柚月裕子さんの代表作・オススメ作5選!デビュー10周年、そして記念すべき自身初の実写映画化!

柚月裕子さんおすすめ・受賞作・代表作5選

こんにちは、ブクログ通信です。

5月12日に『孤狼の血』が映画化され、評判となっている柚月裕子さん。今年2018年は、『臨床真理』の『このミステリーがすごい!』大賞受賞によるデビューから10周年を迎え、注目が高まっています。『盤上の向日葵』で「本屋大賞2018」にもノミネートされました。惜しくも本屋大賞は逃してしまったものの、年々着実に評価を高めていますね。

ブクログから、柚月さんの代表作・オススメ作を5作紹介いたします。多数の作品の中から、ブクログユーザーから高い評価を受けている作品、読みやすい作品、知名度のある作品を中心に集めているので、ぜひ参考にしてくださいね。

(2018年5月29日最終更新)

経歴:柚月 裕子(ゆづき ゆうこ)

1968年生まれ。岩手県出身、山形県在住の小説家。2008年『臨床真理』で第7回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞しデビュー。2013年同作で第15回大藪春彦賞、2016年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、同年『慈雨』で「本の雑誌が選ぶ2016年度ベスト10」第1位をそれぞれ受賞。2017年、『盤上の向日葵』で第7回山田風太郎賞候補、2018年本屋大賞ノミネート。
代表作として、テレビドラマ化された『最後の証人』『検事の本懐』を含む「佐方貞人シリーズ」。また、2018年に映画化された『孤狼の血』。

柚月裕子さんの作品一覧

1.『最後の証人』 人気シリーズ「佐方貞人」第一作

2010年に刊行された、元検察官の敏腕弁護士:佐方貞人が活躍する「佐方貞人」シリーズ記念すべき第一作です。

柚月裕子さん『最後の証人 (宝島社文庫)
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あらすじ

元検察官の佐方貞人は刑事事件専門の敏腕弁護士で、犯罪の背後にある動機を重視し「罪をまっとうに裁かせることが正義」をモットーとする。そんな彼のもとに、状況証拠、物的証拠とも被告人有罪を示す殺人事件の弁護依頼が舞い込んだ。

オススメのポイント!

洗練された法廷ミステリ・サスペンス作で、多くの人から支持を集めました。作中のどんでん返しで、慌てて作品を読み直す人も多数。後で紹介するシリーズ人気作を楽しむためにも、この作品を読んでおくことをオススメします。2015年にはテレビ朝日系でドラマ化され、放映されました。

非常にテンポの良いストーリー展開と上手い仕掛けに夢中になり、一気読み。主人公の弁護士、佐方は途中まで鳴りを潜めているのだが、終盤に表舞台に出て来ると俄然話が面白くなる。

また、物語の中には様々な事件により人生を弄ばれた人物が登場し、読者の気持ちに揺さぶりをかけて来るあたりが上手い。

驚いたのは途中まで法廷で一体誰が裁かれているのか明かされていないこと。可能性のある人物が何人か登場する。被告が誰か解った時から事件は大きく動き、一気に結末へと盛り上がりを見せる。

ことぶきジローさんのレビュー

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2.『検事の本懐』 「佐方貞人」シリーズ第二作、大藪春彦賞を受賞した連作短編集

2011年に刊行された本作は、『最後の証人』に続く「佐方貞人」シリーズ二作目の作品です。第15回大藪春彦賞受賞作、そして第25回山本周五郎賞候補ともなりました。

柚月裕子さん『検事の本懐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
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あらすじ

米崎東警察署署長である南場は、管内で起きた連続放火事件の犯人と思われる新井を別件逮捕。新井は高校時代に放火の罪で家裁審判を受けたことがあった。ここで証拠をつかみ立件したいところだったが、ライバル視されている警察学校同期の県警本部刑事部長の佐野などから横槍が入る可能性があった。米崎地方検察庁刑事部の筒井に相談したところ、任官して3年目の佐方貞人が事件を担当することになった。そして新井は連続放火事件のうち17件の放火を認めたが、死者が出た放火については否認し続ける。佐方は、他に犯人がいると考え始めた―(「樹を見る」)。

オススメのポイント!

