『白い巨塔』をはじめとした社会派小説の名手、山崎豊子さんおすすめ・代表作5選

『白い巨塔』はじめとした社会派小説の名手、山崎豊子おすすめ・代表作5選

こんにちは、ブクログ通信です。

故・山崎豊子さんは、さまざまな社会派小説を刊行し、多くの作品がいまなお読まれる名著とされています。2019年5月22日から、『白い巨塔』の 5夜連続ドラマスペシャルが始まります。1966年に映画化されてから、何度も何度も映像化された名作です。今回は岡田准一さんが主演。はたしてどんなドラマになるのでしょうか?

これを機に、ブクログから山崎豊子さんの代表作・オススメ作を5作紹介いたします。多数の作品の中から、名作とされている作品、読みやすい作品、そしてブクログユーザーから高い評価を受けている作品を中心に集めました。ぜひ参考にしてくださいね。

経歴:山崎豊子(やまざき とよこ)

大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞を受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

山崎豊子の作品一覧

1.『白い巨塔』 7度の映像化を誇る、不朽の名作

山崎豊子さんの作品のなかで最も知られている長編作品のひとつです。1963年から1965年まで『サンデー毎日』に連載され、1965年に刊行、現在文庫で入手することができます。本作は好評を博したことにより、続編も1967年から1968年まで『サンデー毎日』に連載され、1969年の単行本刊行を経て、文庫化されています。韓国でのドラマ化を含め、7度も映像化されてきた作品です。

山崎豊子さん『白い巨塔〈第1巻〉 (新潮文庫)
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あらすじ

国立大学の医学部第一外科助教授・財前五郎。食道噴門癌の手術を得意とし、マスコミでも脚光を浴びている彼は、当然、次期教授に納まるものと自他ともに認めていた。しかし、現教授の東は、財前の傲慢な性格を嫌い、他大学からの移入を画策。産婦人科医院を営み医師会の役員でもある岳父の財力とOB会の後押しを受けた財前は、あらゆる術策をもって熾烈な教授選に勝ち抜こうとする。初出「サンデー毎日」1963-1965年、1967-1968年。半世紀経ってもまったく色褪せない、不朽の名作。全5巻。

オススメのポイント!

発行部数、累計600万部の大ベストセラーは、今なお多くの人々に読まれ続けています。病院教授選、そして生死をめぐる人間ドラマは、50年前の作品だということを感じさせないほどに読み手を魅了します。7度の映像化もうなづけることでしょう。これまでの映画やドラマを見比べてみるのもオススメです。

これは面白い。国立大学医学部教授の椅子を狙って、一癖も二癖もある面々がドロドロの駆け引きを繰り広げる。羨望の的である「お医者様」も、腹の中では野心と欲望が渦巻いており、一挙手一投足にひりつくような微妙な駆け引きの閃光が走る。(中略)登場人物たちがとても人間くさい。燃えるような野心を滾らせる財前五郎。彼の傲岸を嫌い、金沢大学の菊川昇を推薦しようとする、一見紳士な東貞蔵。財前を推すことによって将来の実験を握ろうとする医学部長の鵜飼(うがい)良一。教授戦からは距離を置き、直向きに医療に邁進する里見脩二。野心、名誉欲、矜恃、嫉妬、見栄…醜い感情どうしがぶつかり合う人間ドラマがつまらないはずがない。

azuki1062さんのレビュー

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5月22日放送ドラマも楽しみです!予告編がYoutubeに公開されています。

2. 『沈まぬ太陽』 日本航空をモデルとしたとされる骨太の長編小説

1995年から1999年にかけて『週刊新潮』で連載された社会派作品で、1999年に単行本化、現在は文庫で入手可能となっています。2009年には、映画化。そして2016年、WOWOWでテレビドラマ化されました。

山崎豊子さん『沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)
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あらすじ

国民航空の労働組合委員長を半ば無理やり押し付けられながらも、恩地元は副委員長の行天四郎と積極的に労働環境の改善を目指してきた。しかしその行動が経営幹部に疎まれ、カラチ、テヘラン、そしてナイロビといったアフリカの僻地へ左遷されてしまった。他方で行天は自らの理想を追い求めて経営側に付き、出世街道を邁進してゆく。そこで起きた、旅客機の墜落事故。日本に戻った恩地は現場へ派遣され、そのまま遺族係となって困難と直面してゆく……。

オススメのポイント!

