暑さを吹き飛ばすホラー小説10選!前編〜読めば背筋がひやりとする超冷感作品特集〜

こんにちは、ブクログ通信です。

今年の夏も厳しい暑さが続きましたね。必要最低限の外出以外はクーラーのきいた部屋に閉じこもっている……なんて人も多かったのではないでしょうか。残暑が続く毎日に、「暑さ疲れ」を感じる日もあったかと思います。そんなときは、読書で「涼」を感じてみてはいかがでしょうか。

ブクログからぜひ手に取ってほしいオススメのホラー小説を10作(前編5作品・後編5作品)紹介いたします。文字を読んでいるだけなのに、気づけば寒くなる極上のホラー作品ばかりです。背筋が凍りつくような超冷感小説をぜひご堪能下さい。

1.『残穢』 怖すぎると評判の作品!映画化もされた小野不由美さんの最恐小説

残穢
小野不由美さん『残穢
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あらすじ

京都市に暮らす「私」は小説家だ。ホラー小説も執筆している「私」は読者から「怖い話」を募集しており、その関係で恐怖体験の相談を受けることもある。ある日、読者の一人から手紙が届いた。誰もいない部屋で畳を掃くような音がするのだという。「私」は前にも同じような内容の手紙を別の読者からもらったことを思い出す。調べるうちに、奇妙な共通点が明らかになり——。

オススメのポイント!

本作は、まるで実話を読んでいるかのような臨場感が魅力です。主人公が作者自身を思わせる人物像であり、実在の人物が作中に登場するなど、「もしかして実話なのでは?」と思ってしまい、怖さに拍車がかかります。読み進めるうちに背後が気になり、少しずつ背筋が寒くなってくること必至です。和室を背後にして読まないことをおすすめします。2012年に『ダ・ヴィンチ』の「怪談オブザイヤー」で第1位を獲得、2013年に第26回山本周五郎賞を受賞しました。2016年には女優の‎竹内結子さん主演で映画化もされています。

小野不由美さんの作品一覧

淡々と調査したことや過去の事実が語られ、文章が特に怖いわけではないのに、読み終わってからすごく恐ろしくなった。本を手放したくなるという評判、見に沁みて実感した。図書館で借りた本だったのだが、借りた日に大急ぎで読んで翌日大急ぎで返却してきた。
文章を読んだこと、その本を持っていることが穢れに繋がるようで・・・。本の内容もなるべく早く忘れてしまいたい、と思わせる作品だった。こわいこわい。

nino01さんのレビュー

2.『ぼっけえ、きょうてえ』醜く生まれついた女郎が語る「とても、怖い」話がここにある。

ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)
岩井志麻子さん『ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)
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あらすじ

岡山のとある遊郭で、寝付かれないという客に女郎が語り出したのは壮絶な身の上話だった。生まれつき醜く、間引き専門の産婆をしていた母の手伝いで赤ん坊を殺す手伝いをしていた女。自分を虐待した父親を殺し、遊郭に入ってからは盗みを働き、別の遊女を死に追いやったこともある(『ぼっけえ、きょうてえ』)。表題作他3篇を収録した、恐ろしい短編集。

オススメのポイント!

岡山地方の方言で書かれ柔らかな印象を受ける文章が、後にじわじわと恐ろしさを感じさせる一冊です。読み進めるほどに人間の業や執念、遊郭に閉じ込められた女たちの怨念といったものに、徐々に絡め取られていくような気になります。ただ怖いだけでなく、不気味さ、禍々しさといったさまざまな恐怖を感じられる短編集です。本作は1999年に第6回日本ホラー小説大賞、2000年に第13回山本周五郎賞を受賞しています。2006年には「マスターズ・オブ・ホラー」シリーズの1つとして映像化、WOWOWにて放映されました。

岩井志麻子さんの作品一覧

日本の閉鎖的な村の怪奇な短編集。作者の出身地である岡山が舞台となっていて、方言で語られるのだが、これがなんとも言えず恐ろしく、鳥肌が立ちっぱなしだった。
表題作は、貧しい村に生まれた女性の人生がいかに悲惨か、読んでいて苦しくなる。他の短編も、どれも非常に構成が巧いと感じた。とにかく、一度手に取ったら止められず、のめりこんであっという間に読み終わった。怖い話が苦手な人は寝る前に読まないほうがいいかもしれない。

aswさんのレビュー

3.『ぼぎわんが、来る』 新婚夫婦に迫りくる、正体不明の怪異

ぼぎわんが、来る (角川ホラー文庫)
澤村伊智さん『ぼぎわんが、来る (角川ホラー文庫)
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あらすじ

幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に、訪ねてきた者がいる。取り次いだ後輩の伝言には、もうすぐ生まれてくる娘の名前があった。後輩は大けがを負い、入院先で少しずつ様子がおかしくなっていく。その頃から、秀樹の周りではおかしなことが起こり始めた。後輩の不審な死、不気味な電話やメール……一連の怪異は祖父が言っていた化け物によるものなのか。秀樹は伝手をたどり、霊媒師の比嘉真琴に助けを求めるが——。

オススメのポイント!

