読書で旅した気分になれる小説10選!前編〜行先は実在地から幻想世界まで〜

こんにちは、ブクログ通信です。

何かと忙しい毎日の中で、ふと「旅行に行きたいな」と思うことはありませんか?日常から離れ、仕事や家事から離れ、いつもとは違う環境でリフレッシュできるのが旅行の醍醐味だといえます。とはいえ、思い立ったらすぐ旅行に行くというのはなかなか難しいのも事実です。しかし、読書なら簡単に非日常の世界に飛び込むことができます。

今回はブクログから非日常の世界を旅した気分になれる10作品(前編5作品後編5作品)をご紹介いたします。実在の土地はもちろん、現実とも夢ともつかない幻想世界まで、さまざまな世界で旅行気分を味わえる作品をご用意しました。本の世界へ旅したくなったときは、ぜひ手に取ってみてください

1.『深夜特急1 ー 香港・マカオ』 旅小説の金字塔!バックパッカー気分を味わえる名作

深夜特急1 ー 香港・マカオ〈旧版〉 (新潮文庫)
沢木耕太郎さん『深夜特急1 ー 香港・マカオ〈旧版〉 (新潮文庫)
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あらすじ

「私」は、インドのデリーからイギリスのロンドンまで、バスだけを使い一人で旅すると決めて日本を飛び出した。旅の途中、2か所のストップオーバーが認められる航空券を得た「私」は、乗り継ぎ地を香港とバンコクに決める。各地でさまざまな人と出会い、事件に巻き込まれつつも一人旅を続ける「私」。果たして無事ロンドンにたどり着けるのか——。著者の旅行体験に基づいた、リアルな旅の情景をいきいきと描き出した紀行小説。

オススメのポイント!

本作は第五回日本冒険小説協会大賞ノンフィクション・評論部門大賞を受賞しています。30年以上前の作品ですが、今読んでも本作の面白さは色褪せません。著者の旅行体験が随所に活かされ、バックパッカーの旅行を疑似体験できます。当時まだイギリス領だった香港の活気と熱気に満ちた雰囲気が強く伝わってくるのも、本書の魅力の一つです。マカオのカジノの様子が描かれるパートでは、一緒にギャンブルを楽しんでいる気分も味わえます。現在ではもう味わうことのできない、当時ならではの2つの土地の空気をぜひ感じ取ってみてください。

沢木耕太郎さんの作品一覧

友人に勧められて読みました。香港・マカオの退廃的な雰囲気とカオス(混沌)。古き良き時代の香港の町並みと、そこに暮らす人々が生き生きと描かれいて、しばし非日常空間にトリップしたような感覚になりました。

leon49さんのレビュー

2.『旅猫リポート』愛猫と一緒に旅気分!猫の手による旅日記で全国を巡ってみませんか?

旅猫リポート (講談社文庫)
有川浩さん『旅猫リポート (講談社文庫)
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あらすじ

長く野良猫をしていたナナは、サトルの飼い猫になった。優しくて友達の多いサトルと、少し生意気でマイペースなナナは良いコンビだ。楽しく気ままな暮らしをしていた2人だったが、ある日サトルはナナを手放すことを決めた。新しい飼い主を探すため、サトルの旧友たちに会いに行くことになるナナ。サトルがこれまで過ごしてきたさまざまな土地をめぐるたびに、ナナが知らなかったサトルの姿が少しずつ明らかになる——。

オススメのポイント!

大人気作家・有川浩さんが描く、深い絆の物語です。飼い猫・ナナの視点で描かれ、ユーモラスかつ独特な表現で旅の様子が描写されています。少しずつ浮かび上がるサトルの実像と、ナナとサトルのお互いを強く想い合う姿が心に沁み込んでくる名作です。第34回吉川英治文学新人賞、第4回ブクログ大賞(小説部門)を受賞しています。第26回山本周五郎賞では候補作、第4回山田風太郎賞では最終候補ノミネートとなりました。2014年には絵本化、ラジオドラマ化され、2018年には俳優の福士蒼汰さん主演で映画化もされています。

有川浩さんの作品一覧

最初から最後まで、暖かくて優しい物語でした。
ナナと悟の長い旅は、すごく楽しそうでしたし、再会したみんなと悟の学生時代のお話もとても面白かったです。
途中から後半にかけては、電車の中で涙をこらえながら読んでいた場面が多かったです。
でも、最後は涙が止まりませんでした。
私にもペットというより大切な家族みたいな存在の犬がいるので、ナナの気持ちにも悟の気持ちにも寄り添いたくなりましたし、ギュッと抱きしめたくもなりましたし。
愛が溢れている素敵な作品に出会えてよかったです。

mana0129さんのレビュー

3.『旅のラゴス』 文明の衰退した世界で一人旅する気分を味わえる、ファンタジー長編作

旅のラゴス (新潮文庫)
筒井康隆さん『旅のラゴス (新潮文庫)
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あらすじ

主人公・ラゴスは、「先祖の書物を読破する」ため旅に出た。「この世界」では、人々は高度な文明を失った代わりに超自然的な能力を得て暮らしている。ラゴスは世界を旅するうち、さまざまな土地でさまざまな民族と出会い、知恵と経験を蓄えていくのだった。時に奴隷として働かされ、時に王と称えられることもあった。それでもラゴスは、ただ旅を進める——自分の目的を果たすために。

オススメのポイント!

