第6回ブクログ大賞人文・自然科学部門ノミネート5作品を一挙ご紹介!『デジタルネイチャー』『宇宙に命はあるのか』『なぜ世界は存在しないのか』『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』『さよなら未来』

ブクログ大賞が始まりました!

みなさんの投票で決まるブクログ大賞ですが、「ノミネートされている作品、読んだことないし投票しづらいなあ」と思われている方がいらっしゃるかもしれません。

前回はエッセイ・ノンフィクション部門ノミネート5作品をレビューいたしました。今回は2017年から2018年にかけて話題をさらった人文・自然科学部門ノミネート5作品をご紹介します!

そもそも、ブクログ大賞のノミネート作品って、どうやって選んでいるの?

2017年5月1日から2018年7月31日の期間に発売された日本語刊行書籍の中から、ブクログでの登録数・評価数をもとに各部門のノミネート作品を選出しています。

ぜひ内容紹介とユーザーレビューなどを見て参考にしてください!

ブクログ大賞人文・自然科学部門ノミネート作品 落合陽一さん『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』

落合陽一さん『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂

★ 3.85 本棚登録 : 279人

内容紹介 

十分に発達した計算機群は、自然と見分けがつかない。デジタルネイチャーとは、研究者にしてメディアアーティストである著者の提唱する未来像でありマニフェストである。新たなパラダイムはここから始まる。

おすすめのレビュー!

#デジタルネイチャー という聞き慣れない言葉をタイトルに冠したこの書籍は哲学、技術論、そして自己啓発など様々な角度から読み解くことができる。
来るべき未来への高揚感と危機感を同居させ、読む者の意識変革を促すという意味で啓蒙的でもある。
非常に広範なトピックを扱っているため読者にとって未知の内容も多分に含まれ、またおそらく未知であるポイントは読者によって異なる。
たとえば私の場合はテクノロジー面のキーワード/トピックスは既知だが東洋思想などは未知。

ではそこを本書ではどうカバーしているかというと、異常とも思えるほどの注釈が未知の領域に対する知識の断片を与えてくれる。
最初はその注釈の多さに面食らったが、本編のスピード感やダイナミズムを失うことなくより多くの読者へ伝えるためには非常に有効な手法だと感じた。

一度の通読では消化しきれないほどの情報量なので、また頭から読んでみようとおもう。

ikuodanakaさんのレビュー


\ みんなのレビューを見る!/

第6回ブクログ大賞人文・自然科学部門に投票!

ブクログ大賞人文・自然科学部門ノミネート作品 小野雅裕さん『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』

小野雅裕さん『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八 (SB新書)

★4.27 本棚登録 : 406人

内容紹介

人類の宇宙への旅は、まだ始まったばかり。わたしたちはどこから来て、どこへ行くのか。『宇宙兄弟』の監修協力をつとめる著者がテクノロジーとイマジネーションを駆使し、独自の視点で語る宇宙探査の最前線。

おすすめのレビュー!

これはリアル‘ぼうけんのしょ’だ。
これまで宇宙物理学の理論のほうばかり読んできたけれど、技術開発は「政治」が大いに関わっているぶん、よけいにドラマチックだ。おまけに、筆者の筆致がドラマチックなので、ぐんぐんと読まされてしまう。
本書を読んでいちばんよかったと思うことは二つある。
一つは、地球とは別の、地球に似た星で、生命が誕生していたと仮定した場合、その誕生がわずかでも遅れていた、あるいは進んでいた場合、その差は膨大な時間の経過を経た末に、途方もない差を生み出すだろうとの知見。を知れたこと。
つまりそれが意味するところは、もし生命誕生が遅れた星では、地球よりもだいぶん文明が遅れている(つまりコンタクト不可能)し、誕生が早かった星においては、確実に人類よりも進んだ文明が築かれているだろうこと。
二つめは、生命の定義というのは、そう簡単ではないということ。なんとなく、動物や植物や微生物やに似ている存在であれば生命を持っていると断定できると思っていたけど、生命の定義は、宇宙規模になると、もっと抽象的になるのだな、ということ。
常識を破るには、妄想も時には有効だなと実感。それが結果的に、想像力として評価される。ほんとに必要なのは、「妄想力」

ouiさんのレビュー


\ みんなのレビューを見る!/

第6回ブクログ大賞人文・自然科学部門に投票!

ブクログ大賞人文・自然科学部門ノミネート作品 著者:マルクス・ガブリエルさん/訳:清水一浩さん『なぜ世界は存在しないのか』

マルクス・ガブリエルさん『なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)

★3.52 本棚登録 : 356人

内容紹介

あらゆる見方、あらゆる現象を包含する「世界」は存在しない。特権的な見方は否定され、複数性が肯定される。若きドイツの哲学者が放った、私たちを肯定する「新しい実在論」。世界的ベストセラー、待望の邦訳。

おすすめのレビュー!

