世界観に浸れる!おすすめファンタジー小説10選〜後編〜

こんにちは、ブクログ通信です。

子どもから大人まで、ファンタジー小説は幻想や夢を与えてくれます。人との関係に悩んでいるときや、仕事や勉強がうまくいかないときなど、苦しいときであっても、ファンタジー小説は読者をその世界にどっぷりと引きこみ、勇気や活力をチャージさせてくれます。

そんな、世界観に浸れるファンタジー小説10作品の中から、前編に引き続き、後編5作品をブクログのみなさんにご紹介いたします。多数の作品の中から、ブクログのみなさんから高い評価を受けている作品、読みやすい作品、元気や勇気をもらえる作品を中心に集めました。自宅でも、電車やバスでも、作品の中の世界と行き来する贅沢な時間をお楽しみください。

6.ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』優しくない世界に生きるすべての人へ

はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)
ミヒャエル・エンデさん『はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)
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あらすじ

少年バスチアンは見た目のせいでいじめられ、父親ともうまくいかず、孤独だった。ある日、いじめっ子から逃れようと入った古本屋で、『はてしない物語』という本に魅了され、盗みを働く。本を読むうち、そこに描かれる「ファンタージエン」という国の危機を救うのは自分だと気づき、物語の世界へと吸いこまれていく。授かった力で世界を再構築していくバスチアンだが、その力を使うたび、現実世界のことを一つずつ忘れていき……。

オススメのポイント!

優しくない現実を生きている人にとって、ファンタージエンは救いの世界かもしれません。ですが、「自分を忘れる」とはどういうことか、ぜひバスチアンと一緒に気づいてほしいと思います。また、布製のハードカバーでは、実際にバスチアンが手に取った『はてしない物語』と同じ装丁になっています。もしかすると今度は、あなたがファンタージエンの危機を救うのかもしれません。そんなドキドキを感じながら読んでほしい一冊です。

ミヒャエル・エンデさんの作品一覧

この本は数えきれないほどの人が読んでいる名作なのに、読んでいる間はこの本も、それを読んでいる自分も特別な存在であるような、バスチアンの冒険を読んでいるのは世界で自分だけのような気がしました。そういう幻想を抱かせてくれる作品は本当にすごい。
装丁も素晴らしい。読者がこの幻想に入り込むことがエンデの狙いなら、装丁はこれにする他ないですね。

pramさんのレビュー

7.梨木香歩『裏庭』児童文学ファンタジー大賞受賞作!人は誰しも傷を負って生きている

裏庭 (新潮文庫)
梨木香歩さん『裏庭 (新潮文庫)
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あらすじ

丘の麓にある洋館・バーンズ屋敷は、かつて英国人一家の別荘だったが、今は荒れ放題になっていた。その昔、バーンズ屋敷で遊んでいたという話を友人の祖父から聞いた照美は、ある出来事をきっかけに、屋敷にある秘密の「裏庭」へと入りこむ。「裏庭」の中で、出会いと試練を繰り返しながら壮大な大冒険を続けるうち、照美は自分自身に出会い、成長していく。心の傷の扱い方をそっと教えてくれる、あたたかいファンタジー。

オススメのポイント!

児童文学ファンタジー大賞を受賞していますが、親になった人も、親であり子でもあるという人も、それぞれに心に残る場面がある作品です。登場人物たちの名前も創意工夫がされていたり、「対」というモチーフが効果的に使われていたりするので、そういったところに着目しながら読み進めるのもオススメです。二つの世界がフォントを変えて書かれているので、場面転換に惑わされることもなく、すらすら読むことができます。

梨木香歩の作品一覧

自分と向き合い前に進めるように背中を押してくれる小説。
主人公が自身でも気付いていなかった心の傷と向き合い、不安の中、希望が見えるまでひたむきに前に進んでいく姿に主人公の成長だけでなく、周りの人の心境に変化をもたらせていった。
比べるよりも自分を磨いて、自分自身だけでなく自分の大切な人へいい影響を与えれる人になりたいなと思えた素敵な本。

harunotsukushiさんのレビュー

8.荻原規子『空色勾玉』古代日本を舞台にした純和製ファンタジー

空色勾玉 (徳間文庫)
荻原規子さん『空色勾玉 (徳間文庫)
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あらすじ

6歳で故郷を失った狭也は、輝の大御神が治める羽柴の地で育った。15歳になった狭也は祭の日に、自分が輝に敵対する、闇の女神に仕える水の乙女の生まれ変わりと知らされる。狭也にとってその事実は、長年見続けてきた悪夢の現実化でもあった。運命の歯車は加速度的に回りはじめ、輝の宮へ仕えることとなった狭也は、とらわれの身となった稚羽矢という人物と出会う。二人の出会いは輝と闇の運命をも大きく揺るがしていく。

オススメのポイント!

