加古里子(かこさとし)さんおすすめ・代表作7選 あらゆる親子のための本

加古里子さんおすすめ・受賞作・代表作5選

こんにちは、ブクログ通信です。

2018年5月2日に惜しくも逝去された、加古里子(かこさとし)さん。各メディアが訃報を伝え、絵本に親しんでいた多くの人から惜しむ声が上がりました。一方で、子ども向けの絵本だけでなく、科学絵本・美術絵本などバラエティ豊かな活動すべてをご存知のかたは少ないかもしれません。そして、没後にも作品が刊行され続け、2018年11月、最後の作品『みずとは なんじゃ?』が発売されています。

ブクログから、加古さんのさまざまなジャンルの作品から、代表作・オススメ作を7作紹介いたします。加古さんの本をあらためて手に取ろうと思うかたは、ぜひ参考になさってくださいね。

(2019年5月22日最終更新)

経歴:加古里子(かこ さとし、1926年3月31日 – 2018年5月2日)

福井県越前市(旧・武生市)生まれ。8歳から東京都板橋区で育つ。成蹊高等学校(旧制)を経て東京大学工学部応用化学科卒業後、昭和電工の研究所に勤める。工学博士、技術士の資格を取得。勤務のかたわら困難を抱えた人々に寄り添うセツルメント活動、児童向け人形劇、紙芝居などの活動に従事。自作の紙芝居が福音館書店の松居直の目に留まり、59年に絵本『だむのおじさんたち』でデビュー。

1973年に会社を退職後、ニュースキャスター、大学講師、海外での教育実践活動に励みながら、物語絵本、知識絵本、童話、紙芝居など非常に多くの作品を記した。特に自然科学の専門知識を活かした「科学絵本」の開拓者・先駆者となる。2008年「絵本作家、児童文学者としてのユニークな活動と、子供の遊びについての資料集成『伝承遊び考』全四巻の完成」により菊池寛賞、2009年同書で日本児童文学学会特別賞をそれぞれ受賞。

50代で緑内障を患って以来左目はほとんど見えず、近年は持病の腰痛もあって車椅子生活が続いたが、創作意欲は全く衰えず、1月には「だるまちゃん」シリーズの新作を刊行。亡くなる前日まで、届いたファンレターの読み上げを聞いていたという。

加古里子さんの作品一覧

1.『からすのパンやさん』 美味しそうなパンが沢山出てくる児童絵本

1973年に偕成社から発売されており、発行部数200万部を越えるロングセラー、絵本の定番とまで言われています。からすのパン屋の家での出来事を描く作品です。

加古里子さん『からすのパンやさん (かこさとしおはなしのほん (7))
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あらすじ

からすの町「いずみがもり」のパンやさんで、4羽の子からす達が生まれた。「オモチちゃん」「レモンちゃん」「リンゴちゃん」「チョコちゃん」。父からす、母からすは子育てで忙しくどんどん貧乏に。でも、家族みんなで焼いたパンが評判になって、からすの町は大騒ぎ!

オススメのポイント!

思わずパンを食べたくなってしまう物語。からすたちの愛らしさもすごく魅力的。絵本読み聞かせやギフトの定番としても名前が挙がる作品です。もともとは、加古さんが先輩の結婚祝いとしてまとめた手作り絵本が原点で、それを元に子どもの意見を参考に仕上げられたそうです。プレゼントとして選ばれる児童書の定番のひとつです。

2013年には、登場したからす達の逸話を描いた続編が40年ぶりに発売されて話題になりました。『からすのおかしやさん』『からすのやおやさん』『からすのてんぷらやさん』『からすのそばやさん』といった一連のシリーズが誕生しています。

これはもう、自分がこどもの頃大好きで大好きで、何度でも図書館で借りて読んでいた。
知っているので、最初から、たのしいおいしいパンがどっさり載っているページが楽しみでならない。
今読むと言葉のリズムも良くて、そういうところもきっとこども心をくすぐったんだろうな。
四羽の赤ちゃんが産まれて、枕元のかざぐるまの羽がそれぞれの赤ちゃんの色になっているのがこどもの時も好きだったのを思い出す。

ふみさんのレビュー

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2.『だるまちゃんとてんぐちゃん』―民族性に富んだ名作絵本にして、児童文学の金字塔

1967年に福音館書店から発売されました。だるまちゃんとてんぐちゃんの友情、そしてだるまちゃんのパパの家族愛など、愉快で温かみのある作品です。シリーズ化された「だるまちゃん」シリーズは世代を越えて読まれ続け、累計約389万部という驚異的なロングセラーになりました。

加古里子さん『だるまちゃんとてんぐちゃん
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あらすじ

だるまちゃんは、仲良しのてんぐちゃんの持ち物が欲しくて、同じ格好がしたくてたまらない。お父さんにおねだりしながら自分で手を加え、てんぐちゃんの持ち物と同じようなものを手に入れていくけれど、てんぐちゃんの長い鼻が欲しくなっちゃった―!

