村山由佳さん5選!〜純愛小説から母娘の愛憎を描いた直木賞作品まで〜

こんにちは、ブクログ通信です。

『いのちのうた』で1991年に環境童話コンクール大賞を受賞した後、1993年には『天使の卵-エンジェルス・エッグ』で第6回小説すばる新人賞を受賞し一躍有名作家となった村山由佳さん。2004年には『星々の舟』で第129回直木三十五賞を受賞し、名実ともに大作家の一人となりました。2009年には著名文学賞をトリプル受賞し、その実力は文壇からも高く評価されています。

ブクログから村山さんの代表作・オススメ作を5作紹介いたします。多数の作品の中から、ブクログのみなさんから高い評価を受けている作品、人気のある作品、映像化されている作品を中心に集めました。恋愛小説の名手といわれる村山さんの作品を、ぜひチェックしてみてくださいね。

『村山由佳(むらやま ゆか)さんの経歴を見る』

村山由佳さんの作品一覧

1.『ダブル・ファンタジー』 有名文学賞をトリプル受賞!文壇から高評価を得た傑作小説

W/F ダブル・ファンタジー
村山由佳さん『W/F ダブル・ファンタジー
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あらすじ

奈津は35歳の売れっ子脚本家だ。家庭も仕事もあるけれど、心は満たされない。人の顔色ばかり伺っていた奈津だったが、ある日尊敬する男に誘われ家を飛び出した。強い性欲を抑えていた自分に気づき、女として生きる道を選ぶ奈津。身も心も尽くせる相手と出会いたい、体の欲求にも素直になりたい——。強い決意と覚悟の元、奈津は新たな人生の第一歩を踏み出すのだった。

オススメのポイント!

仕事も家庭も得て満たされているはずの奈津が、渇望に突き動かされていく様を激しく描き出した作品です。不倫や不特定多数との肉体関係など、性欲に忠実にあろうとする奈津の貪欲な生き方から目が離せなくなります。荒々しくも、どこまでも自分に正直に生きようとする奈津は見方を変えれば大変女性らしいのかもしれません。好き嫌いは分かれる傾向にありますが、大人の女性にはぜひ一度読んでほしい名作です。

何だか自分の心を読まれているような、そんな共感できる言葉が沢山ありすぎて、目が回るようでした。
旦那との関係の時も、志澤や岩井や大林との関係の時も、ナツが感じた気持ち、男達の行動、とてもよく分かります。
終わることのない男女間の欲望がとても人間味に満ちていて、自由を手に入れても孤独が尽きず、どれだけ欲すれば乾きが癒えるのか。
性について深く気づかずにいれば幸せなのかも知れない世界でもあります。
結局、「どこまでも自由であることは、こんなにもさびしいことだったのかー。」
きっと何年経っても、この一言に尽きます。

Kaniさんのレビュー

2.『おいしいコーヒーのいれ方(1)キスまでの距離』20年以上続く大人気シリーズ第1作

おいしいコーヒーのいれ方 (1) キスまでの距離 (集英社文庫)
村山由佳さん『おいしいコーヒーのいれ方 (1) キスまでの距離 (集英社文庫)
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あらすじ

高校3年生の勝利は、父の転勤のため、いとこ姉弟と同居することになった。久しぶりに会った5歳年上のかれんが美しく成長していたことに驚く勝利。しかも、かれんは勝利の通う高校の新任美術教師なのだという。一緒に暮らす中で、勝利はかれんの秘密を知ってしまう。やがて、一人の女性としてかれんを意識し始めた勝利だったが——。

オススメのポイント!

勝利のピュアな恋の行方が気になりサクサク読める一冊です。高校生男子の純粋で強い恋心と、年上で美しいかれんの秘めた哀しい想いにキュンキュンすること間違いなし!多くの人が一度は経験したような、甘酸っぱい恋の気持ちを思い出させてくれる作品です。1997年~2006年にかけてラジオドラマ化され、2001年にはコミカライズされました。2019年10月から再度マンガ化され、『少年ジャンプ+』(集英社)にて連載が始まっています。

これぞ純愛。
5歳年上でイトコで同じ家に住んでて…そんな相手に恋をした高校生が主人公で、男の子目線なんですけど共感できちゃったりして…恋する楽しさとか苦しさを改めて教えてくれます。

みけさんのレビュー

3.『天使の卵 エンジェルス・エッグ』 映画化もされた代表作!恋の醍醐味が詰まった名作

天使の卵 エンジェルス・エッグ (集英社文庫)
村山由佳さん『天使の卵 エンジェルス・エッグ (集英社文庫)
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あらすじ

美大志望の予備校生・一本槍歩太は電車で出会った女性・五堂春妃に一目ぼれしてしまう。父親が入院している病院で再会し、歩太は春妃が父親の主治医だと知る。大学生で同い年の斉藤夏姫という恋人がいながら、8歳年上の春妃への想いが募っていく歩太。やがて、自分の気持ちに正直になると決めた歩太が選んだ道は——。

オススメのポイント!