ラゴスが40年以上かけてめぐった旅を、一緒に歩んだ気分になれる長編小説です。舞台は架空の世界ですが、地球と似ている部分もありどこか懐かしいような世界観が魅力となっています。物語中では特に大きな事件や起伏などがあまり描かれません。だからこそ、本当にラゴスと何十年も旅をしているような、リアルな旅情を感じられます。特に物語終盤から結末にかけては、著者である筒井康隆さんの筆力を存分に堪能できる素晴らしさです。異国の地、最果ての地を旅する気分を味わいたいときはぜひ本作を手に取ってみてはいかがでしょうか。

筒井康隆さんの作品一覧

理知的な男の一人称で進むこの物語は、文章が少し硬く読み進め難いと感じる人もいるかもしれないが、未開拓の架空の星で知識を得て行くラゴスとともに旅を続けると、今暮らすこの社会がどのような過程で出来上がっていったのかが朧げに分かる。
変わった設定のSFでもあり、一生を賭したボーイミーツガールものでもある。ラストの終わり方には胸を締め付けられるだろう。

sunnybeachさんのレビュー

4.『南の島のティオ』 ページを開けばそこは南の島!バカンス気分を味わえる爽やか小説


南の島のティオ (文春文庫)
池澤夏樹さん『南の島のティオ (文春文庫)
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あらすじ

少年・ティオは南の島で父親が経営するホテルの手伝いをしている。裕福とはいえないが、つつましくも幸せな暮らしだ。ある日、若い男が絵ハガキを売りにきた。受け取った人が必ず訪ねてくる魔法の絵ハガキらしい。島の風景を絵ハガキにすれば、受け取った人はみんな島に訪れるというわけだ。ティオの父親は半信半疑で少量の絵ハガキを注文してみたが——(『絵ハガキ屋さん』)。表題作をはじめ、10篇の物語を収めた短編集。

オススメのポイント!

南の島で、太陽の光をたっぷり浴びながらのんびりとした時間を過ごした気分になれる一冊です。登場人物たちはみな穏やかで人柄も良く、読み進めるほどに好きになっていくはず。10篇の物語はどこか不思議で幻想的なお話なので、寝る前に読むと幸せな気分で眠りにつけそうです。都会の暮らしから離れ、心だけでも自然豊かな南の島へショートトリップに訪れた気分を味わえますよ。小学館文学賞受賞作品です。

池澤夏樹さんの作品一覧

心がホクホクするとても暖かい短編集ですね♪10編ともに懐かしい暖かい優しい清々しい物語です。誰しもティオの島に行きたくなり暮らしてみたくなるに違いないなぁ

ありが亭めんべいさんのレビュー

5.『アルケミスト 夢を旅した少年』 羊飼いの少年と共に異国を旅する気分に浸れる世界的名著

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)
パウロ・コエーリョさん『アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)
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あらすじ

羊飼いの少年・サンチャゴは宝物が埋まっている場所を夢に見た。周囲の誰もが信じなかったけれど、自分の夢を信じてサンチャゴは旅に出る。住み慣れた土地を離れ、長く連れ添った羊を手放し、目指すははるかエジプト——。夢を追い求める旅路の果てには何が待つのか。欧米を始め世界中でベストセラーになった壮大な夢物語が今、始まる。

オススメのポイント!

羊飼いの少年・サンチャゴが、夢を追い求めてエジプトまで旅する道のりを疑似体験できる作品です。誰も信じてくれなくても、行く手に困難が待ち受けていても、サンチャゴは夢を諦めません。ときには挫けそうになったり、自分を疑ってみたり、心揺れるサンチャゴの姿に誰もが共感できるはずです。また、夢に向かって進み続けるサンチャゴの姿は勇気をくれます。古い教会や羊が暮らす平原、灼熱の砂漠に異国の街並みなど、日本とは異なる風景がいきいきと描かれているのも魅力です。

パウロ・コエーリョさんの作品一覧

夢を追う主人公の青年がさまざまな人との出会いの中で生きる知恵を学んでいく。ファンタジー要素がやや強い気もするが、その土地ならではの宗教や信仰心もあり、それなりに納得できる。
もっとも心に残ったのは、旅の中で出会った馬使いの男の言葉である。「私は過去にも未来にも生きていない。人生は、今私たちが生きているこの瞬間。」なんともシンプルだが、人生の核心を突いている。夢を見て、夢を追い、未来を期待するが、そんな先のことは誰にもわからない。一つ一つの前兆に気づきながら、今に集中すること。
夢を追う人は是非読んでみてください。

七瀬。さんのレビュー

旅をテーマにした作品は多数ありますが、ここでご紹介したものはどれも格別の旅した気分を味わえる名著ばかりです。なかなか旅行に行けないときには、ぜひ読書を通じて心の旅に出発してみてくださいね。後編5作品もお楽しみに!