古事記や日本書紀といった日本神話、大祓祝詞などの神道文化がベースになっているので、とくに日本人読者には親和性の高いファンタジーです。不死の力を持つ輝と、転生を繰りかえす闇との攻防戦がどのような結末を迎えるのか、最後まで息をつくことのできない緊張が張り巡らされています。神話や史実をもとにした勾玉三部作と呼ばれる残りの二作、『白鳥異伝』『薄紅天女』もオススメです。

荻原規子さんの作品一覧

読み手は瞬く間に作者の創り出す日本神話の世界へと引き込まれ、等身大の少女として、その圧倒的なスケールの世界の真の姿へ迫っていく。
あの無味乾燥とも感じてしまいがちな「古事記」をベースに、なんと魅力の溢れた世界を創造してしまったことか。そして、日本の自然美への描写、引用がなんと素晴らしいことか。

doorttさんのレビュー

9.村上春樹『1Q84』2つの月が浮かぶ世界に潜りこんだ二人は!?


1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)
村上春樹さん『1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)
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あらすじ

スポーツインストラクターの青豆は、危険な裏家業を持つ。数学の予備校講師をしながら小説家になるべく新人賞に応募している天吾は、親しい編集者・小松からある重大かつセンシティブな仕事を持ちかけられた。二人は気づかぬうち、別々のルートから「1Q84年」の世界へと入りこんでいた。かつて孤独な少年少女だった二人は、現実世界へと戻り、再会を果たすことができるのか?ノーベル賞候補作家が描く長編ベストセラー。

オススメのポイント!

文庫本・BOOK1~BOOK4では、青豆と天吾の物語が交互に語られます。二人ともある意味で平凡な見かけをしているのに裏があり、読者はボタンを掛けちがうように、いつの間にか「現実」から、「1Q84」の世界へと引きずりこまれてしまいます。熱烈なファンがいる一方で、敷居が高いと思われがちな村上さんの著書ですが、長編とは思えないくらいサクサク読めるので、村上さんの本を読んだことのない方にもオススメです。

村上春樹さんの作品一覧

ひとまず1巻だけと思いきや、恐ろしいほどの中毒性。
読み終えると青豆と天吾の行方が気になるあまり本屋へ走り、
全巻揃えて寝る時間も忘れて読み耽ってしまった。

秋月スズメさんのレビュー

10.J.R.R.トールキン『指輪物語』すべてを統べる指輪をめぐる、冒険と戦いの記録

新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫)
J.R.R.トールキンさん『新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫)
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あらすじ

アトランティス崩壊後の世界である中つ国には、人間だけでなく、ホビットやトロル、エルフ、ドワーフなど、さまざまな妖精や魔法使いが住んでいた。ホビット族である主人公・フロドとその仲間は、闇の勢力を完全に滅ぼすべく、旅をしている。出会いと別れ、友情と裏切りを繰り返しながら、黄金の指輪をめぐり、物語は空前絶後の大戦争へと発展していく。20世紀を代表するハイ・ファンタジー作品。

オススメのポイント!

映画『ロード・オブ・ザ・リング』といえば、知らない人がいないほど有名ですが、その原作がこの『指輪物語』です。北欧神話やケルト神話を愛したという作者が緻密に築いた妖精や魔法使いたちの世界が、いきいきと描かれています。登場人物もさることながら、世界を統べるたった一つの「指輪」というモチーフも魅力的で、ファンタジーの世界にどっぷりと浸かることができます。古典に触れたい人にはとくにオススメの一冊です。

J.R.R.トールキンさんの作品一覧

この指輪物語の世界や歴史について、ものすごく細かいところまで設定されていて、この作家の頭の中って一体どうなっていたんだろうと不思議に思うほど。作家自身が、この物語にとり憑かれているような印象。まるで、作家がこの物語の世界に行ったことがあって、帰ってきてから見聞きしたことを纏め上げたかのよう。凄まじい。

ku-sukeさんのレビュー

ファンタジー小説には古典から日本独自のもの、ミステリーとさまざまなものがあります。好きな時代背景やジャンルから選んでみてはいかがでしょうか。前編5作品を出発点に、壮大な世界観に浸ってみてくださいね。