恋愛小説の名手として名高い村山由佳さんの筆力を存分に堪能できる作品です。どうしようもなく春妃に惹かれていく歩太の恋心がみずみずしく描かれています。人を愛する嬉しさ、恋の切なさ、年齢差や価値観の違いを埋める難しさを、情感豊かに描き出す純愛小説です。1994年にラジオドラマ化され、2006年に映画化されました。映画版では歩太を市原隼人さんが務め、春妃を小西真奈美さん、夏姫を沢尻エリカさんが演じています。

「こんなにもまっすぐで切ない恋の話があっただろうか」「いやぁ、無いんじゃないのかい?」なんて自問自答。とにかくストレートな恋の話なので、好みは分かれるところだと思いますが、これはイイですよ。

dolphinさんのレビュー

4.『星々の舟 Voyage Through Stars』 2004年直木賞受賞作!著者渾身の短編連作小説


星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫)
村山由佳さん『星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫)
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あらすじ

ここにあるのは、ある家族の物語——。父、母、2人の息子と2人の娘がいる水島家は、それぞれが秘めたる思いを抱えていた。農作業に没頭する長男・貢、自らの魔性について葛藤する長女・沙恵、禁断の恋をした次男・暁、不倫関係に思い悩む次女・美希、いじめに遭っている貢の娘・聡美、そして自身の戦争体験を想起する父・重之。誰にも言えない孤独を抱える6人の、心震える物語。

オススメのポイント!

不倫や近親相姦、戦争など重いテーマを扱っている作品です。水島家という架空の家族6人の、秘めたる孤独を繊細に描き出しています。家族とは、幸せとは、を深く考えさせる物語です。決して気楽に読み進められる物語ではありませんが、村山さんならではの世界観と美しい文章をじっくりと味わえます。暗い夜空を手探りで進む舟のような6人の生き様は、ときに醜くときに儚く、それでいてたくましい人間の生命力を凝縮しているかのようです。第129回直木賞を受賞した作品の魅力を、ぜひ一度味わってみてください。

報われない恋の話で構成された今作は、どの話も印象的だったが、沙恵の話が妙に頭に残っている。生々しい描写が苦手なのだが、ラストの沙恵が自分の気持ちを押し通そうと決めた場面が恐ろしく思うと同時に凄く良いな、と思った。
また、重之の話が最後にあったせいか、辛い想いを抱えてきたこの家族に少しだけ光が射し込んだ気がした。
幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない。そんな重之の言葉が心に強く印象残る。幸福の形は一つじゃない。人の数だけ、幸福の形があるんだな。

藍沢悟さんのレビュー

5.『放蕩記』 著者の自伝的小説。赤裸々に語られる母と娘の物語

放蕩記
村山由佳さん『放蕩記
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あらすじ

38歳の夏帆は女流作家だ。かつて結婚したが、離婚した。今は自由奔放に暮らしているが、心には常に抱えている暗い秘密がある。逃れようともがき、忘れようと苦しんだ想いは、母と娘の間にいまだ横たわっているのだ。家族の歴史、母との歪な関係——血のつながり、女の性について赤裸々に描いた、著者の自伝的小説。

オススメのポイント!

母と娘の愛憎を描いた自伝的小説です。村山由佳さん自身と母親をモデルにしたと思われる主人公と母の関係が痛々しいほどリアルに描かれています。母親を持つ人なら誰もが共感でき、特に女性にとっては怖いくらいに思い当たるシーンがいくつもあるはず。母親との関係に悩む人にぜひ読んでほしい一冊です。扱っているテーマが重い一方で、物語の語り口はけっして重苦しくないのも本書の魅力だといえます。親子関係に悩む人はもちろん、親との関係が良好な人にも心に響く物語なので、ぜひ手に取ってみてくださいね。

母と娘の確執という重たいテーマに真っ向から向かって書かれたお話。どんなに仲のいい親子でも多少なりとも共感できる部分が必ずあると思います。自分の母との関係を振り返ってしまいました。親子といえどもお互い一人の人間なんだと強く感じた作品でした。

himi0522さんのレビュー

村山さんは人間関係の機微を美しい文章で切り取った作品を数多く発表しています。ここでは著者の筆力が存分に堪能できる作品を集めましたので、気になる作品をぜひ手に取ってみてくださいね!