「半沢直樹」で知られる池井戸潤さんの代表作・オススメ作7選!

池井戸潤さんおすすめ・受賞作・代表作7選

こんにちは、ブクログ通信です。

2018年も池井戸潤さんの映画・新刊が続々とリリースされ、盛り上がることは間違いありません。6月15日に映画『空飛ぶタイヤ』が公開となります。そして7月6日にシリーズ第2弾、『下町ロケット ガウディ計画』が文庫化され、7月20日には第3弾『下町ロケット ゴースト』が新刊で発売となり、そのTVドラマ化が10月に控えています。

ブクログから、池井戸さんの代表作・オススメ作を7作紹介いたします。多数の作品の中から代表作、そしてブクログユーザーから高い評価を受けている作品、読みやすい作品、知名度のある作品を集めているので、ぜひ参考にしてくださいね。

(2018年7月19日更新)

経歴:池井戸 潤(いけいど じゅん)

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学文学部および法学部を卒業。子供の頃から本に親しみ、作家になりたいと思っていた。卒業後、銀行員、コンサル業などを経て、『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。
以降、2010年『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞を、2011年『下町ロケット』で直木賞をそれぞれ受賞。他の代表作に、半沢直樹シリーズ『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』、花咲舞シリーズ『不祥事』、『空飛ぶタイヤ』『ルーズヴェルト・ゲーム』『民王』『陸王』など。多くの作品がドラマ化・映画化されており、非常に高い人気を誇る。

池井戸潤さんの作品一覧

1.『下町ロケット』 第145回直木賞受賞作の人気シリーズ!

2010年に刊行されました。『週刊ポスト』2008年から2009年までの連載を加筆訂正した作品で、第24回山本周五郎賞の候補となり、第145回直木三十五賞を受賞しました。2015年にテレビドラマ版「下町ロケット」も放映されています。

池井戸潤さん『下町ロケット (小学館文庫)
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あらすじ

元宇宙科学開発機構の研究員で、現在は父親が遺した下町の精密機械製造業、佃製作所で経営者を務める佃航平。自分の夢であるロケットエンジンの開発に注力し、少しずつ業績は下降気味に。主要取引先から突然取引終了を告げられ、メインバンクへの融資申し込みも断られる。さらにライバル会社から特許侵害で訴えられた。四面楚歌のなか、帝国重工の宇宙航空部長・財前が佃製作所が持っている新型水素エンジンの特許を20億円で譲渡を持ちかける。特許使用許可か、または部品搭載か、航平は思い悩むのだが。

オススメのポイント!

下町のメーカー経営者が夢を掲げ、周囲は技術面や金銭面等からそれを懸念し、反対しつつ、かつての自分を思い起こして皆がその夢に協力していく。痛快なエンタメ小説ですが、お金、プライド、夢、希望をめぐる極めてシビアな物語でもあります。現代社会や企業、そしてその中で労働するあらゆる人々が直面する難題を乗り越えていく物語は、多くの読者に活力と勇気を与えてくれるでしょう。

なお7月6日に続編の『下町ロケット ガウディ計画』が文庫化。そして7月20日にシリーズ第三弾の『下町ロケット ゴースト』が発売となりますので、ぜひこちらも手にとってみてくださいね。なお、10月からTVドラマ続編放送が決まっています!

2.『オレたちバブル入行組』 半沢直樹シリーズ第一弾!

2004年発行の書き下ろし作で、『別冊文藝春秋』をもとに単行本化されました。第22回山本周五郎賞候補作。もともとシリーズ名公称は「オレバブ」シリーズでしたが、2013年にテレビドラマ化された「半沢直樹」をきっかけにシリーズ名も「半沢直樹シリーズ」と変更され、いまはこちらの名称のほうが有名になりました。

池井戸潤さん『オレたちバブル入行組 (文春文庫)
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あらすじ

バブル期、大手都銀・東京中央銀行に入行した半沢直樹は、関西支店の中核店舗・大阪西支店で融資課長を務めていた。ところが上昇志向の強い支店長・浅野の支持で「西大阪スチール」に5億の融資を行ったが、直後に倒産。帳簿から粉飾があることに半沢は気付くが、西大阪スチール社長の東田は開き直った末に失踪。支店長の浅野は、半沢にすべての責任を押しつけた。そして半沢の逆襲が始まる―。

オススメのポイント!

