スリリングなストーリー展開と丁寧な人物描写が秀逸! 乃南アサさんオススメ5選!

こんにちは、ブクログ通信です。

ミステリーやサスペンスを得意とする乃南さんは、1996年に『凍える牙』で直木賞を受賞。2017年には『しゃぼん玉』が林遣都さんと市原悦子さんのダブル主演で映画化、『ウツボカズラの夢』が志田未来さん主演でドラマ化するなど、これまでに多数の作品がメディア化されています。2018年には、40回以上訪れたという台湾を舞台にした『六月の雪』が刊行されました。

ブクログから乃南さんの代表作・オススメ作を5作紹介いたします。多作な乃南さんの作品の中から、ブクログのみなさんから高い評価を受けている作品、初めて手に取る方でも読みやすい作品、知名度のある作品を中心に集めました。ぜひ参考にしてくださいね。

『乃南アサ(のなみ あさ)さんの経歴を見る』

乃南アサさんの作品一覧

1.『凍える牙』女刑事が変死体の謎を解き明かす!

凍える牙 (新潮文庫)
乃南アサさん『凍える牙 (新潮文庫)
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あらすじ

深夜のファミリーレストランに来店した男が、突然、炎上し、死亡した。遺体の両足からは犬に咬まれたような痕が。さらに数日後、ベイエリアにて何者かに咬み殺された死体が発見される。二つの事件を追う音道貴子は、相棒である男・滝沢に苛立ちながらも捜査を進めていく。そして浮かびあがった犯人像は、想像もしえない獣の姿だった……!疾走感のあるクライマックスが爽快な、女刑事・音道貴子シリーズ第1作。

オススメのポイント!

警察という男社会の中で奮闘する女性の孤独な闘いが、貴子の独白や滝沢との会話を通して書かれています。二人の関係性の描写力は高く評価され、本作品は第115回直木賞受賞にいたりました。芯の強い貴子の人間性に惹かれる読者も多く、乃南作品の中でも人気のシリーズです。2001年には天海祐希さん、2010年には木村佳乃さん主演でドラマ化、2012年には韓国でも映画化されるなど、国内外で話題となった作品です。

思いもよらない殺害方法での殺人事件。
事件の真相を究明する面白さ以上に人間模様やスリリングな追跡劇が印象に残った。
タッチは柔らかだが、気骨のある刑事のドラマ。

seikyohさんのレビュー

2.『しゃぼん玉』偶然の出会いが、人生を変える

しゃぼん玉 (新潮文庫)
乃南アサさん『しゃぼん玉 (新潮文庫)
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あらすじ

両親から見捨てられ、自暴自棄になった伊豆見翔人は、女性や老人だけを狙った犯罪を繰りかえし、逃げまわる生活を続けていた。宮崎県の奥地・椎葉村に流れた翔人は、行きがかりで助けた老婆・スマの世話になることに。すぐに金を盗んで逃げるつもりが、村人たちからスマの孫と勘違いされ、逃げるどころか山仕事や村の祭りの手伝いに駆りだされることに。村人たちとの日々を過ごすうち、狂犬のようだった翔人の心に変化が表れ——。

オススメのポイント!

良くも悪くも、人を変えるのは「人」なのかもしれません。心の支えとなる誰かの存在があれば、自分の罪に向き合い、人生の舵を大きく切ることができる。あたたかいごはんを食べる、誰かにほめられる、必要とされる。自分を大切にしてもらえる経験、愛される経験が、人を成長させるのだと感じさせられます。2017年の映画化作品は、2019年に亡くなった女優・市原悦子さんの遺作となったことから、再び注目を浴びています。

罪を重ねた青年が更生していく内容でした。
主人公の青年が罪を重ね、人を傷つけ自滅していく様な話なのかな?と途中思いなんか気分悪くなりそうだなと考えていたが、全く違って最後は感動しスッキリした気分で読み終えた。人間はやり直しができるが、過去に犯した罪は一生心に残るということを学んだ小説でした。

ゴンさんのレビュー

3.『いつか陽のあたる場所で』誰にも語れぬ過去を持つ二人に、明るい未来はあるのか?

