文芸賞の常連!メディア化も多数!人間ドラマの名手・角田光代さんのオススメ5選!

こんにちは、ブクログ通信です。

1990年に『幸福な遊戯』で海燕新人文学賞を受賞して以来、人の心の機微を巧みに描くことで知られ映像化作品も多数の人気作家である角田光代さん。1996年に『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、2005年には『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞を受賞するなど、名だたる文芸賞の常連でもある大作家の一人です。2019年には映画『愛がなんだ』が公開され、SNSや口コミで人気が拡大、ロングランヒットとなりました。

ブクログから角田さんの代表作・オススメ作を5作紹介いたします。多数の作品の中から、ブクログユーザーから高い評価を得ている作品、初めての人にも読みやすい作品、知名度の高い作品を中心に集めました。ぜひ参考にしてくださいね。

経歴:角田光代(かくた みつよ)

1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1990年、「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。受賞歴として、1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を皮切りに、2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で第22回伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で第25回柴田錬三郎賞、同年『かなたの子』で第40回泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で第2回河合隼雄物語賞をそれぞれ受賞している。
現在、小説現代長編新人賞、すばる文学賞、山本周五郎賞、川端康成文学賞、松本清張賞の選考委員を務める。
代表作に『キッドナップ・ツアー』、『対岸の彼女』、『八日目の蝉』、『紙の月』がある。メディア化作も数多い。
西原理恵子の自宅で生まれた猫、「トト」との日記ブログ、「トトほほ日記」が人気。

角田光代さんの作品一覧

1.『八日目の蝉』第2回中央公論文芸賞受賞作!母性とは何かを考えさせる傑作

本作は読売新聞夕刊にて2005年から2006年にかけて連載され、2007年に刊行されました。同年、第2回中央公論文芸賞を受賞しています。2010年にドラマ化され、第27回 ATP賞テレビグランプリ2010でグランプリを獲得。2011年に映画化されると初日3日間での興行収入は2億円を突破し、動員は19万6,130人を達成しました。母性について独自の視点から切り込んだ名作であり、角田さんの代表作の一つと言えます。

角田光代さん『八日目の蝉 (中公文庫)
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あらすじ

野々宮希和子は、ふとしたことから不倫相手の子供を誘拐し3年半もの逃亡劇を展開する。親子として過ごした日々は、1枚の写真をきっかけに希和子の逮捕で幕を閉じた。誘拐された娘・恵理菜は成長し、希和子と同様に妻子ある男との子供を妊娠してしまう。そこへ恵里菜と希和子の過去を知る女性が現れてー。

オススメのポイント!

著者自身がインタビューで「母性とは何か考えたかった」と述べている作品だけあって、「母と娘とは」「母性とは」を強く訴えかける作品です。血のつながりや心のつながりの複雑さ、時として呪いのようにも思える母性のひたむきさが、繊細に描かれています。心揺さぶる名著です。

ミステリのように読み進めていくけれど、途中から人物の感情の渦に巻き込まれて、ミステリじゃないことに気づく。
「逃げて逃げて逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか」
本当の親子ってなんだろう。
罪を犯しても、愛情を注げば本当の親子になれるわけじゃないけれど、それでも薫を想う京子の愛こそ、本当なんじゃないかと思う。
愛ってなにか。幸せってなにか。
じわじわと考えさせてくれる本だった。

hrkさんのレビュー

2.『対岸の彼女』現代を生きる2人の女性の友情と亀裂を描く!第132回直木賞受賞作

2003年から2004年にかけて『別冊文藝春秋』にて連載され、第132回直木三十五賞を受賞。2004年に単行本にて刊行、2007年に文庫化されました。現代を生きる多様な女性たちの生き様と友情を角田さんならではの視点で切り取った作品です。2006年にはWOWOWでドラマ化され、平成18年度芸術祭テレビ部門ドラマの部で優秀賞受賞、第32回放送文化基金賞番組部門テレビドラマ番組賞を受賞しています。

角田光代さん『対岸の彼女 (文春文庫)
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あらすじ

結婚する女、しない女。子供を持つ女、持たない女。それだけのことで、どうして女どうし、わかりあえなくなるんだろう。ベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めた専業主婦の小夜子。二人の出会いと友情は、些細なことから亀裂を生じていくが……。多様化した現代を生きる女性の姿を描く感動の傑作長篇。

オススメのポイント!

女性の生き方が多様化する現代において、多くの人が抱えているかもしれない「勝ち犬」「負け犬」といった価値観や社会的ヒエラルキーを浮き彫りにしており、ハッとさせられます。作中では大人になったからこそ直面する生きづらさが描かれ、葛藤する主人公に自分自身を重ねてしまう人も多いはず。いくつもの葛藤を経て自分なりの答えを出す主人公の生き方は、多くの女性に勇気をくれるでしょう。友情や人間関係に悩んでいる人には特にオススメです。

不覚にも涙がこぼれた。

大人になってからの友人こそ、本当の友人なんだろう。
しかし、大人になってからでは、本当の友人なんてなかなか出来ない。
仕事、金、名誉、打算…
子供の時には、考えられなかった障壁が次々と現れる。

