美術史小説の名手、原田マハさん代表作・オススメ5選!

原田マハさんおすすめ・受賞作・代表作5選

こんにちは、ブクログ通信です。

年々評価を高めている作家、原田マハさん。来歴を活かした「美術史小説」の書き手としてだけでなく、幅広いテーマを扱っています。今年2018年は、5月18日に『フーテンのマハ』、そして5月23日に『やっぱり食べに行こう』、さらに5月30日には『ゴッホのあしあと 日本に憧れ続けた画家の生涯』が刊行。次々と作品を刊行し続けていますね。

ブクログから、原田さんの代表作・オススメ作を5作紹介いたします。多数の作品の中から、まず原田さんが得意とする、美術をテーマにした「美術史小説」の代表作をご紹介。そしてブクログユーザーから高い評価を受けている作品、読みやすい作品、知名度のある作品を集めているので、ぜひ参考にしてくださいね。

(2018年5月29日最終更新)

経歴:原田 マハ(はらだ まは)

1962年東京都生まれ。小6から高校卒業まで岡山で育つ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。
馬里邑美術館、伊藤忠商事株式会社、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館での勤務を経て、2002年よりフリーのキュレーターとなる。
2005年小説化デビュー作の『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、『キネマの神様』で第8回酒飲み書店員大賞をそれぞれ受賞。2013年には『ジヴェルニーの食卓』で第149回直木賞候補、2016年『暗幕のゲルニカ』で第155回直木賞候補となる。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞を受賞。本屋大賞の候補としても度々名前が挙がっている。

原田マハさんの作品一覧

1.『楽園のカンヴァス』原田さん、渾身の美術史小説

2012年に刊行された作品で、原田マハさんが自らの来歴を活かして執筆した「美術史小説」の記念すべき第一弾。第25回山本周五郎賞、「『ダ・ヴィンチ』プラチナ本 OF THE YEAR 2012」、そして王様のブランチBOOKアワード2012大賞をそれぞれ受賞した作品です。2013年本屋大賞の3位にも選出されており、原田さんの作家としての評価を高めた一作でした。

原田マハさん『楽園のカンヴァス (新潮文庫)
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あらすじ

ニューヨーク近代美術館(MoMA)キュレーター、ティム・ブラウンは富豪から招かれた先の邸宅で、巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵を観た。富豪いわく、正しい真贋判定者に絵を譲るという。手がかりとなるのは謎の古書。ヒントはその一冊のみ。ライバルとなるのはルソーに関する論文をいくつも記している研究者、早川織絵。7日間のリミット内で知識と審美眼を競うことになる。果たして、秘められた作品は真か偽か?

オススメのポイント!

来歴や作品を知っている方だけでなく、絵画を普段あまり観ないかたも物語に引き込んでしまうアートミステリー。美術史小説の書き手としての原田さんを知るためには最適の一冊でしょう。他に類を見ない魅力が溢れています。

2.『暗幕のゲルニカ』 美術と戦争―「ゲルニカ」のメッセージを読む

2016年に刊行された作品で、ピカソの「ゲルニカ」をめぐる作品です。ちなみに「ゲルニカ」が世に出たのは1937年で、創作80年を前にして生まれた作品でした。第155回直木賞候補作にして、「本屋大賞2017」ノミネート作です。

原田マハさん『暗幕のゲルニカ
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あらすじ

反戦のシンボルにして20世紀を代表する絵画、ピカソの「ゲルニカ」。国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーが2003年のある日、突然姿を消した。誰が「ゲルニカ」を隠したのか?現代のニューヨーク、スペインと大戦前のパリが交錯する。

オススメのポイント!

一枚の絵画「ゲルニカ」の来歴が誕生した時代にまで遡って語られ、21世紀現代の出来事と交互に物語が進みます。現代にまで引き継がれている反戦の象徴を綴る物語は、芸術作品が意味と価値を持つのはなぜか、ということを存分に示しています。

3.『たゆたえども沈まず』 もしゴッホと日本人に緊密な関係があったなら―壮大な美術史”if”ストーリー

2017年刊行作。日本に憧れるゴッホ、その弟テオ、そして浮世絵を世界に問うた画商:林忠正と助手の重吉4人をめぐる歴史小説・美術史小説です。「本屋大賞2018」でもノミネートされ、4位の成績を収めました。

原田マハさん『たゆたえども沈まず
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あらすじ

時は1886年パリ。日本文化に精通しており、浮世絵を紹介し、広め、販売していた一人の日本人がいた。画商、林忠正。彼の知識と流暢なフランス語によって、日本美術の愛好家は徐々に増え始めている。同じ頃、オランダ生まれの画家フィンセント・ファン・ゴッホは金銭的に困窮しており、画商の弟、テオドルス・ファン・ゴッホ(テオ)の援助を受けながら絵を描いていた。そしてゴッホ兄弟が林忠正に出会うとき、歴史は大きく動き出す―。

オススメのポイント!

