第159回直木賞作家、島本理生さんの作品5選!

第159回直木賞受賞者、島本理生さんおすすめ5選

こんにちは、ブクログ通信です。

2018年7月18日、島本理生さんが『ファーストラヴ』で第159回直木三十五賞(直木賞)を受賞しました!芥川賞に4度ノミネートされ、直木賞は今回で2度目のノミネート。デビュー18年目で悲願を達成しました。おめでとうございます!

デビューからコンスタントに実力作を刊行し続けている島本さんですが、まだその作品にふれたことのない方もいるのではないでしょうか。この機会に、ブクログから島本さんの代表作・オススメ作を5作紹介いたします。島本さんの作品のなかから、近づきやすく読みやすいもの、知名度のあるものを集めているので、ぜひ参考にしてくださいね。

経歴:島本理生(しまもと・りお)さん

1983年東京都板橋区生まれ。都立新宿山吹高等学校に在学中の2001年に「シルエット」で、第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、デビュー。06年立教大学文学部日本文学科中退。小学生のころから小説を書き始め、1998年15歳で「ヨル」が『鳩よ!』掌編小説コンクール第2期10月号に当選、年間MVPを受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第128回芥川賞候補、第25回野間文芸新人賞受賞(同賞史上最年少受賞)。2004年『生まれる森』が第130回芥川賞候補。2005年『ナラタージュ』が第18回山本周五郎賞候補。同作品は2005年『この恋愛小説がすごい! 2006年版』第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位本屋大賞で第6位。2006年『大きな熊が来る前に、おやすみ。』が第135回芥川賞候補。2007年『Birthday』第33回川端康成文学賞候補。2011年『アンダスタンド・メイビー』第145回直木賞候補。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞受賞、『夏の裁断』で第153回芥川賞候補。『ファーストラヴ』で2回目の直木賞ノミネート、受賞に至る。

島本理生さんの作品一覧

1.『ファーストラヴ』 旬の直木賞受賞作!高い評価を受けたミステリー作

2018年5月刊行の作品です。書店員・作家など有識者からきわめて高い評価を受けており、本の帯で坂口健太郎さんが「涙を流さずに泣くことの意味を、僕はこれからも考えていくと思う」と推薦文を寄せたことでも注目を集めました。

島本理生さん『ファーストラヴ
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あらすじ

夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは? 「家族」という名の迷宮を描く傑作長篇。

オススメのポイント!

「家族」「暴力」をテーマにした小説です。親殺しの女子大生と、臨床心理士たち、それぞれが抱えている問題が次第にあらわになり、重なっていくところに思わず引き込まれてしまいます。重いテーマでありながら、救いも感じられる、間口の広い作品となっています。直木賞選考委員の北方謙三さんいわく、非常に抑制が効いていて、その中で闇をかきわけ行間があり、深いところに手が届く作品として一番評価されたとのこと。現時点での、島本さん旬の傑作といえるでしょう。

2.『リトル・バイ・リトル』 高校生作家による野間文芸新人賞・芥川賞候補作

2003年1月に単行本が発刊されました。当時島本さんは、東京都立新宿山吹高等学校という無学年制の定時制・単位制高校に在籍しており、「高校生作家」として話題を集めていました。同年の芥川賞候補作となり、野間文芸新人賞を受賞。

島本理生さん『リトル・バイ・リトル (角川文庫)
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あらすじ

ふみは、母と、父違いの妹との三人暮らし。今や行方のわからない父親のDVを受けながら育ったふみは、高校を卒業しアルバイトの毎日を送っていたある日、母親から一人の男の子を紹介され、ふみとその子、周は付き合うことになる……。心に見えない傷を持ちながら、ふみは周囲との関わりを通じてその傷を目視できるようになっていく。

オススメのポイント!