オススメのポイント!

だるまちゃんとてんぐちゃんの愛らしいキャラクターに、子どもも大人も思わず読み進めてしまいます(ちなみに2人のキャラクターは、加古さんが達磨と天狗の幼児形を日本の子供の代表として描いたものだそう)。この作品も読み聞かせや贈り物の定番品で、児童書が置いてある本屋さんの多くで、今なお取り扱われ、売れ続けています。

「だるまちゃん」は2018年、加古さんの最晩年まで描き続けられていた大人気シリーズ。2018年1月、『だるまちゃんとかまどんちゃん』『だるまちゃんとはやたちゃん』『だるまちゃんとキジムナちゃん』が発売されました。

私が大好きだった絵本。娘にはまだ早いけど懐かしくて借りてしまいました。改めて今読むとわりとだるまちゃんがワガママ…笑 真似されても「いいね」と受け入れるてんぐちゃんが大人です☆工夫次第で、身近なものが大好きなものになるんだなぁ。あれだけ頑張って揃えた方はたまったもんじゃないけれど。

りぶれさんのレビュー

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3.『宇宙』―専門知識を活かした子供向け科学絵本シリーズ

1960年代から加古さんは科学絵本を手がけてきました。その中でも「福音館の科学」シリーズ代表作の一つで、特に評価の高い作品が『宇宙』となります。

加古里子さん『宇宙 (福音館の科学シリーズ)
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あらすじ

宇宙はどれほど広く、その果てはどうなっているのか?巨大な宇宙の広がりをテーマに、ノミのジャンプからはじまり、「走る」「飛ぶ」という事象を物理学的にきわめてやさしく紹介し、望遠鏡やロケットの歴史、星の進化とその一生、宇宙有限論までを紹介してゆく一冊。

オススメのポイント!

まさに身の回りの話から次第にスケールが広がっていき、宇宙の仕組みにまで至る筋立ての見事さが、今なお子どもたちに読まれ続けている理由かもしれません。他にも『地球』『海』など多くの作品が刊行されており、小学校入学時のギフトによく使われるシリーズです。

後半ページをめくるごとに視点が地球から遠く離れていく。初めて読んだ子どものころを思い出す。
なかなか太陽系外の惑星に出会えない場面では心細く思った。終盤の銀河がたくさん見えるところでは、とてつもなく遠くまできてしまったことに唖然とし、地球を恋しく思った。宇宙の広がりの表現そのものに、物語性を感じていたのだと思う。

kivuneさんのレビュー

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4.『はははのはなし』 誰しも必要な歯の知識を、子ども向けに易しく説く名著

歯についての大事な話をユーモラスに教える一冊。1972年に刊行された作品で、「かがくのとも絵本」シリーズで最もよく知られているものの一つです。

加古里子さん『はははのはなし (かがくのとも絵本)
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あらすじ

歯がなければごちそうが食べられません。栄養を取るために歯は大事です。でもどうして虫歯になるのか?虫歯にならないためにはどうしたらいいか?歯のはたらき、虫歯、歯磨きといった歯にまつわる大事な話をやさしく、子どもと同じ目線で語りかける作品です。

オススメのポイント!

30~40代のかたは、自宅や幼稚園や保育園、そして歯医者や保健室などでこの本を目にしたことが多いのではないでしょうか?それくらい広く読まれた一冊。大人になってから読むと、子どもが読み進めてしまう思わぬ仕掛け、ユーモラスながら虫歯についての怖い絵など、至るところに加古さんの工夫を見出すことになるでしょう。

6月4日『歯の衛生週間』に合わせて、子ども達に虫歯にならないためには・・・という事がとてもわかりやすく紹介されています。特に健康な歯→虫歯にどんどん変化する経過・・・(絵での紹介がリアルです!)
虫歯になると、何が困るか・どんなに大変かetc・・・。4・5歳児の子ども達にもリアルに伝わり、注意喚起には効き目抜群の絵本でした。

hikari-hoさんのレビュー

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5.『未来のだるまちゃんへ』加古さんの来歴と、子どもへの願い、信念を知る一冊

2014年に単行本が発売され、2016年に文庫化されています。自らの生い立ちや取り組んできた活動から、絵本への思い、そして生きることの意味まで、多くのテーマについて語られています。

かこさとしさん『未来のだるまちゃんへ (文春文庫)
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あらすじ

かこさとしさんが自身の人生について初めて語った自叙伝。やわらかい口語によって、含蓄ある話が語られます。25年続けたサラリーマンとの二足のわらじ生活、自身の子育て、震災と原発事故を経て思うこと。絵本に込めた願い、尊敬してやまない子どもたち。そして「生きる」とはどういうことか……。文庫版あとがきでは、『ぐりとぐら』の中川李枝子さんがかこさんとの逸話について綴っています。

オススメのポイント!

