高畑勲さんの代表作・オススメ本7選!名画、エッセイ、翻訳作品ー多彩な活動を見る

高畑勲さんおすすめ・受賞作・代表作5選

こんにちは、ブクログ通信です。

5月15日、スタジオジブリ『火垂るの墓』『かぐや姫の物語』などで知られるアニメーション監督、故・高畑勲さんの「お別れの会」が東京・三鷹の森ジブリ美術館で開かれました。宮崎駿監督や一般ファンら3200人が参列したそうです。

ハフィントンポスト「高畑勲さん『お別れ会』 宮崎駿監督は声を詰まらせながら、亡き盟友を偲んだ(追悼文全文)」(2018年5月15日)

追悼をかねて、ブクログから高畑さんの代表作・オススメ映画・書籍7作を紹介いたします。多数の作品の中から、代表作、知名度のある作品、ブクログユーザーから高い評価を受けている作品を中心に集めているので、ぜひ参考にしてくださいね。

経歴:高畑 勲(たかはた いさお、1935年10月29日 – 2018年4月5日)

三重県宇治山田市(現・伊勢市)生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。長編漫画映画『やぶにらみの暴君』(『王と鳥』の原型)の影響で、アニメ映画を作るために東映動画入社。テレビアニメ『狼少年ケン』で演出デビューし、劇場用長編アニメ映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』の監督を務め、宮崎駿と共に作品制作にあたる。
その後Aプロダクションに移籍して『ルパン三世』 (TV第1シリーズ)後半パートの演出を宮崎と共に担当。映画『パンダ・コパンダ』の演出を務める。ズイヨー映像(のちに日本アニメーションに改組)に移籍したのち、『アルプスの少女ハイジ』『母をたずねて三千里』『赤毛のアン』『未来少年コナン』などの演出、『じゃりん子チエ』アニメ映画監督とTVアニメチーフディレクターなどを担当した。
その後、宮崎駿・鈴木敏夫らとスタジオジブリを1985年に創設。これに前後して『風の谷のナウシカ』(1984年)、『天空の城ラピュタ』(1986年)のプロデューサーを皮切りに、ジブリ作品に積極的に関わった。『火垂るの墓』(1988年)、『おもひでぽろぽろ』(1991年)、『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)、『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999年)、『かぐや姫の物語』(2013年)監督・脚本を務める。実写映画『柳川堀割物語』(1987年)脚本・監督も務めたが、作りこみすぎて製作期間を延ばしてしまい資金を使い果たしてしまったことが、『天空の城ラピュタ』とスタジオジブリ誕生の遠因にもなっている。

高畑勲さんの映画一覧

映像作品以外にも本の著作があり、『映画を作りながら考えたこと』『アニメーション、折りにふれて』といった映画に関わりが深いものから、『君が戦争を欲しないならば』といった講演を元にした著作など、幅広い切り口の評論を残している。
仏文学科出身ということもあってフランス語に堪能で、関わりが深い。2015年にフランス芸術文化勲章を受章しており、その演説のなかで高畑さんは「フランスは最も旅行してきた国で、最も近しいと感じている国家から表彰されるのはこの上なく幸せです」(Le Mondeから)と語っていた。在学中に影響を受けたフランスの詩人・作家、ジャック・プレヴェール『ことばたち』『鳥への挨拶』の翻訳を行っており、プレヴェール脚本のアニメ『王と鳥』、ミッシェル・オスロ監督の長編アニメーション映画『キリクと魔女』字幕翻訳にも関わっていた。

高畑勲さんの著作一覧

1.映画代表作『火垂るの墓』 戦争の悲劇を鮮烈に示す名作

海外でも広く有名な作品のひとつ、『火垂るの墓』(1988年公開)。フランスで高畑さんの訃報が報じられたとき、Le Monde ではMort d’Isao Takahata, réalisateur du « Tombeau des lucioles »(高畑勲、逝去。『火垂るの墓』監督)として、見出しにも挙げられており、「彼の最も偉大な映画とみなされている作品」と記事でも言及されています。

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あらすじ

かつての戦争末期。少年清太と、その妹・節子は神戸の大空襲で身寄りも住まいも失い、兵庫県西宮市の親戚の家に身を寄せた。しかし戦争末期の苦しい状況下で、叔母も次第に余裕がなくなり厳しい態度を取るようになる。清太は節子と家を出て近くの防空壕で暮らし始めた。清太は畑から野菜を盗んだり、孤児として必死に生き延びようとするが、節子は徐々に栄養失調で弱っていくー。

オススメのポイント!

