

(オレは今まで何をグダグダしてたんだろう?こんな凄い小説が後から追い上げてきてるじゃないか!)と危機感を抱き、根性を入れなおしまして小説を書こうと思っている矢先です。

Q.今後、警察小説を離れたところで書きたいものはありますか?

今野さん::今は警察小説から離れられないし、離れる必要も感じていないんですよね。ただずっと続けているものとして、昔の沖縄にいた空手家の評伝小説は今後も続けていかなきゃ、と思ってるんです。それは自分のライフワークであると思っています。

あと、夢としてはまた伝奇小説を書きたいと思ってるんですね。下調べに時間がかかるジャンルで、若い頃はそれを書くエネルギーがあったんですが。世の中の謎、不可思議なものにどうやってチャレンジしていくか。いつかまた書きたいな、と思っています。

今野さん、そして編集者のみなさん、ありがとうございました!

参考リンク

今野敏の軌跡 ~作家生活40周年〜公式Twitter
今野敏さん公式ホームページ「ざ・今野 敏 わあるど」
今野敏さん公式Twitter
今野敏さん主宰「空手道今野塾」
今野敏さん主宰 音楽レーベル「78レーベル」