【2020年上半期】文庫版ミステリーおすすめ10選!後編~人気の著者新作からメディア化作品まで~

こんにちは、ブクログ通信です。

2020年上半期には、人気作家さんの新作から今話題の注目作までさまざまなミステリー小説が出版されました。前編に引き続き、後編5作品をご紹介いたします。長編小説から短編集まで幅広く取り揃えました。

「今日は何を読もうかな」と思ったとき、「インパクトのあるミステリーを読みたい」と思ったとき、ぜひ手に取ってみてほしい作品ばかりです。2020年上半期を代表する名作の数々、ぜひチェックしてみてくださいね。

6.『もういちどベートーヴェン』本格ミステリーとクラシック音楽を一度に楽しめる話題作

もういちどベートーヴェン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
中山七里さん『もういちどベートーヴェン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
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あらすじ

司法修習生の岬洋介は、司法試験をトップの成績で合格した。同じく法曹界入りした天生高春は、ふとしたことで岬と親しくなる。しかし、岬が天才ピアニストとしての顔を持つことを知り、その正体に疑問を抱くのだった。検察庁の実務研修を受けていた2人は、夫を視察したとして送検されてきた牧部日美子に出会う。犯人は彼女しかいないと思われた中、岬がある可能性を指摘をして——。

オススメのポイント!

中山七里さんの音楽ミステリーシリーズで登場する人気キャラクター・岬洋介が登場する物語です。彼の知られざる過去を描いた作品と会って、中山作品ファンにはたまらない一冊だといえます。もちろん、岬洋介を知らない人でも十二分に楽しめる傑作です。クラシック音楽とミステリー、検察とピアニスト、まるで正反対に思える要素を見事に結びつけてしまう中山さんの筆力に唸らされる名作となっています。

中山七里さんの作品一覧

文字でも十分曲を思い起こさせてくれるけど、できるなら聴きながら読みたい。
曲の味わいをそれまで以上に深めてくれる。
「疾走するメロディと駆け上がるリズム。いったん内省的になったかと思えば、主題が姿を変えて頭を擡げてくる。椅子の背に凭れて安閑としていることは許されない。ステージで繰り広げられる乱舞に己の心拍を合わせるしかない。」
ほんとに音が聞こえてくるし、岬洋介の演奏に引き込まれて行く観客の心情まで見事に表してる。
すごい表現力。

hatoandtoriさんのレビュー

7.『ファーストラヴ』 父親を殺した女子大生の心を描く、第159回直木三十五賞受賞作

ファーストラヴ (文春文庫)
島本理生さん『ファーストラヴ (文春文庫)
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あらすじ

女子大生の聖山環菜が父親殺しの容疑で逮捕された。美貌を血で染め、多摩川沿いを歩いていた環菜。事件はマスコミに大きく取り上げられ、臨床心理士の真壁由紀のもとにこの事件をノンフィクションで執筆しないかと誘いが入った。由紀は環菜やその友達、家族との面会を重ねるうち、環菜の過去を知るのだった……。第159回直木賞受賞作。

オススメのポイント!

主人公・環菜の抱える過去、傷、家族との軋轢を島本さんがみずみずしく描き出す本作。扱うテーマは重く、事件の真相に迫る展開も決して明るい雰囲気ではありません。しかし、ぐいぐいと読ませる魅力的な作品です。事件を取り巻くさまざまな人の思い、少しずつ明らかになる真相に、きっとあなたも心揺さぶられるはず。2021年には北川景子さん主演で映画化が予定されています。

2021年ロードショー 主演:北川景子さん 監督:堤幸彦さん

映画『ファーストラヴ』公式サイト

島本理生さんの作品一覧

じわりじわり、胸がひりつくような熱さを残す作品。
思わず環奈と由紀に共感しながら読んでしまう部分も多かった。島本理生氏は、女性の心理描写を描くのが上手いと思う。純文学・恋愛小説の名手と言われているが、この男女関係の何とも言い表せられない切なさややり切れなさ、悔しさなど、沸々と浮かび上がる感情の描写が美しく、読んだあとも鈍い痛みを残す作品だった。
そして臨床心理士の視点という切り口で事件を描いていることに、読者に様々な角度から考えさせる社会作品になっているのではないか。
心・感情・内面、本人が感じた思いをどこまで社会は受け止め、許容し、判断するのか。難しい局面であり、今の時代に課題とされるテーマの一つだと思う。

優香さんのレビュー

8.『AX アックス』 最強の殺し屋の家族愛が胸を打つ、異色のミステリー

AX アックス (角川文庫)
伊坂幸太郎さん『AX アックス (角川文庫)
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あらすじ

超一流の殺し屋である「兜」。家では妻に頭が上がらない男である。その恐妻家ぶりには、一人息子も呆れるほどだ。兜が殺し屋をしていることは、家族も知らない。息子が生まれてから兜は仕事を辞めたいと思っている。引退に備えて金を稼ぐため、仕方なく殺し屋を続ける兜。しかしある日、思わぬ人物から襲撃を受けて——。

オススメのポイント!