戦時中の兄妹の愛情と悲劇を描いた映画として、もっとも衝撃を受ける作品のひとつです。リアリティあふれる作品ながら、淡々とした展開で、観る人全てにさまざまな感想を抱かせます。子どもの頃に観たかたも多いと思いますが、大人になってから観るとかなり異なる印象を受けることになりそうです。戦争映画として、大人向けアニメ映画として、ぜひ観直していただければと思います。

2.映画代表作『かぐや姫の物語』 高畑監督の8年をかけた遺作

2013年公開。企画開始から8年の歳月、50億円超の製作費が投じられ、高畑さん本人が自らの総集編と見なした作品です。結果的にこれが遺作となりました。欧米からの評価もきわめて高く、第87回アカデミー賞の長編アニメ映画賞は惜しくもノミネートまででしたが、第35回ボストン映画批評家協会賞アニメーション映画賞、第40回ロサンゼルス映画批評家協会賞アニメーション映画賞、第8回アジア太平洋映画賞最優秀アニメーション映画賞、第16回リスボン国際アニメーション映画祭長編アニメ映画グランプリなどをそれぞれ受賞しました。

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あらすじ

昔々、あるところに竹を取って生業にしていた翁(おきな)と媼(おうな)がいた。ある日、翁は光り輝くタケノコの中からとてもとても小さな姫を見つけて自宅へ連れ帰る。姫は、その日のうちに人の赤子の大きさと姿に変わった。翁と媼は、姫を天からの授かりものとして育てることにする。すぐに少女へと成長した姫は、近くに住む木地師の子どもたちから「タケノコ」と呼ばれ、少年・捨丸をはじめとする皆と、野山で遊んでいた。けれども姫の楽しい生活はけして長くは続かなかったー。

オススメのポイント!

手書き風のスタイルで絵があたかも自ら動き出しているような優美なアニメーションに魅了されます。高畑監督の追求した、アニメ表現の境地が堪能できる一作。日本の昔話をモチーフにしたこともあって海外での評価が高い作品です。

3.映画代表作『太陽の王子 ホルスの大冒険』 高畑監督の初監督作品

1968年公開の作品で、宮崎駿さんが初めてアニメーターとして背景画に関わった作品として知られています。宮崎さんは高畑さんお別れの会でこの作品を故人と制作したときの思い出話にふれていました。

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あらすじ

父の手によって他の人間から離され、大自然の中で伸び伸びと育った少年、ホルス。彼はある日岩男の巨人モーグに出会い、モーグの肩に刺さっていた太陽の剣を抜き取った。モーグはホルスに「太陽の王子」についての予言を語り、いずれホルスの許に馳せ参ずることを告げる。しかし太陽の剣を受け取ったホルスを待っていたのは危篤の父。彼は、ホルスに他の人間の所に向かうよう告げて息を引き取った。ホルスの冒険は、ここから始まる。

オススメのポイント!

宮崎駿さんいわく、「なんという圧倒的な表現。なんという優しさだったろう。感動ではなく驚愕にたたきのめされた」。1968年当時では先進的なアニメのひとつで、50年経ったいま、アニメ史に名を連ねる一作として認められています。高畑さんのが中篇・長編作へとシフトするきっかけになった作品、ぜひ一度ご覧ください。

高畑勲さんの映画一覧

4.書籍代表作『映画を作りながら考えたこと』

1991年に徳間書店から単行本が発売され、いまは文庫版が文藝春秋から発売されています。

高畑勲さん『映画を作りながら考えたこと 「ホルス」から「ゴーシュ」まで (文春ジブリ文庫)
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あらすじ

長年、宮崎駿とコンビを組んできた著者が、『太陽の王子 ホルスの大冒険語』から『赤毛のアン』や『セロ弾きのゴーシュ』 、そして『おもひでぽろぽろ』までの考えを一冊にまとめた貴重な論考集。

オススメのポイント!

