林真理子さん5選!「生き方を曲げない女性」の強さに魅了される作品選

こんにちは、ブクログ通信です。

今や女流作家の重鎮の一人である林真理子さんは、1982年に出版したエッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』でデビューしました。同作は処女作にしてベストセラーとなり、一躍脚光を浴びます。1986年には『最終便に間に合えば』『京都まで』で直木賞を受賞し、小説家としての地位も確立しました。1995年に『白蓮れんれん』で第8回柴田錬三郎賞、1998年に『みんなの秘密』で第32回吉川英治文学賞を獲得するなど、数多くの文学賞を受賞し、女流作家としての地位を築きます。その功績が認められ、林さんは2018年には紫綬褒章も受賞しています。

ブクログから林さんの代表作やオススメ作を5作紹介いたします。「ねたみ・そねみ・嫉妬を開放した」とも評される林さんの作品の中から、高い評価を受けている作品や読みやすい作品、メディア化された作品を中心に集めました。ぜひ参考にしてくださいね。

『林真理子(はやし まりこ)さんの経歴を見る』

林真理子さんの作品一覧

1.『白蓮れんれん』 美貌の歌人・柳原白蓮の激動の人生を描いた著者代表作!

白蓮れんれん (集英社文庫)
林真理子さん『白蓮れんれん (集英社文庫)
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あらすじ

舞台は大正時代。若くして筑紫の炭鉱王に嫁いだ柳原白蓮は、美貌の歌人として名を馳せるようになる。しかし、豊かではあるが自由のきかない結婚生活の中で、白蓮の心はどこか満たされないのだった。あるとき、7歳下のジャーナリスト・宮崎龍介と出会った白蓮。華族と平民という階級の差がありながらも、2人は恋に落ちる。白蓮はこの恋に命を懸け、駆け落ちを決意するのだった。

オススメのポイント!

実在の「白蓮事件」をモチーフに、林さんならではの視点から柳原白蓮の人生を描いた恋愛小説です。白蓮と恋人がやり取りした恋文を引用した部分もあり、恋愛の描写の巧みさとリアルさは、さすが林さんと思わせてくれます。柳原白蓮という女性の生き様、命を懸けた恋の熱情が心に迫り、読後には深い余韻を感じられるはずです。さまざまな制約のある時代を力強く生きた白蓮の魅力を、ぜひ本作で味わってみてください。本作は第8回柴田錬三郎賞を受賞しています。

朝ドラでは主人公の花子よりも気になっていた白蓮さん。
この作品では福岡の炭鉱王に嫁いだところから離婚して新たな家庭を築くところまでが描かれている。
時代と身分に翻弄され、本当の意味で人を愛することを知らず、我慢とあきらめの毎日、苦悩に満ちた前半部分から、心から愛せる人と出会い逃避行するという大胆な行動に出るまでの、女としての心の移り変わりが見事に表現されている。
そして実際に燁子が記した和歌や手紙が要所に挿し込まれているが、これがとても美しい。単なる恋愛小説で終わらず、明治大正の時代背景や文化を感じ取ることもでき、日本庭園の眺められる和室で温かい日本茶を啜りたくなった。

たななこさんのレビュー

2.『不機嫌な果実』不倫恋愛を描き、社会現象を巻き起こした超話題作

不機嫌な果実 (文春文庫)
林真理子さん『不機嫌な果実 (文春文庫)
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あらすじ

水越麻也子には結婚6年目の夫がいるが、夫婦の関係は冷え切っている。子供はおらず、姑とも上手くいっていない麻也子は、夫への不満をため込んでいくのだった。そんな中、麻也子はかつての恋人・野村と再会し、逢瀬を重ねるようになる。ある夜、年下の音楽評論家・通彦と出会った麻也子。2人は激しい恋に落ち、すぐに深い仲になるのだった。やがて、麻也子は大きな決断を迫られて——。

オススメのポイント!

結婚とは、恋愛とは、を大人の視点で問いかける、衝撃的な恋愛小説です。不満やストレスを溜めこんだ麻也子が不倫に走る様が、林さんならではの濃厚かつ臨場感あふれる文章で綴られています。不倫恋愛がテーマのドロドロとした物語ではありますが、軽妙な筆致でサクサク読めるのも魅力です。また、本作は1997年にテレビドラマ化、映画化を果たし、一大ブームを巻き起こしました。2016年にもドラマ化、翌2017年にはスペシャル版放映も果たしています。

ずっと積読になっていたけど読み始めたら面白くて一気に。
ポケベルとか、描写とかバブリーな時代を感じるけど、不倫っていつの時代もテーマなのか。いやむしろ今こそ話題に上ってるのでは。
とにかく面白く、嫌な読後感が残る。それが心地いい

lilysmzさんのレビュー

3.『本を読む女』 著者の母をモデルに、大正から昭和を生きた女性の生き様を描いた名作

本を読む女 (集英社文庫)
林真理子さん『本を読む女 (集英社文庫)
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あらすじ

山梨の裕福な菓子屋の末っ子として生まれた少女・万亀。本を読むことが好きな万亀は、東京の学校で学び教師になった。「ずっと本を読んでいたい」「結婚などせず、自立したい」と願う万亀だったが、家族の期待や周囲の目はそれを許してくれない——。時代に翻弄され、戦争に巻き込まれ、大正から昭和にかけて激動の時代を生き抜いた万亀の人生を綴った物語。

オススメのポイント!