いつか陽のあたる場所で (新潮文庫)
乃南アサさん『いつか陽のあたる場所で (新潮文庫)
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あらすじ

東京の下町・谷中で暮らす二人の女性、小森谷芭子と江口綾香には暗い過去があった。芭子は、その過去を絶対に人に知られてはいけないという緊張の中で、息を詰めるようにして日々を過ごしている。一方、綾香はパン職人としての新しい人生を歩むべく修行にいそしみ、新たな恋に心躍らせるなど、しばしば芭子を驚かせていた。過去に足を引かれながらも前に進もうとする二人の心理描写に一条の光を見いだすヒューマンドラマ。

オススメのポイント!

29歳の芭子が、41歳の綾香の力強い生き方に惹かれ、少しずつ成長していく姿がリアルに描かれます。決して明るいだけの話ではありませんが、人間の弱さをつぶさに見つめ、包みこむような小説になっています。人生で一度もつまづかない人はいませんが、大きくつまづいた人が立ち直ることの難しさも痛感させられます。2013年、2014年にはテレビドラマ化し、上戸彩さんと飯島直子さんが主演の二人を演じました。

人生につまずくことは世の常でしょう。そんな中で小さな希望を見つけることができるのかどうか。人が生きるとはどういうことなのか、何が生きる意味をあたえてくれるのか。悲しみは何にゆらいしているのか。そんなことをしみじみと感じさせてくれる本。

book54さんのレビュー

4.『鎖』静の緊張がみなぎる!音道貴子シリーズ長編第2弾


鎖(上) (新潮文庫)
乃南アサさん『鎖(上) (新潮文庫)
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あらすじ

東京都武蔵村山市で、占い業を営む夫婦とその信者が惨殺された。音道貴子は星野という男とコンビを組み、捜査に当たることに。エリート意識の高い星野と貴子はたびたび衝突し、ついにはそれぞれ単独で捜査する事態へと発展してしまう。占い師が架空名義で多額の預金をしていた疑いが浮上したことから、銀行関係者をあたる貴子はある人物と再会する。しかし、気づけばどこか知らない場所へと連れ去られ——。

オススメのポイント!

『凍える牙』で躍動感あふれる活躍を見せた貴子が、今度は身動きを取ることすらできないまま事件が進んでいきます。星野のクズ男っぷりにはイライラさせられますが、前作から読んでいる人は、滝沢と貴子の絆にグッとくること間違いなしです。2016年には小池栄子さん主演でドラマ化。前日譚的な位置づけとなる短編集『花散る頃の殺人』は、長編ほど気負わず読めるので、乃南アサさんの本を読み慣れていない人におすすめです。

警察の男社会に溶け込むことが難しい中、女刑事(バイク乗り)が地道に頑張っていくシリーズ
中盤以降は特にスピード感があり、ほとんど心情描写しかないのに読み応えがあった。

little-tadpoleさんのレビュー

5.『涙』挙式直前、婚約者はなぜ姿を消したのか?

涙 上巻   新潮文庫 の 9-15
乃南アサさん『涙 上巻 新潮文庫 の 9-15
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あらすじ

「俺のことは、忘れてくれて、いい」。1964年、東京オリンピック前夜にかかってきた電話で、藤島萄子は一方的な別れを告げられる。その直後、婚約者である勝が凄惨な殺人事件の嫌疑がかけられていることがわかった。茫然自失となり、ドン底に突き落とされる萄子だが、勝の潔白を信じ、どこまでも勝の足跡を追う。正義感あふれる男であった勝はなぜ疾走したのか?二人を引き裂いた事件の真実に、涙が止まらない……。

オススメのポイント!

高度経済成長期の日本を象徴するような文章が散りばめられており、時代背景がすんなりと頭に入ってきます。良家のお嬢さんとして育った萄子が、旅を繰り返すうちにお嬢さん特有の「甘さ」を少しずつ剥ぎ取られ、地獄の底へでも行くというような気迫が感じられる展開に引きこまれます。勝が家族も職も婚約者も捨てて逃亡せざるを得なかった理由が明かされたとき、タイトルの意味が痛いほどにわかります。

胸が締めつけられる思いになる小説でした。
生きていくこと、そこに価値があり、涙することもある。
大きな喜びも、小さな喜びも、大きな悲しみも、小さな悲しみも
年齢を重ねる事で、同じように喜べるようになり、同じように悲しむ事ができるようになる。物事の価値は他の人の評価だけで決まるのではない。歳月は、人に何かを教えてくれる。

hazuhaさんのレビュー

辛いことがあっても、生きていれば未来があると教えてくれる乃南さんの作品。主人公だけでなく、ほかの登場人物にも感情移入しながら読むことができます。上記5作を出発点に、乃南さんの作品を読み進めてみてください。