著者みずから渋谷駅前交差点で本を手売り─!?某有名書店員:新井見枝香さんの挑戦

新井見枝香さん販売図

こんにちは、ブクログ通信です。寒い日が続きますね。

こんな寒い日のなか、12月19日、あの渋谷のスクランブル交差点そばで自著を手売りする著者が現れると聞いて、半信半疑、怖いもの見たさで取材に行ってきました。

取材・文/ブクログ通信 編集部 大矢靖之

著者:新井見枝香さん、渋谷の中心で

今回、渋谷駅前のスクランブル交差点で本の手売りをするのは、書店員の新井見枝香さん。某有名書店で名を馳せており、彼女が創立した「新井賞」は同書店で直木賞・芥川賞を越える売上になることもあるとか。テレビやラジオにも出演多数で、今後の活躍が期待されています。

12月16日にエッセイ『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』を発売しました。37歳、独身、彼氏なし、という女性による、エッセイ集。書店の話ばかりではなくて、世知辛い世の中にどこかぴったりはまらない、仕事、結婚に向いてない。というかそもそも社会に向いてない。そんな新井さんの逸話が満載の一冊です。

そんな彼女が渋谷スクランブル交差点前にある、大盛堂書店前で自著を手売りするとのこと。渋谷スクランブル交差点って、世界に知られた渋谷の観光名所のひとつですよ。ここを通る人は1日数十万人、1回の青信号で行き交う人々の数は数千人になるとか……(見たことがないかたは、ぜひそのライブカメラをご覧ください)。

12月19日、あの渋谷の交差点で、しかも著者自ら本を手売りするなんて、ほとんど聞いたことがありません。成否がどうなるかを見届けなければ……!

こうして、新井さんが手売りする現場、渋谷の大盛堂書店に向かいました。

渋谷 スクランブル交差点前 大盛堂書店
渋谷 スクランブル交差点前 大盛堂書店
著者 新井見枝香さん近影
著者 新井見枝香さん近影

18時前に到着すると、すでに臨戦態勢の新井さんが。首から段ボールをさげて、その中に著書を入れています。なんだか本当に、弁当売りみたいなたたずまい。

そこに見たことのある方が飛び込んできました。

新井さんと村山早紀さん
新井さんと村山早紀さん

……作家の村山早紀さんが!

村山早紀さんといえば、ブクログでも多くの読者を持ち、今後ますます活躍が期待される人気作家の一人です。『コンビニたそがれ堂』シリーズをはじめ多くの作品を記しており、『桜風堂ものがたり』が2017年本屋大賞にもノミネートされていますね。その村山さんが販売応援にかけつけ、新井さんと一緒に声をあげています。信じられない現場です。

村山早紀さんの作品一覧

他にも古くからの知人という方、出版関係者などが集まり、新井さんの店頭販売を助けようと集まっています。陽が落ちて、渋谷の気温は7度。この寒空の中で店頭販売が始まりました。

たまたまいた人を巻き込んで一緒に手売り

しかし店頭販売直後、「FREE HUGS」と書かれた看板を高々と掲げ、呼びかけている男女二人組が大盛堂書店前にいらっしゃいました。店頭で声をあげて販売するのに支障が出てしまいますね。

Freehug新井
おもむろに明るい声で交渉を始める

新井さんが彼らに近づき、話しかけはじめました。他の場所でやってもらうようお願いしにいったんでしょうか。

……なにやら様子が変です。「FREE HUGS」の人たちはそこに立ち続けています。あれ?

Freehugと新井2

……ん?

『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』販促現場
全員が並んだということは……

……仲間に引き入れやがった!

何か信じられないものを見ました。「FREE HUGS」運動の人たちを引き込んで、並んで販売を始めたのです……!

しかも「FREE HUGS」の男女、男性はスラっとした長身の美形で、女性も大きな瞳で魅力的な方。後ろでは村山早紀さんが声をあげて丁寧な呼び込みを続けています。新井さんずるい。というかむしろ卑怯と言いたくなってきます。

Freehug
衝撃の瞬間

……なんで新井さんフリーハグもしてるの!?

新井さん、隣の両人に「俺にもハグを回して」と要望しています。この手売りの目的が一体何だったのか分からなくなってきました。本当に本を売りたいのか?というかそもそもフリーハグしたくなっただけではないのか?

冷静な取材ができません。フリーすぎる店頭販売に驚きを隠せません。ちなみにこの取材はノンフィクションです。

飛ぶように売れていく現場

実売の瞬間
実売の瞬間

37歳、独身、彼氏なしの新井さんが次々とモテていきます。ちなみにサインはお断り、ハグはOKという宣言もありました。線引きがよく分かりません。突っ込みどころが多すぎて困ります。

売れて……
新井さん
また売れて……

っていうかむちゃくちゃ売れてます!!

フリーハグした人も本を手にして大盛堂書店に消えていきます。本を売ってフリーハグもできて新井さんは一石二鳥。信じられません。首からさげた段ボールの中から、どんどん本が売れていき、補充に走る周囲。すごいことが起きており、目の前の光景が信じられません。

この頃、大盛堂書店の書店員、山本さんが様子を見にきました。「なにこれ」と一言。山本さんは「FREE HUGS」の方々を新井さんの友達ではないかと疑っています。……そうであればどれだけこの状況の理解が楽であることでしょうか?

山本さんは、渋谷店頭での販売協力に応じた理由をこう話していました。「伸びていく人は伸びていくもので、新井さんはそういう書き手だと思っています。その伸びていく手助けができればいいと思いました。ここでイベントを行って、もっと波及して、大きな流れになっていけば、個人的には本望です」

この手売り販売の背景にあったのは、山本さんの熱い想い。そこに周囲の方々の人徳や新井さんの巻き込み力が加わって、渋谷の大通りでの信じられない光景が生まれたのでした。

当の著者による手売り販売がどうなることかと思いきや、結果は大成功。約一時間に及ぶ販売で、首からさげた段ボールに補充を二回入れるほど。すばらしい売上でした。

予定時間を過ぎて、新井さんは関係者のみなさんに深々とお礼。こうして著者による手売り販売は終了しました。

新井見枝香さん
新井見枝香さんお疲れ様でした!

新井見枝香さんのnoteの記事「弁当売りの書店員②」にこの日のことが当事者目線で詳しく記されています。常識を越えたところにこそ成功が生まれる、という教えを受けるエピソードですね。……狙ってやるのは難しそうな振る舞いですが……。


なおこの手売り販売は、新井さんが川上徹也さんと対談したときに生まれたアイデアだったようです。詳しくは、「『売る』書店員さんの『売る技術』 本屋の新井さん対談【後編】」の記事でご覧ください(2017年12月25日追記)。

『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』トークショー開催!

そんな新井さんが、エッセイ『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』を出版した理由は、来年1月に行われるトークショーで判明するそうです。

ブクログ通信でこのトークショーに潜入取材し、詳細をまたご報告する予定です。お楽しみに!

参考リンク

本屋の新井 Twitter
新井見枝香 note
大盛堂書店公式ホームページ
大盛堂書店 Twitter
川上徹也さんcakes 「本屋はもっと『浪費』できる! 「本屋の新井さん」対談【前編】」
川上徹也さんcakes 「『売る』書店員さんの『売る技術』 本屋の新井さん対談【後編】」