家庭を持つ主婦と、シングルの女社長というキャラクター設定だが、これは男でも置き換えられる部分がある。
昔あれほど仲がよかった友人達。今はどこで何をしているのだろうか。そんなことを考えながら読んだ。

痛いほど切実な思いが伝わってくる物語なのだった。

けんさんのレビュー

3.『紙の月』実在の事件がモチーフ!普通の主婦によるサスペンスドラマ

2012年に刊行され第25回柴田錬三郎賞を受賞、各紙誌で大絶賛された金融サスペンス作品です。2014年にテレビドラマ化と映画化され、文庫本の累積売上は24.5万部を達成しました。社会的に大きな話題となった「女性による巨額横領事件」をモチーフにした作品であり、メディアからの注目も多く集めました。

角田光代さん『紙の月 (ハルキ文庫)
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あらすじ

ただ好きで、ただ会いたいだけだった。わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が1億円を横領した。正義感の強い彼女がなぜ?そしてー梨花が最後に見つけたものは?!
あまりにもスリリングで狂おしいまでに切実な、角田光代の傑作長篇小説。

オススメのポイント!

ごく普通の主婦である主人公が少しずつ壊れていく様子に、ぞっとしつつも先が気になり惹き込まれてしまいます。主人公に感情移入するのは難しいかもしれませんが、「人はこうして罪を犯す」という戒めにも似た怖さを感じさせる作品です。

お金によって狂わされていく人間の描写が生々しく、
小説ってこんなにすごいのか、と物語が進むにつれて圧倒されました。

面白いと思ったのは、使うお金が高額になればなるほど、
使う人間の思考も短絡的で幼児退行化する傾向がある様に感じられることでした。(買い物し過ぎて紙袋が多い→「車があったらいいね」→車買っちゃう、みたいな)

有り余るお金を手に入れ湯水の様に使うほど、知性や常識的判断、あるいは人との関係まで、自覚がなくても代償として失う羽目になり、必ずツケは回ってくる怖さを感じました。

threetailsさんのレビュー

4.『さがしもの』 「本好きあるある」が詰まった本にまつわる短編集

2008年刊行。全ての本好きに贈る「人生を変える本との出会い」をテーマにした短編集です。9つの物語が収録され、それぞれに異なる「人と本の出会い」が描かれています。全国学校図書館協議会篇・集団読書テキストの1冊に選ばれました。

角田光代さん『さがしもの (新潮文庫)
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あらすじ

「その本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」、病床のおばあちゃんに頼まれた一冊を求め奔走した少女の日を描く「さがしもの」。初めて売った古本と思わぬ再会を果たす「旅する本」。持ち主不明の詩集に挟まれた別れの言葉「手紙」など九つの本の物語。無限に広がる書物の宇宙で偶然出会ったことばの魔法はあなたの人生も動かし始める。

オススメのポイント!

人生を変える本との出会いは、多くの本好きにとって憧れのものですよね。本書では、そんな魅惑的な出会いが9種類描かれています。良くも悪くも人生を変える特別な1冊。もう出会っている人もまだという人にも、心にぐっと迫る物語がきっとあります。

本にまつわる短編集。
おばあさんに頼まれた本をずっと探し回る話とか、同じ本に共感した彼との話とか、“そうなんだよね、同じ本に共感できるって、素敵なことなんだよね”って、改めて思い出した感じ。
なんだか、また人生観を変えるくらい素敵な本に出会いたくなりました。

lisainuさんのレビュー

5.『坂の途中の家』 幼児虐待事件をテーマにした、心震わす心理サスペンス

2016年に単行本で刊行され、2018年に文庫化。難しいテーマを巧みに扱う一方で優れた筆致が光り、角田さんの新たな代表作と評され大きな話題となりました。幼児虐待事件と裁判員制度をベースにしており、社会派エンターテインメント作としても高い評価を得ています。2019年にWOWOWにてテレビドラマ化されました。

角田光代さん『坂の途中の家
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あらすじ

最愛の娘を殺した母親は、私かもしれない。虐待事件の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇に自らを重ねていく。社会を震撼させた虐待事件と〈家族〉であることの光と闇に迫る心理サスペンス。

オススメのポイント!

主人公の感情の揺れ動きが細かく丁寧に描かれ、読み進めるうちに感情移入してしまうこと必至です。扱うテーマが幼児虐待事件ということで重くなりがちですが、それ以上に文章表現の持つ力や凄みを感じられます。

前半は、私小説のようなリアルさが続いて、読んでいて苦しかった。まるで自分のことのようで、ここまで苦しい小説はなかった。
女性の自己暗示や、その周りにあるモラルハラスメントを、ここまで言葉で表現できるのはすごい。
334ページあたりからの描写は本当に文章に力があって、そこから一気に読んだ。
すっきりする終わり方ではないし、前半は本当にきつかったけど、無駄な描写はなかったなと思う。

saekouさんのレビュー

角田さんの著書には人の心を揺さぶる大作が多数あります。まだ読んだことがない人は明るい話かどうか、短編か長編か、といった観点から選んでみてはいかがでしょうか。ぜひ上記5作をきっかけにして、角田さんの作品を読み進めてみてくださいね。