『映画を作りながら考えたこと』は、けしてよく知られているとはいえないジブリ前史を、高畑監督自ら語るエッセイ・論考集です。手に入りやすい文庫作でもあり、資料を介して作品に近づくのに最も容易な代表作ともいえるでしょう。

5.書籍代表作『アニメーション、折りにふれて』 デビュー作から遺作『かぐや姫の物語』までを語るエッセイ集

2013年に刊行された作品です。

高畑勲さん『アニメーション、折りにふれて
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あらすじ

スタジオジブリの内外で、こんな仲間たちと映画をつくってきたこと。こだわって考えてきたこと。新作『かぐや姫の物語』について。数十年にわたって関わってきた映画との関わりを振り返り、映画づくりにかける思いから、知られざる日常まで、高畑さんが縦横無尽に語るエッセイ集。

オススメのポイント!

日本のコミックや映画を振り返りつつ、映画づくりにかける思い、考察を記したエッセイ集。また、学習院大学大学院人文科学研究科主任研究員を務めていた時期の研究業績、「脳裏のイメージと映像のちがいについて」もここに収録されています。評論家としての高畑さんに近づくための手引きとなるでしょう。

6.書籍代表作『君が戦争を欲しないならば』

2015年6月29日岡山市民会館で開催された、岡山市主催による岡山市戦没者追悼式における平和講演会での講演録を、一冊にまとめるにあたって大幅に加筆したものです。

高畑勲さん『君が戦争を欲しないならば (岩波ブックレット)
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あらすじ

一致団結を求める日本人の同調体質。この恐ろしい日本気質に歯止めとして機能するものこそが憲法九条だ。自身の岡山での空襲体験とともに語られる、平和の重さとそのリアリズム。

オススメのポイント!

戦争を語ってこなかった理由だけでなく、本人の戦争や民主主義に対するスタンスを自ら表明したものとして貴重な講演録。高畑さんの実体験に基づく戦争・平和論は凄みを感じます。高畑さんが9歳のとき、故郷の岡山市で焼夷弾による空襲体験がありました。それをこの時まで公私問わず、殆ど話さずにいたそうです(高畑さんは自らがフランス語や音楽に堪能であったことも殆ど公言することがなかったと言われています)。プレヴェールの「君が戦争を欲しないならば、繕え、平和を」と挙げている箇所は必見。高畑さんの思想が語られていくなかで、今後最も言及される一冊になるでしょう。

7.高畑勲さんの翻訳代表作『ことばたち』

フランスの作家や映画について高畑さんが関わった翻訳は多数ありますが、一つ選ぶなら高畑さんに影響を与えたジャック・プレヴェール『ことばたち』の全訳です。プレヴェールは映画『天井桟敷の人々』の脚本家としても知られ、多くの映画監督と仕事を共にしました。

ジャック・プレヴェールさん『ことばたち
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あらすじ

自由と友愛の詩人、プレヴェール。彼は徹底した反権力の詩人だった。あらゆる抑圧や戦争や破壊に反対し、常にその犠牲になる子どもや女性、貧しい人々、動物や木々の味方でありつづけた。「枯葉」「天井桟敷の人々」の詩人・脚本家の代表作、全訳。

オススメのポイント!

高畑さんによって生き生きとしたプレヴェールの詩風景が日本語へと広がります。高畑さんの脚本と詩作は日本にも早い時期から紹介されており、高畑さんは東京大学在学中に読んで、多くの影響を受けていました(先に紹介した『君が戦争を欲しないならば』でも、プレヴェールの引用を行っています)。この翻訳から、プレヴェールが高畑さんに与えた影響を見定めることもできるかもしれませんね。現在新刊では入手が難しい状況になっているのが残念です。

高畑勲さんの著作一覧

高畑さんの作品と著作が、多くの人に広まりますように。ぜひ、気になった作品を手にとってご覧くださいね。

参考リンク

スタジオジブリ 公式ホームページ