殺し屋であり父親であり恐妻家という、なんともユニークな兜の姿が魅力です。その稼業ゆえ、生臭い展開に巻き込まれることは当然なのですが、どこかユーモラスな描写で軽やかに乗り切ってしまうのが伊坂作品ならでは。軽妙に進んできた物語が佳境に差し掛かる辺りから、雲行きは一気に妖しくなります。意外な結末に、きっと心揺さぶられるはず。家族愛×ミステリー、殺し屋×愛情という不思議な組み合わせをぜひ味わってみてください。

伊坂幸太郎さんの作品一覧

 愛おしくて切ない、最強の殺し屋のお話です。大切な家族を持つ殺し屋の行末は、予想外の結末でした。そして最後のエピソードが暖かくて泣けます。
過去作のキャラクターが想像以上にたくさん登場したのは嬉しかったです。
私は殺し屋でもなければ法を犯したことも今のところないですが、過去の過ちを思うと兜のように「こんな自分が幸せに生きていく権利はあるのだろうか」と思うことはあります。その答えのヒントがこの物語にありました。
『やれるだけのことをやりなさい。それでダメならしょうがないんだから』。

sugarさんのレビュー

9.『僕が殺した人と僕を殺した人』 読売文学賞、渡辺淳一文学賞、織田作之助賞の3冠達成作品


僕が殺した人と僕を殺した人 (文春文庫)
東山彰良さん『僕が殺した人と僕を殺した人 (文春文庫)
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あらすじ

2015年の冬、アメリカを震撼させた連続殺人鬼が逮捕された。彼は「サックマン」と呼ばれていた。国際弁護士の「わたし」は、サックマンの弁護を担当することになり、30年前の記憶を甦らせる。台湾で過ごした日々、「わたし」は13歳だった頃に「サックマン」と出会っていたのだった。台湾を舞台に描かれる、青春ミステリの傑作。

オススメのポイント!

台湾を舞台にした、熱量の高い青春ミステリです。エキゾチックで、どこか懐かしさも感じる台湾の描写にも注目してみてください。また、連続殺人犯と弁護士という、2つの立場に分かれてしまった2人のやり取りの切なさも本作の魅力です。読み進めるほどに切なく、それでも先を読まずにはいられない、ミステリの真骨頂ともいえる葛藤をぜひ体験してほしいと思います。読売文学賞、渡辺淳一文学賞、織田作之助賞の3冠を獲得した注目作です。

東山彰良さんの作品一覧

自分のヘソとなるような青春の傷を癒やすための物語。
自分の中の因果関係ってのは
やっぱり子どもの頃に出来るものです。
因果関係を解決する、
自分で認識しているにしろしていないにしろ、
とても大変なこと、
加えて意義あることだろうなぁ。

bubu-oさんのレビュー

10.『合理的にあり得ない』 美貌の弁護士×天才助手による、爽快ミステリー短編集

合理的にあり得ない 上水流涼子の解明 (講談社文庫)
柚月裕子さん『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明 (講談社文庫)
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あらすじ

上水流涼子は容姿端麗、頭脳明晰の弁護士……だった。不祥事によって弁護士資格を剥奪されてしまったのだ。IQ140 の貴山をアシスタントにした涼子は、「殺し」と「傷害」以外なら何でも引き受ける探偵エージェンシーを運営している。頭脳と美貌を武器に、涼子はさまざまな「ありえない依頼」を解決に導くため、知略をめぐらせていく——。

オススメのポイント!

美しくもワケありの元・弁護士と何でもそつなくこなす助手のコンビが活躍する軽快な物語です。5つの連作短編が収録されており、サクサク読み進められます。主人公をはじめ、個性豊かな登場人物たちが裏社会で活躍する様に読後はスカッと爽快な気分になれるはず。重くなり過ぎないミステリーを読みたいとき、ぜひ手に取ってみてください。

柚月裕子さんの作品一覧

弁護士資格を剥奪された後、探偵エージェンシーを運営する上水流涼子。頭脳明晰な貴山を助手にして、欲にまみれた人間たちの難題を知略と美貌を武器に解決する、極上痛快エンターテイメント。
“あり得ない”依頼を次々と解決する展開が爽快過ぎる。キャラクターが立っているのでドラマ化必至でしょう。読者が各々好みのキャスティングする楽しみがあることも含め、想像力を高める作品である。

iyoharuka13さんのレビュー

2020年上半期は、読み応えのあるミステリーや人気作家の新作などが多く登場しました。文庫化して手に取りやすくなった人気作品も多数あるので、通勤や通学のお供にしてみてはいかがでしょうか。