湊かなえさんの代表作・オススメ本5選!感動作からイヤミスまで!

湊かなえさんおすすめ・受賞作・代表作5選

こんにちは、ブクログ通信です。

5月19日に最新作『未来』(双葉社)発売を控えている湊かなえさん。刊行作が次々とドラマ化・映画化されており、ますます注目を集める湊さんの作品ですが、映画やドラマは知っているけど原作を読んだことがない、というかたも増えてきていますね。

ブクログから、湊さんの代表作・オススメ作を5作紹介いたします。湊かなえさんといえば、後味の悪い読後感そのものを楽しむような「イヤミス」(※読んでイヤな気持ちになるミステリー)の優れた書き手として広く認められていますが、色合いが異なる作品も多数あります。

まずは「イヤミス」以外の作品からご紹介し、ブクログユーザーから高い評価を受けている作品、読みやすい作品、知名度のある作品を中心に集めているので、ぜひ参考にしてくださいね。

経歴:湊 かなえ(みなと かなえ)

1973年、広島県因島市中庄町(現・尾道市因島中庄町)生まれ、武庫川女子大学家政学部卒。
2005年に第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。2007年には第35回創作ラジオドラマ大賞受賞、「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。読んだ後に嫌な気分になるミステリー「イヤミス」の優れた書き手として著名。
「聖職者」に続きを書く形で成立した連作集『告白』は、2008年、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!」では第4位に選ばれ、2009年、第6回本屋大賞を受賞。デビュー作での本屋大賞ノミネート・受賞は、共に史上初。2012年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞(短編部門)、2016年『ユートピア』で第29回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。ほか、直木賞で度々候補になっており、2018年には『贖罪』でエドガー賞候補となった。
映画化・ドラマ化された作品多数。特に映画では、2010年『告白』、2014年『白ゆき姫殺人事件』、2016年『少女』、2017年『望郷』と話題作が多い。

湊かなえさんの作品一覧

1. 『望郷』 島に住まう人々の思いを綴る、感動の連作短編集

2013年刊行、日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した「海の星」をはじめ、6編が収録された短編集です。舞台となっている白綱島は、湊さんの出身地、因島がモデルになっています。

湊かなえさん『望郷 (文春文庫)
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あらすじ

瀬戸内にある白綱島。そこで生まれ育った人々が抱える、故郷への思い。故郷にいる元同級生から届いた手紙をきっかけに、浜崎洋平は妻に島の暮らしのことを話し始めた。小学校6年のとき、洋平の父・秀夫が失踪する。母の佳子は夫を探し続け、待ち続け、働き続けて大黒柱がいない家庭を支える。そんな中、洋平が釣りをしているときにぶっきらぼうな物言いの男、真野幸作が現れる。彼は定期的に現れて洋平と佳子に声かけし、差し入れをくれるようになる。洋平は、幸作が佳子目当てに訪れているものだと思っていたのだが―。(「海の星」)。
推協賞短編部門受賞作「海の星」を含め、白綱島で起こる六つの事件を収録した傑作全六編。

オススメのポイント!

この作品はポジティブな要素も描かれているので、「イヤミス」が苦手という人にもオススメできます。湊さんが「イヤミス」の優れた書き手なのは、登場人物設定や卓越した人間心理の描写力あってこそですが、その描写力がこの作品でも冴えています。読み進めるうちにいつの間にか作品の世界へ引きずりこまれてしまうのです。湊さんの様々な側面が全て盛り込まれた作品といえるでしょう。

なお2017年、収録策の2編「夢の国」「光の航路」を元に映画化されました。映画から作品に近づくのもいいかもしれませんね。

2. 『山女日記』 女性が直面する様々な苦悩を描く連作短編集

2014年刊行の連作短編小説。広い意味での山岳小説というジャンルにあてはまりますが、遭難や過酷な状況とは異なり、山と登山に親しみを感じられるような物語になっています。悩みを抱えながら山を登ろうとする女性たちの等身大の姿が描かれており、暗い物語が苦手な女性読者の方々にオススメしたい作品です。

湊かなえさん『山女日記 (幻冬舎文庫)
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あらすじ

初めての登山で装備一式を揃えて山に臨む律子は、本当に今の相手と結婚していいのかどうか悩んでいた。一緒に山に登るのは、同僚の由美。しかし律子は、由美の不倫現場を見てしまっていた。不倫相手は、仲人を頼んでいる部長。律子は部長の奥さんに好印象を抱いていたこともあり、由美に不信感を抱いている。山を登りながら、律子は思わず本音をぶつけてしまうのだが―(「妙高山」)。

オススメのポイント!