実在の大手航空企業をモデルにしたとされる骨太な大作で、作中で十数年にわたり織り成される人間ドラマに圧倒されることでしょう。「アフリカ篇」「御巣鷹山篇」「会長室篇」の三篇に共通して描かれるのは、政治的に立ち回ろうとする経営層らによる企業腐敗、そして信念と正義を貫こうと試みる、その尊さです。山崎豊子さんの作品のなかで、ブクログではもっとも本棚登録数の多い作品となっています。

この話のすごい所は、フィクションとしながらも山崎豊子さんらしいものすごい量であろう取材から小説的に話をつくり出した所である。なので、当時を知る人が読めば現実世界とのリンクをかなり感じるでしょう。なんとなく雰囲気が似ている名前をつけているので、政治に疎い人でもなんとなく誰がモデルか分かるでしょう。ただ墜落事故の遺族や被害者は一部本人の了承を得て本名で出ています。フィクションといえどもこれにかなり近い事実があったのであろうと思うとものすごく辛かった。はっきり言って今まで読んだ小説の中で一番辛かった。読んでる間中辛かった。しかも5巻まであるので途中挫折しかけた。でも面白い。読み始めると止まらない面白さがある。

「知らないという事が罪」という事はその事を知ってから気付くのだけど、この小説もそれを感じさせてくれた。是非多くの人にこの小説を読んでもらいたいと思った。

masako27さんのレビュー

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3.『ムッシュ・クラタ』 読みやすい中編・短編を収めた佳作

1960年代に発表された中編・短編作品集です。1985年の『山崎豊子全作品』の収録を経て、再編のうえ1993年に新潮文庫で刊行されています。中でも表題作「ムッシュ・クラタ」は山崎作品の中で唯一の中編小説と目されています。

山崎豊子さん『ムッシュ・クラタ (新潮文庫)
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あらすじ

戦前・戦後、新聞社のパリ特派員を勤め、フランス文化をこよなく愛して「ムッシュ・クラタ」と呼ばれた男。日本人の常識から逸脱した行動をとり、鼻持ちならないキザな奴と見られていた彼が、記者として赴いたフィリピンの戦場でしめしたダンディな強靱さを、鮮やかに描いた表題作。ほかに夫婦の絆の裏表を鋭い人間観察で切り取った「晴着」「へんねし」「醜男」をおさめる中・短編集。

オススメのポイント!

山崎さんの作品は長編作品に有名作が多く、簡単に読める作品として勧められる作品が『ムッシュ・クラタ』です。他の長編作品に比べると知名度や分量で劣るとはいえ、端正な文章、物語のうまさを堪能するのに適した作品となっています。各代表作の厚さにためらってしまう人は、この本を入り口にしてみるとよいでしょう。山崎さんの作品では珍しく映像化などがされていない作品群なので、実写版などの先入観なしに読めるのもポイントです。

『ムッシュ・クラタ』の気骨あるダンディズムといい、『晴着』の体格のよい男性描写といい、それとは裏腹の『醜男』の男性像といい、山崎の好みの男性像が窺われるようである。そう、『醜男』の主人公への作者の眼差しはあくまでも冷たい!それとは反対に『晴着』の姑や『へんねし』の妻、『醜男』の美人妻に見られるような女性の内面の冷たさの描きっぷりも凄く、山崎の「男というもの」「女というもの」を見る目はあくまでも鋭い。さらに、氏お得意の関西弁を駆使した会話や、『へんねし』のように大阪商家を背景とした物語など、山崎豊子が描く社会派小説とはまた異なる、氏がもう一方で得意としたテーマや技法を詰め込んだこの短編集はかなり贅沢なのではないだろうか。
いろいろと氏の作品は取り沙汰されることもありましたが、特に社会の暗部をえぐり白日の下に曝したその作品群は、現代社会を生きていく上で未だ忘れてはならないものばかりです。謹んでご冥福をお祈りいたします。

mkt99さんのレビュー

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4.『大地の子』 中国残留孤児、波乱万丈の人生を描く感動作