『ファーストラヴ』同様「家族」がテーマの作品ですが、本作は比較的ポジティブに家族が描かれており、暗い話、重い話が苦手なかたはこちらから読み進めるのがよいでしょう。けして恵まれているとはいえない境遇の少女が、淡々とした日々を通じて、自分と周囲に向き合っていく過程が綴られています。そうした作品内容からか、若い世代の読者から共感をもって迎えられた作品です。なお島本さんは自らが母子家庭となった時期もあって、その時の思いと経験がこの作品に行き渡っている、と評されてもいます。

3.『君が降る日』 恋愛をテーマにした短編小説集

2009年3月に単行本で刊行され、2012年に文庫化されました。

島本理生さん『君が降る日 (幻冬舎文庫)
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あらすじ

恋人の降一を事故で亡くした志保。その車を運転していた降一の親友・五十嵐。彼に冷たく接する志保だったが、同じ哀しみを抱える者同士、惹かれ合っていく「君が降る日」。結婚目前にふられた女性と年下の男との恋「冬の動物園」。恋人よりも友達になることの難しさと切なさを綴った「野ばら」。恋の始まりと別れの予感を描いた三編を収録した恋愛小説。

オススメのポイント!

恋愛小説ながら、生と死についての大きなテーマを隠し持っている作品です。島本さんの短編作品集のなかでは最も評価が高く、読みやすいものになっています。恋愛を軸にしながらも、喜怒哀楽すべてを喚起される巧みな三作に仕上がっています。

4.『クローバー』 島本作品の中でとりわけ読みやすく楽しい青春恋愛小説

2007年11月に単行本として発行されました。2011年1月に文庫化。文学賞などで評される機会はなかったものの、ブクログユーザーから高い評価を受けています。

島本理生さん『クローバー (角川文庫)
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あらすじ

ワガママで女子力全開の華子と、その暴君な姉に振り回されて、人生優柔不断ぎみな理系男子の冬治。双子の大学生の前に現れたのはめげない手強い求愛者と、健気で微妙に挙動不審な才女!?でこぼこ4人が繰り広げる騒がしくも楽しい日々。ずっとこんな時を過ごしていたいけれど、やがて決断の日は訪れて…。モラトリアムと新しい旅立ちを、共感度120%に書き上げた、キュートでちょっぴり切ない青春恋愛小説。

オススメのポイント!

島本さんの描くポジティブな青春恋愛小説です。島本さんの作品は重い内容を含んでいるものが多いですが、読みやすく楽しい作品となっています。単なる青春モノ、恋愛モノというだけではなくて、モラトリアムと対峙する若者たちの成長小説、という読み方もできます。島本さんの軽快かつ軽妙な文章に近づくには一番適した作品かもしれません。特に、重い小説は苦手だけど島本さんの作品が気になるかたにはぜひともオススメです。

5.『ナラタージュ』 人間性の深奥をあらわにする恋愛小説

2005年2月に単行本刊行。同年の2005年『この恋愛小説がすごい! 2006年版』第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位、そして山本周五郎賞の候補になりました。2008年2月に文庫化され、松本潤さん・有村架純さんの共演によって2017年に映画公開されました。

島本理生さん『ナラタージュ (角川文庫)
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あらすじ

お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務がある―大学二年の春、母校の演劇部顧問で、思いを寄せていた葉山先生から電話がかかってきた。泉はときめきと同時に、卒業前のある出来事を思い出す。後輩たちの舞台に客演を頼まれた彼女は、先生への思いを再認識する。そして彼の中にも、消せない炎がまぎれもなくあることを知った泉は―。

オススメのポイント!

学生と先生の恋愛小説。けれども、恋愛を介して相対せねばならない自分自身の人間性が描かれている作品とも言えます。読者自身の恋愛観も試されてしまうことでしょう。さまざまな世代の読者から色々な感想が寄せられていますが、ぜひ一読してからブクログのレビューに目を通してみてくださいね。

なお映画のDVDが2018年5月に発売されました。映画を見逃した方はこちらもぜひお楽しみくださいね。

ナラタージュ DVD 通常版
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島本さんの作品は暗いテーマが描かれていることが多いのですが、けしてそれだけではない作家だということが分かる作品を中心に選びました。どうか最初の一冊目が良い出会いでありますように!

参考リンク

第159回芥川賞に高橋弘希さん『送り火』 、直木賞に島本理生さん『ファーストラヴ』が決定しました!(ブクログ通信)
島本理生さん Official Website
島本理生さん Twitter