歴史的事実に基づいた壮大なフィクションに魅せられます。というのも、ゴッホはパリ時代に浮世絵に触れ、そこから多大な影響を受けたことが知られています。林忠正もまた、浮世絵をヨーロッパに広めた人物の一人として歴史に名を残しています。けれどもゴッホと林忠正との間に直接の関係があったことを示す資料は残されていません。壮大な歴史の”if”にして、19世紀美術を紐解く試みの本作は非常に間口が広く、アート好きをうならせる内容となっています。なお人間像に迫る新刊、『ゴッホのあしあと 日本に憧れ続けた画家の生涯』もあわせて読んでみてはいかがでしょうか。

4.『カフーを待ちわびて』 原田マハさんの原点たる恋愛小説!

投稿小説として「日本ラブストーリー大賞」を受賞した後、2006年に刊行された、原田さんのデビュー作となります。小説を書くことを漠然と考えていた原田さんが、沖縄の伊是名島で出会った犬「カフー」にインスピレーションを受け、2005年に9ヶ月ほどで書き上げた作品です。「カフー」とは沖縄の方言で「果報」「良い知らせ」「幸せ」のこと。

原田マハさん『カフーを待ちわびて (宝島社文庫)
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あらすじ

沖縄の小さな島、与那喜島で雑貨屋を営みながら暮らしている明青(あきお)。彼のに一通の手紙が届く。見知らぬ人からの手紙には「絵馬が本当なら、私をお嫁に貰って下さい」。彼は本土の神社で、絵馬に「嫁に来ないか。幸せにします」と書いていた。そして差出人の幸(さち)が、島にやってきた―。

オススメのポイント!

泣ける恋愛小説として、若い読者たちを惹きつけています。純粋なラブストーリーに惹かれるかたも多いなか、実際の沖縄離島訪問をもとにした豊かな情景描写、ゆったりした時間に癒されるかたも多いです。丹念な取材で描くリアルさと、物語としてのフィクションが結びついて生まれる、原田さんの魅力的な物語の原点が示されている作品かもしれませんね。

5.『本日は、お日柄もよく』 「言葉が持つ力」に焦点をあてたヒット作

2010年に刊行された作品で、40万部を超えたヒット作となりました。華やかな主役の陰で働く職業、スピーチライターについての作品です。

原田マハさん『本日は、お日柄もよく (徳間文庫)
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あらすじ

OL、二ノ宮こと葉は想いを寄せていた幼なじみの結婚式で伝説のスピーチライター久遠久美に出会う。こと葉は、彼女のスピーチに感銘を受けた。翌月に親友の結婚披露宴にも招待されスピーチを頼まれている。久美の教えを受けてこと葉は、スピーチの要諦を知り、自身もスピーチライターを目指し、政治の世界に足を踏み入れることになる……。

オススメのポイント!

普通のOLが人との出会いを通じて成長し、感動的なスピーチを編み上げるまでの様子に、思わず魅せられます。普通の人が前向きになって成長し、大きな仕事を成し遂げるまでを描く「お仕事小説」というジャンルが定着しつつありますが、この作品は「言葉が持つ力」を中心に論じた物語となっており、本好きの方々にとっても親しみやすい題材ではないでしょうか。女性ユーザーからの支持が強い小説で、感動作として高い評価をされています。

なお2017年に比嘉愛未さん主演でWOWOWにてドラマ化されています。DVD化されているので、興味のあるかたは要チェックですね。

連続ドラマW 本日は、お日柄もよく [DVD]
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美術史小説、恋愛小説、お仕事小説、と多岐にわたる作品を執筆している原田さん。もちろんここで紹介できなかった作品も多いです。ぜひ皆さんの関心にあわせて手にとってみてくださいね。

どうか最初の一冊目が良い出会いでありますように!