池永陽さんオススメ5選!人間の葛藤や欲望を巧みに描き出す作品群は必読!

こんにちは、ブクログ通信です。

『走るジイサン』で1998年に第11回小説すばる新人賞受賞し作家デビューした池永陽さん。少し影のある人々の何気ない日常をみずみずしく描き出す作風に定評があり、2006年には『雲を斬る』で中山義秀文学賞を受賞しました。「珈琲屋の人々シリーズ」や「占い屋重四郎シリーズ」など人気作を多数発表しているほか、時代小説も人気を集めています。

ブクログから池永さんの代表作・オススメ作を5作紹介いたします。多数の作品の中から、ブクログのみなさんから高評価を得ている作品、読みやすい作品、映像化された作品を中心に集めました。ぜひ参考にしてくださいね。

『池永陽(いけなが よう)さんの経歴を見る』

池永陽さんの作品一覧

1.『コンビニ・ララバイ』 とある小さなコンビニに集うクセ者たちの物語

コンビニ・ララバイ (集英社文庫)
池永陽さん『コンビニ・ララバイ (集英社文庫)
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あらすじ

とある小さな町にある小さなコンビニ・ミユキマート。オーナーの幹郎は、事故で亡くなった妻子を幸せにできなかったことを悔いている。幹郎の人柄に惹かれ、ミユキマートには悩みや悲しみを抱えた人々が集まってくるのだった。堅気の女性に恋するヤクザ、しゃべれなくなった女優の卵、恋人のために売春する女子高生……。それぞれの人生のつまづきに、幹郎は優しく接していくのだったが――。

オススメのポイント!

池永さんの持ち味である、人と人とのつながりを多角的に捉えた作品です。優しさや寛容さだけでなく、ときに少し厳しくほろ苦さもある物語が心にじわりと沁み込んできます。身近なコンビニを舞台に、ひっそりと繰り広げられる人間模様に惹き込まれるはず。甘いだけではない人間ドラマを読みたい人におすすめです。

息子と妻を失ったおじさんが店長を務めるコンビニを舞台に繰り広げられるヒューマンドラマの数々。
腑抜けとなったおじさんが徐々に魂を取り戻していくストーリーでもあるように思う。
そんな、ちょっぴりホッとする、お話集。

青きうりさんのレビュー

2.『珈琲屋の人々』初恋と再恋に揺れる男女を描く喫茶店物語集

珈琲屋の人々 (双葉文庫)
池永陽さん『珈琲屋の人々 (双葉文庫)
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あらすじ

小さな商店街で喫茶店「珈琲屋」を営む行介には、人を殺めた過去があった。かつて行介の恋人だった冬子は別の男と結婚したものの、行介が出所すると離婚していた。冬子は行介の店で珈琲を飲む。他の客たちも、行介の過去を知った上で珈琲を飲みにやって来る。やりきれない思いも、忘れられない過去も、一杯の珈琲と共に飲み込んで――。香り高い珈琲と共に紡がれる7編の物語を収録。

オススメのポイント!

行介の人柄と「珈琲屋」の雰囲気がとても魅力的です。お客の話をじっくりと聞いてくれるマスター、香り豊かな熱い珈琲、居心地の良い店内。読後はきっと、おいしい珈琲を飲みたくなること間違いなしの名作です。簡単にはいかない人間関係や、人と人との想いのやり取りを情感豊かに描き出しています。2014年にドラマ化され、高橋克典さんが行介を好演し人気を集めました。

ドラマを持っていない人ってこの世の中にはいないんだと思った。
みんな、周りには気付かれなくても傷を負ったり、悩みを抱えながら生きているんだと考えさせられた。

kanawag0613さんのレビュー

3.『下町やぶさか診療所』 老医師と女子高生のバディが贈る癒しの物語

下町やぶさか診療所 (集英社文庫)
池永陽さん『下町やぶさか診療所 (集英社文庫)
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あらすじ

東京・浅草にある診療所には、近所から「大先生」と慕われる医師・真野麟太郎がいる。ある日、リストカットをした女子高生・麻世が治療に訪れた。麟太郎は麻世を引き取り、一緒に暮らすことにする。そんな2人のもとに、さまざまな事情や症状を抱えた患者たちがやってきて――。

オススメのポイント!