作品の時系列は『最後の証人』より前の設定で、佐方が弁護士になる以前、検事時代のストーリーです。短編の一作目「樹を見る」は、佐方と『最後の証人』にも登場する南場との出会いが描かれています。連作短編で短い時間でも読みやすいので、一作目ではなく二作目を先に読むのも良いでしょう。なおこちらもテレビ朝日系で2016年にテレビドラマ化されています。

女流作家ですが、かなり硬質な文章です。
解説にもあるように、横山秀夫ばりの男臭さがあります。読み始めたら、途中で絶対に本を閉じられません。そういう意味で短編集で良かった。
この作家は、いずれ本屋大賞、直木賞を取ると思います。

kazukichi_wakichiさんのレビュー

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3.『孤狼の血』 柚月作品、初映画化!正統派ハードボイルド小説

2015年に刊行され、第69回日本推理作家協会賞 長編及び連作短編集部門、2017年啓文堂書店文庫大賞1位を受賞。ほか第154回直木三十五賞、第37回吉川英治文学新人賞、第6回山田風太郎賞でそれぞれノミネートされ、2016年『このミステリーがすごい!』国内編第3位、「『本の雑誌』が選ぶ2015年度ベスト10」第2位。数々の賞を賑わせました。柚月さんの初映画化作品でもあります。

柚月裕子さん『孤狼の血 (角川文庫)
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あらすじ

昭和63年、暴力団対策法成立以前の広島。呉原東署捜査二課に配属された新人刑事の日岡は、先輩刑事・大上と暴力団系列金融会社社員失踪の捜査を扱うことになった。当の大上は、県警内で凄腕のマル暴刑事だが、暴力団との癒着を噂されてもいた。その手法と振る舞いに戸惑う日岡。そして、失踪事件を端緒に、暴力団同士の抗争が勃発する。そこで大上は抗争を止めるため、思いも寄らない大胆な策を考えた。日岡は自らの信念を試されることになる―。

オススメのポイント!

呉を模した架空の街「呉原」が舞台の小説で、映画『仁義なき戦い』シリーズに大きな影響を受けたそうです。任侠・ヤクザ映画好きにもたまらない作品で、登場人物達の迫力ある広島弁の応酬に魅了されてしまいます。なお続編の『凶犬の眼』も2018年3月に刊行されています(なお、映画続編も製作が決定しました!)。この作品を読んで興味を持った人は、続編をそのまま読み進めていくのもオススメです。

昨日、柚月裕子の「孤狼の血」(角川文庫)という本を夢中でよみました。日本推理作家協会賞、映画化されるということで本屋さんで手に取りました。昭和63年呉を舞台にした暴力団の抗争を描いたものです。そうです! この小説はあの「仁義なき戦い」を下敷きにされており、主人公はヤクザではなく警察官です。でも、あの映画を彷彿とさせるようなシーンが次々と展開され、一気に読むハメとなりました。作者は岩手県出身で広島とはあまり関わり合いがないようなのですが、登場するヤクザや刑事の広島弁はなかなか堂に入ったもの。

hocco21さんのレビュー

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4.『盤上の向日葵』 本屋大賞ノミネート作!棋士たちの人間ドラマとミステリの融合作

将棋ブームに沸く2017年に刊行された『盤上の向日葵』は第7回山田風太郎賞候補、2018年本屋大賞ノミネートも果たした実力作です。雑誌連載は2015年から始まっており、棋士・村山聖九段の生涯を描く『聖の青春』とかつて裏社会で行われていた賭将棋の世界を描く『真剣師 小池重明』を柚月さんが読んだのが本作誕生のきっかけだったそうです。

柚月裕子さん『盤上の向日葵
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あらすじ

さいたま市天木山の山中で身元不明の白骨死体が発見された。唯一残された手がかりは、一緒に埋められていた名匠作の伝説の将棋駒。捜査を進めていた叩き上げの刑事・石破と、かつて棋士を目指していた若手刑事・佐野は、将棋の聖地:山形県天童市に降り立つ。そこでは世紀の一戦が行われようとしていた。果たしてそこで二人が目撃したものとは?