得体の知れないものが少しずつ身の回りに迫りくる恐怖を味わえます。「ぼぎわん」というなんだかわからない名前も恐ろしく、ページをめくるほどに不安と恐怖が深まっていき、どんなに暑い日でもひんやりと涼しくなるはずです。2015年に第22回日本ホラー小説大賞を受賞、2018年にはマンガ化されています。2018年12月には、『来る』のタイトルにて岡田准一さん主演で映画化されました。

澤村伊智さんの作品一覧

何気ない日常が、過去が、音を立てて崩れ去る。
主観と客観で人は別人のように変化し、印象がガラリと変わる。
得体の知れない恐怖、地を這うような気持ち悪さ。
ひとつひとつのカケラが組み合わさって見えてくる過去の真実。
そして、人の恐ろしさも。
非常に読みやすく、ホラーを普段読まない人にもオススメできると思います。

keiyaさんのレビュー

4.『怪談のテープ起こし』 死の間際の声を収めたカセットテープ。あなたは聞きますか?


怪談のテープ起こし
三津田信三さん『怪談のテープ起こし
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あらすじ

編集者である三津田信三は、ライターの吉柳からとある企画提案を受ける。「自殺する間際に、カセットテープにメッセージを吹き込む人が、たまにいる。それを集めて原稿に起こせればと、俺は考えている」。しかし、吉柳は突然失踪し、三津田のもとには3人分のテープ起こし原稿が届いたのだった。自殺する者が語る内容はどんなものか。日常に潜む恐怖をあぶりだす、6篇の怪談を収めた短編集。

オススメのポイント!

「誰かが死ぬ間際のメッセージ」をテーマにした、不穏な空気が立ち込める短編集です。常に死の気配が漂う雰囲気で、死を決意した人たちのメッセージを読んでいると、真夏日でも熱帯夜でもゾクゾクしてきます。作者自身を主人公に据えているためかなりリアルな描写が多く、作中に起こることは本当に起きたことなのかもしれないと怖くなってくるはずです。日常の中でありふれたシーンと怪異を絶妙なバランスで描き出しているため、読後には毎日の暮らしの中にもふとした恐怖を感じてしまうかもしれませんよ。

三津田信三さんの作品一覧

怪奇連作短編集。どの話も、じわじわと迫りくる恐怖に溢れています。起こる怪異、そしてその怪異の原因がはっきりと分からないままなのがなんとも恐ろしくて。各話の間に挿入された、実話っぽい(「ぽい」のだと思いたいです)怪異もまた怖い。どきどきしながら読み終えましたが、今のところ、私にはまだ怪異は起こっていないようです……。
お気に入りは「留守番の夜」。これが一番怖かった作品。シチュエーションがとにかく怖いのはもちろん、謎めいた死体のあらわすものがあれって……でも何なのかははっきり分からないところが、とんでもなく気持ちの悪い一作でした。

ao-nekoさんのレビュー

5.『夜市』 ほしいものが何でも手に入る夜市へ、ようこそ

夜市 (角川ホラー文庫)
恒川光太郎さん『夜市 (角川ホラー文庫)
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あらすじ

「夜市」では、妖怪たちがさまざまなものを売っている。対価を支払えば、望むものは何でも手に入るのだという。小学生のとき夜市に迷い込んだ裕司は、弟と引き換えに野球の才能を手に入れた。野球部のヒーローとして成長した裕司だが、弟を売った罪悪感は常に消えずにあった。今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市に足を踏み入れる——。

オススメのポイント!

恐ろしいけれども美しく、妖しいけれども惹き込まれる、夏の夜の読書にぴったりの名作です。夜に開かれる妖怪たちの市場は、異国のような風景が広がり禍々しい異形のものたちがひしめいています。しかし一方で、どこか懐かしいような雰囲気が漂い、幼い頃に訪れた夏祭りをも思わせます。読み進めるうちにきっとみなさんも足を踏み入れてみたくなるはず。夜市で繰り広げられる驚きのドラマをぜひご堪能下さい。2005年に第12回日本ホラー小説大賞を受賞、2005年下半期の第134回直木賞の候補作にもなりました。

恒川光太郎さんの作品一覧

胸が詰まるホラー。このような世界観があるのかと、非常に驚いた。恒川さんにハマるきっかけとなった本。
日常の隙間からのぞく異界を、シンプルな文章で書かれるのだが、そのシンプルさがかえって恐ろしい。
夜市、風の古道ともに、この世とは異なる理があるのだが、それが魅力的。
懐かしく、それでいてせつなくなる。読了後に、神隠しにでもあっていたかのような気分になった。

とら子さんのレビュー

ここでご紹介した作品を読むと、背後が気になったり、誰もいない部屋を見るのが怖くなったりするかもしれません。読後はきっと、「涼」を通り越し背筋に寒気を感じると思います。どの作品も、ぜひ心して手に取ってみてくださいね。後編5作品もお楽しみに!