診療所が舞台の話とあって、麻世をはじめいろいろな患者さんの姿が描かれています。医師と診療所ものというと泣ける話、感動的な話をイメージするかもしれません。しかし、本書は感動やいい話とは一味違う、リアルさが苦みを効かせた物語なのが特徴です。治療とは何か、癒しとはどういうことかを考えさせる奥深い物語となっています。

深刻な状況が発覚した時の主人公の医師の心の揺れや決断は、丁寧に描かれていても、終着地を迎えた時の心情はほとんど描かれていない。どんなに人事を尽くしても、どうすることもできない、その人事でさえも、迷いや苦しみの中、ということがひしひしと伝わってくる。
それでも死別した妻の浴衣を、決して平坦な道を歩いているわけではない女の子二人に着せてあげようとするシーンは、心にしみる。

nyan0620さんのレビュー

4.『少年時代』 少年から大人への境目に揺れる、淡い日々を描く名作


少年時代 (双葉文庫)
池永陽さん『少年時代 (双葉文庫)
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あらすじ

清流・吉田川が流れる町、郡上八幡。「川にかかる新橋から飛び込めたら一人前の男」という古い習慣があるが、中学生の良平はいまだ飛び込むことができずにいた。一人前の男になるため、さまざまな冒険に挑む良平。四季の移ろいと優しい人々に囲まれ、良平は少しずつ成長していく――。

オススメのポイント!

少年から大人へ、さまざまな壁に向き合いながら成長していく良平の日々を、時に穏やかに時に切なく描いた珠玉の名作です。四季折々の美しい自然描写も見どころとなっています。2009年には『東海テレビ開局50周年記念』番組としてテレビドラマ化されました。主演は小林廉さん、他キャストには佐藤江梨子さん、坂本昌行さんらが名を連ねています。

さえざえと澄み渡った作品だと思った。
少年期独特のヒリヒリするような緊張感が全体を包んでいた。

sorairokujiraさんのレビュー

5.『走るジイサン』 老後の生き方を問う、第11回小説すばる新人賞受賞作品

走るジイサン (集英社文庫)
池永陽さん『走るジイサン (集英社文庫)
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あらすじ

作次は平凡な老後を送っている。近所の仲間と茶飲み話をして、毎日をのんびり暮らすのだ。しかし、ある日同居している嫁に淡い恋心を抱いてしまう。すると、猿が現れた。頭頂部に、猿だ。話しかければ返事をし、からかえば怒る猿だ。そのときから、奇妙な同居生活が始まったのだった――。「老い」を斬新かつユーモアある切り口でとらえた、第11回小説すばる新人賞受賞作品。

オススメのポイント!

主人公の作次の姿を、ユーモアたっぷりに描いていた作品です。かといって、手放しで笑えるばかりではないのが池永作品ならではの魅力といえるでしょう。老いのやるせなさ、孤独、哀愁なども丁寧に描かれており、老後の生き方について考えさせられる秀作です。作次と同年代の人はもちろん、若い人でも作次に共感できる部分が多々あると思います。読後は「高齢者」や「老後」といったものへのイメージが良い意味で変わるはず。第11回小説すばる新人賞受賞作品です。

主人公は息子と二人暮しの老人。息子が結婚して嫁さんと同居することになるのです。主人公は、突然家庭に入り込んできたこの若い女性が常に気になって仕方ない。そして、一方で自分が片隅に追いやられたような気もしてる。暇つぶしに行く喫茶店で会う友人は熟年離婚の危機にあったり、仲の良い夫婦ながら妙に訳有りそうだったり。「コンビニ・ララバイ」と同じように、ちっぽけな日常の中で、小さな人間が、やるせないながらもどこか一生懸命に生きている。そんな姿を好感を持って描き出している作品です。

todo23さんのレビュー

池永さんの作品は、何気ない感情や切り捨てられない欲望を丁寧にすくい取った描写が光ります。決して甘くはない物語が多いのですが、だからこそ心に響くはず。ぜひ手に取ってみてくださいね。