1987年から1991年まで『月刊 文藝春秋』に連載された作品です。1991年、単行本全3巻となって刊行され、現在文庫本で入手可能です。1995年にNHKドラマ化されています。『不毛地帯』『二つの祖国』とともに「戦争3部作」として名前が挙がる作品で、1990年に第52回文藝春秋読者賞を受賞しています。

山崎豊子さん『大地の子 一 (文春文庫)
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あらすじ

太平洋戦争後、満州にて残留孤児となった陸一心。親族と死別、妹とも生き別れになった彼は、教師の陸徳志に救われて養子となる。国共内戦、文化大革命の荒波を越えて、日中共同の製鉄所建設プロジェクトに取り組む一心だが、彼は中国人養父母の愛情と、判明した日本人父親の愛情との間で揺れ動くことになる―。

オススメのポイント!

中国で育った日本人が中国に力を尽くすことを誓いつつも、差別を受け、様々な困難に直面する姿には思わず引き込まれてしまうはず。そして日本・中国双方の「父」とのドラマは、感動という言葉では言い尽くせないほどの魅力に満ちています。TVドラマ版も非常に高い評価を受けており、小説とTVドラマを見比べてみるのもオススメです。

著者が、取材から完結まで足掛け八年をかけた大作を、数日で読み終えてしまうのは何とも面映い。が、著者が全身全霊を込めて取材し、全存在をかけて書き上げた熱い思いが伝わってくる。満蒙開拓団の終戦時の逃避行、中国の貧困農民の生活、労改(労働改造所)の内部の実態、製鉄所建設に纏わる専門家もかくやと思われる知識、等々、それらの迫力迫る描写に圧倒され、しばらく他の小説に手が出せない。解説に書いてあるように、本作は「社会派小説、告発小説、国際ビジネス小説、恋愛小説・・・」といろいろな読み方ができるが、何よりも歴史の流動の波に翻弄される人々を描いた大河小説である。

hongoh-遊民さんのレビュー

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5.『華麗なる一族』 昭和の政財界を反映した、激烈な再編と政争の物語

1970年から1972年まで『週刊新潮』に連載され、1973年に刊行。現在文庫化されています。映画化・2度にわたるテレビドラマ化と、3度の映像化が行われた名作です。

山崎豊子さん『華麗なる一族(上) (新潮文庫)
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あらすじ

業界ランク第10位の阪神銀行頭取、万俵大介は、都市銀行再編の動きを前にして、上位銀行への吸収合併を阻止するため必死である。長女一子の夫である大蔵省主計局次長を通じ、上位銀行の経営内容を極秘裏に入手、小が大を喰う企みを画策するが、その裏で、阪神特殊鋼の専務である長男鉄平からの融資依頼をなぜか冷たく拒否する。不気味で巨大な権力機構〈銀行〉を徹底的に取材した力作。

オススメのポイント!

40年以上前に執筆されていながらも、金融機関再編中の銀行頭取一家や銀行マン、官僚・政治家たちの生々しいやりとりには、息が詰まりそうになります。綿密な取材に基づいた物語は、あたかもノンフィクションではないかと思わせるほど。父・大介と子・鉄平の親子ドラマとしても見所がある、骨太な一作です。

阪神銀行のオーナー頭取にして万俵財閥の総帥である万俵大介を中心とした万俵家をめぐる物語。長男が実質的に経営する特殊鋼会社を犠牲にしての「小が大を食う」銀行合併、妻妾同衾の乱れた私生活、次々と不幸を招く閨閥結婚など、「華麗なる一族」の裏のドロドロとしつつも深い人間ドラマが描かれている。
全3巻とボリュームは結構あるが、一人一人の登場人物のキャラクターが立っていて、その濃い人間模様の描写に惹き込まれた。正直、「華麗なる一族」に生まれなくてよかったと感じた。

horinagaumezoさんのレビュー

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いかがでしたでしょうか?山崎豊子さんの作品はここに挙げた作品以外にもまだまだ多くの長編作品があります。最初の一冊に迷ったら、ぜひ評価が高い上記5作を選んでみてくださいね。