この作品は、林さんのお母さんをモデルにした小説です。実話に即した物語ということで、大きな事件やドラマチックな展開は起きません。しかし、だからこそ一つの時代を生き抜いた平凡な女性の生き方が、じっくりと心に迫る作品となっています。「本が好き」「本だけ読んでいたい」という万亀の気持ちは、ブクログのみなさんなら誰しも共感できるものではないでしょうか。女性が一人で生きることが、現代よりずっと難しかった大正から昭和にかけての時代を、ひたむきに生きた万亀の人生にぜひ触れてみてください。

大正〜昭和という激動の時代を生き抜いた文学少女のお話。
当時の世間体を気にする様や戦争は、生きるにはすごく窮屈で、抗うことができない辛さがひしひしと伝わってきます。
それでも主人公の万亀が時代に翻弄されながらも、大好きな本とともに懸命に生きる姿がかっこいい。

あやみさんのレビュー

4.『コスメティック』 暴露本並みのリアリティ!美容業界の実態を暴く話題作


コスメティック(小学館文庫)
林真理子さん『コスメティック(小学館文庫)
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あらすじ

広告代理店に勤めている沙美は、仕事のやりがいを求めて転職を決意する。新たな職場は、化粧品会社のPR担当だ。一見華やかな美容業界は浮き沈みが激しく、嫉妬や裏切り、足の引っ張り合いが当然の世界でもある。「仕事でも恋でも100パーセント幸福になってみせる」——。キャリア女性を取り巻くさまざまな壁、しがらみを乗り越えて、美容業界でのし上がろうとする沙美の闘いが始まる。

オススメのポイント!

発刊当時、「業界の暴露本では?」と大きな話題となった一冊です。多くの女性が日々使っている化粧品の裏側に、こんな世界が広がっているのかと驚かされること必至!読後には、化粧品や美容業界を見る目が変わってしまうかもしれません。また、キャリア女性として妥協せず生きようとする沙美のたくましさも必見です。仕事と恋の間で揺れ動く沙美の心情が丁寧に描かれ、働く女性の共感を呼びます。本作は、2003年にWOWOWにてドラマ化されています。

これぞ林真理子、とでもいいたくなるような小説。化粧品メーカーのPR担当という職に就いた沙美は、がむしゃらに働き次々と成功を収めていく。30女は仕事も恋もすべて手に入れられるのか……。
知られざる化粧品業界の実態を知ることができるのはもちろん、そこで繰り広げられる女同士の攻防や男との駆け引きにゾクゾクさせられる。女が仕事において充実感を得るにはここまでしなければならないのか、と臆する一方、これくらいのことをやってもいいのだ、と奮起されられたりもする。

mi-keyさんのレビュー

5.『下流の宴』 人間の価値はどこにあるか、を問うシニカルな社会派作品

下流の宴
林真理子さん『下流の宴
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あらすじ

それなりの教育を受け、それなりに幸福に暮らしている主婦の由美子。目下の悩みは、20歳になる息子が中卒のフリーターだということだ。そんな息子が、突然彼女と結婚すると言い出した。息子の彼女は地方出身で、高卒のフリーターだという。家族が「下流」なることに耐えられない由美子は、息子を取り戻すためにある決意をして——。

オススメのポイント!

格差意識や親子の問題を皮肉たっぷりに切り取った作品です。林さんは、「上流」「下流」で人を判断する主人公の由美子の価値観のような人物や、凝り固まった価値観から抜け出せない人間を描くのがとてもうまい作家さんです。本作では、そんな林さんの筆力が存分に発揮され、どこにでもいそうなある家族の姿が、圧倒的なリアリティと滑稽味をもって描かれています。20011年に>テレビドラマ化された際は、主演を黒木瞳さん、フリーター息子を窪田正孝さんが勤め話題を集めました。

妙に生々しいリアル感。さすが林真理子さん!人生にはどんな機会があって、どんでん返しが起こるかわからない。そのゾクゾク感がこの本にはあります。そして、ラストはこわ~い未来を思わせる終わり方。久しぶりに本を楽しみました。

momoinoueさんのレビュー

林さんの作品では、自分の生き方を貫く女性が数多く描かれています。仕事や恋愛で悩んだとき、自分の生き方に迷ったとき、ぜひ林さんの作品を手に取ってみてはいかがでしょうか?