終わりどころか、今さえ見通しがつかない人生について悩みを抱えた女性たちが、ふとしたことで山と向き合い、登っていく。一歩一歩踏みしめながら、迷える思いを少しづつ整理し、思いを確かなものにしていく。その様子に思わず共感し、エールを送りたくなってしまいます。湊かなえさんの巧みな心理描写を楽しめる一冊であると同時に、女性読者を勇気付ける一冊と言えるかもしれません。

3.『告白』 デビュー作にして代表作、湊かなえさん「イヤミス」の原点かつ傑作

2008年に刊行されたデビュー作でありながら、同年度の週刊文春ミステリーベスト10第1位、このミステリーがすごい!第4位、そして2009年本屋大賞を受賞した湊かなえさんの代表作にして大ベストセラーです。元々は第一章にあたる「聖職者」で短編として完結する予定が、第29回小説推理新人賞を受賞、その続きを書くことによって成立した長編小説です。

湊かなえさん『告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
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あらすじ

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」。市立S中学校1年B組、3学期の終業式の日、担任の森口悠子は教師を辞めることを自分たちの生徒に語りながら、娘の死について語り始める。犯人の「A」と「B」を示唆しながら、復讐を仕掛けた、と告げて教室を去っていく。そして次第に復讐は成し遂げられ、関係者たちは堕ち壊れていく―。

オススメのポイント!

不穏な始まりから、ショッキングな事件の数々、そしてラストに至るまでの展開に、思わず凍りついてしまいます。デビュー作とは思えないほどの濃度で、一気読み間違いなし。後ろめたい快感をおぼえる人、道徳倫理について思いをはせる人、読後感は人それぞれながら、読んで思わず感想を誰かに語ってしまいたくなるような作品。暗い話、嫌な話が苦手な人は気をつけて!
2010年に映画化されており、興収38億円超、日本アカデミー賞をはじめ高い評価を受けていますが、R15+指定作となっています。『告白』DVD特別価格版も発売されていますので、興味のあるかたは、ぜひ。

4.『少女』 危うげな青春と友情を描いたダークヒューマンドラマ

2009年に刊行された、『告白』に次ぐデビュー2作目の書き下ろし長編小説です。

湊かなえさん『少女 (双葉文庫)
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あらすじ

人が死ぬ瞬間を見たい―。親友の自殺を目撃したと語る転校生の言葉を、由紀と敦子はそれぞれの仕方で受け止める。由紀はその言葉に、死体ではなく人が死ぬ瞬間そのものを見たいと思う。敦子はかつて自殺を考えたことがあり、死体を見たら死が何であるかを悟り、今よりも強い自分になれるのではないかと願う。二人はお互いに内心を告げることなく、夏休みのボランティアを始める。由紀は小児科病棟へ。敦子は老人ホームへ。死の瞬間を希求して―。

オススメのポイント!

煌めく思春期の夏休み、どこか危うげな青春と友情が作品全体に詰まっています。そして悪意のない無邪気な欲望が引き起こす事件と、因果応報。たたみかけられる様な展開から目が離せなくなってしまう、ダーク青春小説、ダークヒューマンドラマ。なお、2016年に映画化されており、本田翼さん、山本美月さん両主演が、美しい少女たちの「危うさ」を醸し出しています。映画もオススメです。

5.『リバース』 人間心理の微細な襞を描くヒューマンミステリー!

2015年刊行、第37回吉川英治文学新人賞候補作に選ばれた作品です。湊さんの作品の中では、初めて長編小説の主人公に男性が選ばれています。担当編集者から結末のお題を出されてそれに応える形で執筆が進められたそうで、かなり独特な来歴をもった作品です。ブクログユーザーからも高い評価を得ています。

湊かなえさん『リバース (講談社文庫)
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あらすじ

サラリーマンの深瀬和久は、趣味・好物のコーヒーが縁で、越智美穂子という彼女ができる。しかし謎の告発文が彼女に送りつけられた。「深瀬和久は人殺しだ」─猜疑心から深瀬を問い詰める美穂子。深瀬は逡巡のすえ、過去にあった「ある出来事」を告白した。その全てを聞いた美穂子は、深瀬のもとから離れる。ところが、同様の告発文は「ある出来事」を共有していた深瀬の大学時代の仲間にも送られていた―。封印していた過去を暴こうとしているのは誰なのか?

オススメのポイント!

編集者からのお題に応えるかたちで様々に散りばめられた伏線が、鮮やかに回収されていくさまが見事としか言いようがありません。湊さんのプロット、人物描写の精髄を味わえるヒューマンミステリー。「イヤミス」要素は他の作品と比べてやや薄め。『告白』『少女』といった作品を敬遠してしまう方はこちらからどうぞ。

なお2017年にドラマ化されていますが、なんと湊かなえさん本人が脚本を書き下ろしており、ドラマオリジナルのラストとなりました。このドラマ版『リバース』も評価は高く、第8回コンフィデンスアワード・ドラマ賞(2017年4月期)の作品賞、脚本賞、そして第93回ザテレビジョンドラマアカデミー賞では最優秀作品賞、主演男優賞(藤原竜也)、脚本賞を受賞しています。『リバース DVD-BOX』『リバース Blu-ray BOX』も発売されています。機会があればぜひご覧ください。

リバース DVD-BOX
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短編と、「イヤミス」要素が薄い作品を中心にしつつ、代表作をセレクトしました。「湊さんといえば『イヤミス』」という評判もありますが、湊さんの魅力はそれだけではありません。もし食わず嫌いをしている方がいたら、ぜひここでご紹介した作品『望郷』『山女日記』を手にとってみてくださいね。どうか良い本との出会いがありますように。