本著における「世界」とは、”World”という意味ではなく”物事を包括する最大の存在”といったところである。

全てを包括する存在は、存在しない。+1がないものは存在しない。
物事は「意味の場」の無限集合である。
このテーゼを核として、形而上学および構築主義の批判と、それらの欠点を克服することを目指した「新しい実在論」が語られる。

正直なところ全体は完全につかめなかったが、自然科学が万物の尺度となっているがそれは意味の場において一面でしかない、芸術の話…など部分で納得のいく主張はあった。

一般向けに書かれた一冊であり、例えが我々の身近なもの(映画やドラマ)が多いし、訳も哲学書らしからぬ口語風の書かれ方をしていて読みやすい。が、だから内容が簡単というわけではなく西洋哲学そのものに触れたことがない人だと途中で投げそうだ。
実在論ーポストモダンは難解で関連書籍を読む気にすらならないほどだが、本著は逆説的にそれらの入門としてよいと思った。(なんせ読みやすく、「わかった気」にはなる)

37nyさんのレビュー


\ みんなのレビューを見る!/

第6回ブクログ大賞人文・自然科学部門に投票!

ブクログ大賞人文・自然科学部門ノミネート作品 吉田裕さん『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』

吉田裕さん『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)

★ 4.00 本棚登録 : 374人

内容紹介

先の大戦で民間人・軍人・軍属あわせ死者は310万人に及んでいる。だが、死者の9割は戦争末期の1年ほどのあいだで亡くなっていた。それは何故なのか?「絶望的抗戦期」における日本軍兵士たちの実態に迫る。

おすすめのレビュー!

ここ20年くらい前から日本近代史学界では「兵士の視点・体験」からの戦争史・軍事史研究が盛んだが、本書は1941~45年のアジア・太平洋戦争に焦点を絞った、そうした研究動向の現時点におけるコンパクトなダイジェストといえる。餓死、自殺、他殺、薬物中毒、精神疾患、感染症、私的制裁、略奪、人肉食といった極限状況における日本軍兵士の「死と病理」を生々しい記録・証言によって明らかにしている。単に兵士の悲惨な実情を示すのみならず、その構造的原因を経済・文化的背景を含めて分析することで、立体的な歴史像を構築している。注意するべきは、いわゆる「後知恵」的な批判・裁断は極力行わず、批判するにしても同時代人の軍人・軍関係者の直接の言葉をもって行っていることで、「当時の感覚」としても問題が意識化されていたことがわかるような叙述になっていることであろう。近年の根拠のない「日本軍礼賛」「日本人自画自賛」風潮への批判意識は明瞭だが、そうした先入観なく「事実」をありのままに知らしめるための工夫といえる。

 なお個人的には、本書で示される日本軍の構造・特質がどうしても現在の日本企業と重なって仕方なかったことを付言しておく。過労死・過労自殺が恒常化している劣悪な職場環境や、「自己責任」の名の下で次々と弱者に抑圧が移譲される状況、作戦至上主義ならぬ成果至上主義による人間性の荒廃、問題を根本的に改めず精神主義的な対応に終始する国家の対応など、あまりにも相似している。改めて「戦前と戦後の連続性」を深刻に捉える必要を感じた。

mokunokamiさんのレビュー


\ みんなのレビューを見る!/

第6回ブクログ大賞人文・自然科学部門に投票!

ブクログ大賞人文・自然科学部門ノミネート作品 若林恵さん『さよなら未来――エディターズ・クロニクル 2010-2017』

若林恵さん『さよなら未来――エディターズ・クロニクル 2010-2017

★4.55 本棚登録 : 238人

内容紹介

雑誌『WIRED』日本版、元編集長が7年間で書いてきた文章をほぼ網羅した一冊。人文科学、社会科学、自然科学、多様なカルチャーにまたがる著者の軌跡は、錯綜する現代における人文知の重要性を示している。

おすすめのレビュー!

spotify、iTunes、napstar、CD、MD、walkman、はたまたLP、EP、ラジオ放送…音楽という輝く月の裏側にはテクノロジーのイノベーション(本書によればイノヴェイション?)がずっとずっと連なっていることを思い至りました。音楽ラバー視点からテックを語りビジネスを語り社会を語り、そして未来を語る、あまり聞いたことはないけど、めちゃくちゃ納得してしまうような論評の数々。必ず当たる宝くじを買いたがるようなイノベーション志向を嗤い、生産性をひたすら追い求めるシステムとは距離を置き、「表現する」歓びとそれを「感じ取る」歓びの交歓をシンプルに尊重する気持ち良さを感じました。月の表側を目的としてのビジネスの成功が覆ってきているような現在に月の裏側に回った音楽から吹く風みたいな本でした。

tosyokan175さんのレビュー


\ みんなのレビューを見る!/

第6回ブクログ大賞人文・自然科学部門に投票!

次回は海外小説部門をご紹介します!お楽しみに!