オススメのポイント!

将棋小説としても、警察小説としても楽しめる一作。刑事たちと孤独な棋士とが交互に描かれ、物語は螺旋を描くように事件の深層に迫っていきます。伏線が巧みに折り重ねられつつ加速していく緊迫感がたまりません。500ページを越える単行本ですが、多くのブクログユーザーから支持を受けている作品です。

んー!面白い!柚月小説はホントに厚い、いや、熱い!
警察小説と将棋小説、両方の面白さがぎゅぎゅっと濃く煮詰められている。犯人捜しよりその意図、そして意味に興味を惹かれとにかく読み続けるしかない。徐々につながってく線、明らかになる背景、あぁそういうことだったのか…と思わず目を閉じる。
救いのないラスト、だけどあの瞬間全てから解放されたのだな、と深いため息をつく。
これを読むと、真剣勝負、という言葉の本当の意味を知る。そして将棋を指したいという気持ちと、将棋を指す恐ろしさを同時に感じる。

べあべあべあさんのレビュー

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5.『慈雨』本の雑誌が選ぶ2016年度ベスト10第1位!人間ドラマが染み渡る警察小説

2016年刊行の単行本です。本の雑誌が選ぶ2016年度ベスト10、第1位。柚木さんが得意とする警察小説ですが、映画化される『孤狼の血』の熱さとは対照的で、人間ドラマに重きを置かれた作品になっています。

柚月裕子さん『慈雨
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あらすじ

警察官を定年退職した神場は妻とお遍路の旅に出た。在職中の事件被害者を供養するべく始めた旅だった。警察官人生を振り返りながらの旅の途中、神場はテレビのニュースで幼女殺害事件の発生を知るが、その事件は16年前に自ら捜査に加わった事件と酷似しており、動揺する。かつての部下を通して捜査に関わり始めた神場は、自らの消せない過去と向き合い始める。組織への忠誠、正義への信念、そして家族への尽きえぬ思い。神場は果たして事件の真相に辿り着けるのか?

オススメのポイント!

定年退職した人間の郷愁が胸に迫ってくる作品です。そして家族愛というテーマを警察小説に持ち込むことで、他に類を見ない作品となりました。他の作品に比べて派手さはありませんが、柚月さんが得意とする心理描写・人間ドラマが十全に味わえます。

警察小説でありながら、題名通りのしっとりとした夫婦愛が最後を飾り、涙腺を刺激する。定年退職した元刑事が、妻を伴った四国遍路の巡礼と、幼女誘拐殺人事件が同時進行する。彼は、16年前に発生した同様の事件で冤罪に加担したという悔いを抱えるため、現在の事件にも進んで関わりあう。遅々として進まぬ捜査に、頁をめくるのももどかしくなる。
しかし、事件解決の端緒を掴んでからの急転直下は、一気読み。過去の冤罪事件を暴くことは、警察への信頼と自分たちの立場をも危うくするにもかかわらず、身を挺してでも自らの責任を果たそうとする刑事たち。読んでいて、爽快感に胸が震える。
警察小説と、夫婦愛小説と、それに彼らの娘に隠された秘密とが融合した傑作ミステリー。

hongoh-遊民さんのレビュー

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警察ものを書かせたら天下一品、という評価が定まりつつある柚月裕子さん。けれども警察小説というジャンルのなかでも正統派ハードボイルドから家族愛、人間ドラマをテーマにする作品まで多様な作品を記し、幅を広げ続けています。柚月さんの作品を読んだことがないかたは、テーマの好みに応じて一冊目を選んでみてはいかがでしょうか。

どうか最初の一冊目が良い出会いでありますように!