さまざまなトラブルを乗り越えながら自分を陥れようとする上司たちに、窮地から大反撃を試みる半沢直樹。銀行と人間のドロドロした部分を喝破するかのような半沢の振舞いがすさまじいです。時代劇にも似た勧善懲悪物語は、読み手を痺れさせます。

「半沢直樹シリーズ」は4作品までが発行されています。続編二作目は『オレたち花のバブル組』、三作目は『ロスジェネの逆襲』、四作目『銀翼のイカロス』。半沢の活躍が楽しめるシリーズ作、すべてオススメです。

「半沢直樹」ドラマ版は『オレたちバブル入行組』だけでなく、二作目の『オレたち花のバブル組』も原作に含まれています。そして「倍返しだ!」というセリフが2013年「新語・流行語大賞」の年間大賞にも選ばれましたが、実は原作ではあまり出てきません。けれども原作はドラマ版よりも、より登場人物の内面が描かれており、味わいがあります。ドラマを観たかたも、ぜひ原作を読んでみてはいかがでしょうか。

半沢直樹 -ディレクターズカット版- DVD-BOX
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3.『花咲舞が黙ってない』放映ドラマの設定が生かされた連載小説

2017年に文庫書き下ろしで刊行されました。元々『不祥事』等がアレンジされて放送されたテレビドラマ化作「花咲舞が黙ってない」を受け、2016年に読売新聞で連載された作品です。

池井戸潤さん『花咲舞が黙ってない (中公文庫)
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あらすじ

時代は世紀末の頃。東京第一銀行事務部調査役の相馬健、そしてその部下・花咲舞。二人はタッグを組んで、様々なトラブルに対処していた。誰彼構わず空気を読まずに正論を主張する「狂咲」という渾名さえある花咲舞だが、隠蔽工作、行内政治といった組織の秘密を知ってしまう……「本当にそれでいいんですか。そんなんだから、この銀行は良くならないんですよ」―花咲舞の奮闘が始まる。

オススメのポイント!

『不祥事』に始まる「花咲舞シリーズ」は、「半沢直樹シリーズ」に比べてエンタメ性が強く打ち出されている作品です。銀行のトラブルや不祥事に対処していく花咲舞と相馬健のコンビの行動とその活躍。半沢シリーズと同じく、爽快感がたまりません。読み手を代弁するかのような花咲の啖呵に、胸がすく思いをする人も多いのではないでしょうか。

今作が生まれるきっかけとなったドラマ版もオススメです。なおドラマ版は『不祥事』以外にも、『銀行総務特命』『銀行狐』『銀行仕置人』『仇敵』といった短編がアレンジして収録されています。ぜひこれらの作品もご覧くださいね。

4.『空飛ぶタイヤ』 第28回吉川英治文学新人賞受賞作!

2006年刊行の作品です。大型トラック脱輪による死傷事故と、横浜母子3名死傷事故をモデルにしたと言われる、池井戸さんの経済小説です。

池井戸潤さん『空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)
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あらすじ

父親の後を継ぎ運送会社を経営している赤松徳郎だが、自社トラックがタイヤ脱輪事故を起こして死傷者を出してしまった。原因を整備不良とされ警察からの追及を受ける赤松。会社も信用を失い、倒産寸前の状態に追い込まれてしまう。しかし自社の無実を信じる赤松は、トラック販売元、巨大企業ホープ自動車の欠陥を疑う。

オススメのポイント!

いわれなき罪を被せられる主人公とその家族。赤松の息子へのいじめや、世間からの批判などは、読んでいて思わず心が痛みます。そして多くの登場人物たちが紡ぎあげる緊迫感あふれるドラマに息を呑んでしまうのです。裁かれるべき巨悪に主人公はどう立ち向かうのか。一気に読んでしまう作品です。

2009年にWOWOWでテレビドラマ版「空飛ぶタイヤ」が放映されました。そして2018年6月15日には映画「空飛ぶタイヤ」公開。期待が高まります。長瀬智也さん、ディーン・フジオカさん、高橋一生さんら人気主演キャストの演技も楽しみですね。