加古さんの絵本に親しんできた方はたくさんいると思いますが、こちらは加古さん本人の肉声が聞ける本です。加古さんの絵本を読んできた全ての大人たちにオススメ。多くの子どもたちを魅了してきた絵本の秘密、そして児童作家としての信念、何より加古さん本人の魅力を改めて感じることのできる貴重な自叙伝です。

二歳の子どもに、毎晩のように「だるまちゃんとてんぐちゃん」を読み聞かせしている身として、大変興味深く読みました。おおきなだるまどんは、僕でした。「・・・子どもたちは生きているし、これからを生きてゆくのだから、大人は密かに声援を送っていればいいんだ・・・」(p.255)との言葉を深く僕の胸に刻みたい。かこさとしさんの絵本は、単なる子ども向け絵本ではない。僕自身のことを内省しながら、人生が始まったばかりの我が子との付き合い方をはっきりと認識させてくれる、かこさとしさんの呼び掛けです。

葉っぱの虫さんのレビュー

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6.『うつくしい絵』 児童作家の手による美術入門

1974年に刊行された本です。加古さんの手による啓蒙的かつ入門的な絵本は、科学だけにとどまりません。美術のジャンルでも高い評価を得ている一冊です。

かこさとしさん『うつくしい絵 (かこさとし)
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あらすじ

様々な「うつくしい絵」がある。その絵にはすべて、作者がいる。ダ・ヴィンチ、ゴッホ、北斎、ピカソらの代表作を紹介しながら、それぞれの作者が何を思いながら描いていたか、そして世界中の人たちが何故絵を美しいと感じるのかを教え、「絵の見方、描く心」を子どもたちに伝える一冊。

オススメのポイント!

「美しい」ということを子どもに言葉で伝えるのはとても難しいもの。加古さんは易しい言葉で、語りかけるように「美しさ」を伝えていきます。情操教育として用いることができるだけでなく、何より、読んでいて楽しい一冊です。この本は加古さんがどうしても描きたいと思って描いた絵本なのだそう。

表紙にダ・ヴィンチの「モナリザ」、裏表紙はゴッホの「ひまわり」。
この2作品はもちろん、レーピン、北斎、ピカソの有名な作品が丁寧な解説とともに載っている。
その解説がしみじみと素敵で、かこさとしさんのこの本にかけた思いが伝わってくる。

「絵描きさんは、みな生まれた国が違って、それぞれ変わったくせを持ったひとでした。
しかしみな、美しい心を持ったひとたちでした。
その美しい心を持ったひとだったから、みんが感心する美しい絵を描くことが出来たのです。」

nejidonさんのレビュー

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7.『伝承遊び考』 菊池寛賞受賞の理由となった不朽の作品

2006年から2008年にかけて、全4巻で刊行されました。加古さんは児童書を記すかたわらで児童文化の研究を続けており、約50年にわたって子どもの遊びや民話などを調査・採集し、伝統的な子どもの遊びの事例をまとめあげました。

加古里子さん『伝承遊び考〈1〉絵かき遊び考
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あらすじ

著者が50年以上にわたって収集した伝承遊びを、豊富な図版資料や遊びにともなう唱え言葉・歌とともに紹介。各地の遊びの背後には無名普通の子の判断選択があり、遊びは創出、改変、衰微、淘汰されながら伝承されてきた。各地、各時代の子どもとその遊びを通じ、子どもとはどんな存在であるかを考える。全4巻で、絵かき遊び考、石けり遊び考、鬼遊び考、じゃんけん遊び考についてそれぞれ論じる。

オススメのポイント!

全国の伝承遊びも、都市化や少子化、伝承者の不在など様々な理由によって、消えてしまう可能性があります。そうした消えゆく文化を加古さんは書籍としてまとめあげて、資料記録として残すことができました。「遊びの背後で子どもたちがこんなにも気高く、意欲を持って生きようとしていることを知っていただきたい」と語る、加古さんの代表作かつ、不朽の業績となる作品です。高価かつ専門的な内容を含みますが、ぜひ機会があれば書店や図書館などで手にとってみてはいかがでしょうか。


その他にも、とても多くの作品を加古里子さんは描いています。全ての親、全ての子どものことを考えながら描かれた加古さんの作品が、様々なかたちで、多くの子供たち、大人たちに読まれることを願ってやみません。

どうか最初の一冊目が良い出会いでありますように!

参考リンク

かこさとしさん公式webサイト
越前市「かこさとし ふるさと絵本館「石石」(らく)」