花本武さん、新井さんの人間性を観察する
花本さん:新井さんってちょっと二階堂ふみっぽさがありますよね。
司会:……どういうところでしょう。
花本さん:いやまあ二階堂ふみ詳しく知らないんですけど。見た目もさることながら、性格とか考えてるとことか、なんか感じるんです。「似てる」って言おう言おうと思って、メモまでしてきたんです。もう今日はそれを伝えられて、一仕事終えました。
新井さん:ええっと……ありがとうございます?
花本さん:なんか二階堂ふみって、独特のアグレッシブな前のめり感あるじゃないですか。見られるだけでなく、見せようとしている感じが。それがいいと思ってて。新井さんも目立ちたがりに見えるんだけど、新井さんは独特の自分の見せ方、演出で気にしていること、考えてることはあるんですか?
新井さん:ないね。
花本さん:……そのまんまなんですか?
新井さん:それは多分違うと思うけど。大体思ってること、見てることはみんな違うわけですから。
花本さん:気にしない、ということを試みてる感じですか?
新井さん:そこは確かにそう。
それにしても衝撃的なことがたくさん書いてある本だった。
おもしろいですよー、
って読んだ人言ってたけど、これは、なんか、ちょっと、こわい。 pic.twitter.com/xHDyRzDJNy— 花本 武 (@takeshihanamoto) 2018年5月8日
花本さん:文章とかでもキャラクターが出てくるじゃないですか。食いしん坊で、破天荒。それは自身が考えている自分像に近いんですか?
新井さん:うーん、そうですね。作ってる、というつもりはなくて、サービスもしていないです。
花本さん:でも読者の新井像というのは、むちゃくちゃ面白い人に見えますよね。まだ買ってない方はみんな読んでください。
新井さん:でも読み方によっては、すごく暗い本というか……虚(うろ)みたいなものを感じる人もいれば、まったくそれに気付いていない人もいて、人は自分の好きなように読むんだな、面白いな、って思います。
花本さん:虚!(笑)確かに、鬱々としてますよね。新井さんの人間観察も活かされてると思うんです。出版関係も、お客さんでも色んな人に会うじゃないですか。
新井さん:うーん。人間観察と言われるとあまり……この仕事してるとすごく人と会いますよね。営業さんが週1とかで来ていても「いらっしゃいませ」って言っちゃうことがある。でも忘れてることを繕わないですね。
花本さん:でも僕はアセアセしてしまいますねえ。焦ってドツボにはまりがちで。
新井さん:結局忘れてるのってバレるでしょ?
花本さん:バレる。バレるし、あとで「さっきバレてたよな」とか思ってすごく辛いときがある……ちなみに司会の山本さんはすごく人の名前を間違える人なんです。
司会:はい、間違えますね。花本武さんをずっと「花本学」さんと間違えてて。三文字系ですよね。
花本さん:ひどいでしょう?山本さんは作成するフリーペーパーが面白いってことで接点ができたんです。初期の山本さんのフリーペーパーって、人の名前がほとんど間違ってるんですよ。それがすごい衝撃的でしたね……それを教えてくれた人も、「山本さんのフリーペーパーの魅力は誤字にある」って言うんですよ(笑)。
【お知らせ】当店のフリペ「大盛堂書店2F通信」ですが、「版元ドットコム」さんのサイトでも閲覧ができるようになりました。ぜひお時間のある時にご覧ください !(山本)http://t.co/IqIAJwxmsF pic.twitter.com/prBmSs8MhU
— 大盛堂書店 (@taiseido) 2015年9月2日
花本さん:フリーペーパーの魅力が誤字って……そんなのありえるんだ!って思って。僕も色んなフリーペーパーを作ってきて、「ユルいフリーペーパー作ってますね~」って言われたりして調子に乗ってたんだけど、誤字が魅力のフリーペーパーって……かなわないな、って思いました。
司会:本題に行きたいと思います。
花本さん:本題に入るつもりで話してますよ!
二人が本屋に勤めるきっかけ
司会:お二人が本屋に勤めるきっかけって何でしたか?
花本さん:15年くらい前でしょうかね。ちなみに新井さんとの出会いのきっかけって、ブックンロールってイベントがきっかけで、ブッキング前の飲み会で新井さんと話したんですよね。「出演して!」って話したんだけど。そのとき、新井さん、この子すごい可愛いなって思ってました。
新井さん:マジか!すごい!嬉しい!
花本さん:でも新井さん、イベントをドタキャンしたじゃん。あれ?何の話だっけ?
司会:15年前の話です。
花本さん:印刷の仕事をしてたんですよ。職人の世界ですね。シルクスクリーンの印刷で、シルクのところにインクをたらしていくんですよ。ボチョボチョ、って。よく作っていたのは漫画・雑誌じゃなくて、工事現場で使われるような「キケン!」「上に注意!」「今日も一日がんばろう!」みたいなものの大量印刷だったんですよね。特殊印刷もやって野球のサインボールとかを作ってたんですけど。
或るとき限界が来たんですよ。インクがくさい。仕事もつらい。これは長生きできないな、って。辞表書いて辞めた。フラフラしてたときに書店の募集の張り紙を見て……という流れです。
司会:書店に入社してどうでした?
花本さん:最初はやる気がなかった(笑)アルバイトから初めて、意欲がなくはなかったんですけど……新井さんもアルバイトから入ったんですよね。今は忙しく充実してるだろうけど、当時はどうでした?
新井さん:アルバイトの身分だと、できないことが多かったですよね。
花本さん:そう、権限がないんですよね。棚やジャンルの担当を持ち始めると楽しくなってくるじゃないですか。だから最初の頃はカバー折りばっかりしてましたよね。
新井さん:カバー未だに私はまっすぐ折れないんですよ。難しいですよね。
司会:一般の方向けに説明しますと、書店のカバー折りって、多くの場合「指示線」というものがあって、本の判型通りに折れるようにはなっています。けれどもズレちゃうこともありますよね。
花本さん:僕も下手ですよ。「カバー無駄になるんで折らないでください」とか言われる(笑)うまい人いますよね。何枚も一緒に折れる人すごいですよね。
新井さん:めっちゃレジでカバー折り集中しすぎると、目の前の行列とか気付かなくてめっちゃ並んでたりもしますよね。
花本さん:ちょっと書店内で偉くなってくると、「花本さん雑用しないよね……」って陰口が聞こえてくるような予感がして(笑)たまにカバー折ってる姿を見せたいわけじゃないですか。あれが辛いよねえ。ってくだらない話ですね。
司会:いや、ある意味、書店運営上大事な話ですよ。新井さんが書店に入社したきっかけは?
新井さん:パン屋に応募しに行った帰りに三省堂書店に寄ったら応募ポスターがあったんで、電話して応募した、ってのがきっかけです。理由はないですね。最初はやる気もなかったですけど……やる気ないほうが意外と続いたりするじゃないですか。
花本さん:今の、いい言葉ですねー。そう、わかります。真面目すぎる子が入ってくると……辞めちゃうんですよね。もしくはもっと志の高い仕事につくというか。
新井さん:意外と残念な子が残るパターンばかりですよね。
花本さん:そうなんですよねー。……僕たち、残っちゃったね……。
新井さん:うん……。
司会:あのう……。