5.『鉄の骨』 大組織で生きる男の葛藤を描く、吉川英治文学新人賞受賞作

講談社PR誌『IN★POCKET』連載(2007~2009年)をもとに、2009年に刊行。高い評価を受け、。第142回直木賞候補作にノミネート。そして第31回吉川英治文学新人賞を受賞しました。

池井戸潤さん『鉄の骨 (講談社文庫)
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あらすじ

中堅ゼネコン一松組の若手社員・富島平太。彼は「談合課」という別名を持つ大口公共事業の受注部署、「業務課」に異動となった。技術力を武器に地下鉄工事の公共事業入札に参加しようとするも、平太の前に大物政治家の息がかかった談合仕切り屋が現れ、「談合」に相対することを迫られたー。

オススメのポイント!

まっすぐな主人公が「談合」の渦中に巻き込まれ、悩み葛藤する姿に思わず共感してしまいます。ゼネコンだけでなく、政治家や検察、銀行といったさまざまな立場が複雑な関係を織りなしていることがわかり、談合の仕組みも理解される一冊です。

6.『民王』異色の政治コメディ!

2010年刊行。池井戸さんが政治の舞台を面白おかしく描いた、異色作の一つです。2015年にテレビドラマ化されています。

池井戸潤さん『民王 (文春文庫)
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あらすじ

総理大臣・武藤泰山と、その息子の翔。翔はパーティで出会ったエリカから政治家の息子であること、そして留年していることを詰られる。しかし、ふと周囲から政治にまつわる会話が聞こえたかと思うと、気付いた時には国会にいた。そして父親と、心と身体が何故か入れ替わってしまったことに気付く―。

オススメのポイント!

企業小説・経済小説とは異なるコメディタッチの政治小説!池井戸さんの作風の広さに驚かされますね。現実の政界を彷彿とさせる、政治家の失言や女性関係のトラブル、漢字の読み間違いには思わず苦笑させられます。けれどもコメディ一辺倒ではありません。政治を舞台にした勧善懲悪物語としての魅力も備えた、エンタメ小説なのです。

2015年に放映されたテレビドラマ版「民王」もオススメです。国内のドラマ賞で高い評価を受け、コンフィデンス・ドラマアワードで第1回作品賞など計4部門、ギャラクシー賞月間賞、ザテレビジョンドラマアカデミー賞4部門をそれぞれ受章。貝原茂平を演じた高橋一生さんは第1回コンフィデンスアワード・ドラマ賞と第86回ザテレビジョンドラマアカデミー賞でそれぞれ助演男優賞を受賞。ドラマは、飛躍するきっかけとなった大出世作となりました。原作をかなりアレンジしているので、読み比べも楽しいです。

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7.『七つの会議』不祥事を働く人間の情念を描いた連作短編集

2012年刊行の連作短編集です。2011~2012年『日本経済新聞電子版』で連載された内容に加筆され、一作となりました。2013年にテレビドラマ版「七つの会議」が放映されました。さらに、2019年野村萬斎さん、香川照之さんらをキャストに映画版「七つの会議」が予定されています。

池井戸潤さん『七つの会議 (集英社文庫)
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あらすじ

一部上場企業の子会社である中堅の電機メーカー・東京建電。ある日トップセールスマンのエリート課長を社内委員会に訴えたのは、歳上の部下だった。そして役員会が不可解な人事を下していく。いったい何が起こっているのか?事態収拾を命じられた原島は、親会社と取引先を巻き込んだ組織ぐるみの背任に近づき、深層を暴いていく―。

オススメのポイント!

連作短編ごとに語り手が変わり、7つの会議を経て進む物語は途中で加速し、急展開していきます。不正と相対してやむを得ず手を染める人、誘惑に打ち勝つ人、清濁併せ呑む人。池井戸さんが得意とするさまざまな葛藤の物語にグイグイと引き込まれます。まだ読んでないかたは、映画化前にぜひ手にとってみてくださいね。DVD化されているテレビドラマ版と映画版を見比べてみるのも面白いかもしれませんね!

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今後もますますドラマ・映画化作品が増えていく池井戸潤さん。複雑で苦々しい現実と、それに打ち勝つ魅力的な主人公たちを描いた作品の数々、ぜひ手にとってみてくださいね。

どうか最初の一冊目が良い出会いでありますように!