第69回読売文学賞発表!東山彰良さんら5氏が受賞!

第69回読売文学賞発表

こんにちは、ブクログ通信です。

2月1日、第69回読売文学賞が決まりました!

読売文学賞は、戦後の文芸復興の一助とするため、1949年度(昭和24年度)創設。「小説」「戯曲・シナリオ」「随筆・紀行」「評論・伝記」「詩歌俳句」「研究・翻訳」の全6部門において、前年の最も優れた作品が選ばれる総合文学賞です。有識者推薦のもと、選考委員の合議によって決定され、毎年2月に受賞作品が発表されます。受賞者には正賞の硯と、副賞として200万円が贈られます。

受賞作紹介

小説賞 東山彰良さん『僕が殺した人と僕を殺した人』(文藝春秋)

1984年​、台湾​。13歳だった。 夏休みが終わる​ほんの​2日前、ぼくたちの人生はここから大きく狂いはじめたんだ。 2015年冬、アメリカで連続殺人鬼「サックマン」が逮捕された。デトロイトの荒んだ街並みを見つめながら、「わたし」は、台湾で過ごした少年時代を想い出していく。三十年前、わたしはサックマンを知っていた――。サックマンとは誰なのか? その謎をめぐる青春ミステリー。

いたましいほどに美しい少年小説の誕生を、喜びたい。

選考委員:小川洋子さん選評

著者:東山彰良(ひがしやま・あきら)さん

1968年台湾生まれ。5歳まで台北で過ごした後、9歳の時に日本に移る。2002年「タード・オン・ザ・ラン」で第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞および読者賞を受賞。2003年に同作を改題した『逃亡作法 TURD ON THE RUN』で作家デビュー。2009年、『路傍』で第11回大藪春彦賞受賞。2013年に刊行した『ブラックライダー』が「このミステリーがすごい! 2014」第3位、第5回「AXNミステリー闘うベストテン」第1位となる。2015年『流』で第153回直木三十五賞受賞。2016年『罪の終わり』で第11回中央公論文芸賞受賞。2017年『僕が殺した人と僕を殺した人』で第34回織田作之助賞受賞、そして第69回読売文学賞受賞。

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戯曲・シナリオ賞 該当者なし

2014年以来の「該当者なし」でした。読売文学賞は各賞「該当者なし」の場合があるのですが、「戯曲・シナリオ賞」は「該当者なし」が相対的にかなり多い部門です。

随筆・紀行賞 保苅瑞穂さん『モンテーニュの書斎 『エセー』を読む』(講談社)

「私とは何か」から「人間とは何か」へ。モンテーニュが「私」の探究を通して「人生の真実」を問うた名著『エセー』。思想の書にして第一級の文学作品であるその本質と魅力を、みずみずしい名文で綴る、最良の手引きの書。

選考会の席で、この作品の文体に関して、賛嘆のため息が方々から漏れた。中でも「清潔」という評価が、最もふさわしいものとして耳に残った。

選考委員:萩野アンナさん選評

著者:保苅瑞穂(ほかり・みずほ)さん

1937年、東京生まれ。1961年東京大学文学部卒、1963年同大学院修士課程修了、1964-1967年パリ大学、パリ高等師範学校留学を経て、東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学名誉教授、独協大学名誉教授。専門はフランス文学。
元は英文学志望だったが、大学2年で専攻を選択する時期、説明会の教授の話にひかれて「運命のいたずら」のように仏文学を専攻し、プルースト研究者となる。50歳頃、2度にわたる給費留学を支えたフランスへの恩返しの気持ちから、モンテーニュ『エセー』研究に至る。

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評論・伝記賞 米本浩二さん『評伝 石牟礼道子: 渚に立つひと』(新潮社)

「戦後文学最大の傑作」(池澤夏樹)と激賞された『苦海浄土』。その作家の全容。『苦海浄土 わが水俣病』の発表以来、文学界でも反対闘争の場においても類なき存在でありつづける詩人にして作家・石牟礼道子。恵み豊かな海に育まれた幼年時代から、文学的彷徨、盟友・渡辺京二との出会い、闘争の日々、知識人と交流のたえない現在まで。知られざる創造の源泉と90年の豊饒を描き切る、初の本格評伝。3年にわたる取材で、石牟礼道子の祖父母の代から、パーキンソン病を患い車椅子生活を送る現在までを書き起こした。

『苦界浄土』という二〇世紀の世界文学の中でも屹立するような文学の奇跡が、どうして可能になったのか─そのことを考えるためのヒントが本書には詰まっている。

選考委員:沼野充義さん選評

著者:米本浩二(よねもと・こうじ)さん

1961年、徳島県生まれ。徳島県庁正職員を経て早稲田大学教育学部英語英文学科入学。同大在学中、『早稲田文学』編集に携わり、毎日新聞社入社。現在、毎日新聞西部本社福岡本部学芸部で文芸担当記者、石牟礼道子資料保存会研究員。

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詩歌俳句賞 山口昭男さん『句集「木簡」』(青磁社)

主宰誌『秋草』を創刊した2010年から2016年までの作品338句をまとめた第三句集。 個人で立ち上げた「秋草」主宰としての責任を感じさせる一冊。

木簡

著者 : 山口昭男

青磁社

発売日 : 2017年5月15日

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「この句たちの無欲さ・純潔さは、実作者が知らず知らず身につけている手垢、読者が気づかず持っている目垢を洗い流してくれる。そんな清品は、文学全体を見渡してもめったにない。

選考委員:高橋睦朗さん選評

著者:山口昭男(やまぐち・あきお)さん

1955年、兵庫県生まれ。岡山大学卒業。もと公立小学校校長。大学卒業後、出身地の神戸で小学校教員となり、当時の校長の勧めで俳句を始めた。波多野貞波、田中裕明に師事。2000年、田中主宰の『ゆう』創刊に加わり編集長となる。主宰誌『秋草』を創刊。『書信』『讀本』に続いて、本作が第三句集。

研究・翻訳賞 関口時正さん訳・ボレスワフ・プルス著『ボレスワフ・プルス』(未知谷)

19世紀中葉のワルシャワを舞台に展開するこの長篇は、24ヶ国語に翻訳され、世界中で愉しまれる古典中の古典。1968年の映画化をはじめ、連続TVドラマ化など、繰り返し映像化され、そのたびに話題をさらう魅惑の書。

訳文は達意で、少しだけ古風で、正に十九世紀の小説を読んでいるという実感を保証するものだ。

選考委員:池澤夏樹さん選評

訳者:関口時正(せきぐち・ときまさ)さん

1951年、東京生まれ。東京大学卒業後、ポーランド政府給費留学生として同国留学。東京大学大学院人文科学研究科比較文学比較文化専修修士課程修了。、東京工業大学人文社会群助手、米国イェール大学日本学科・スラブ学科客員研究員、熊本大学文学部講師、東京工業大学人文社会群助教授等を経て、現在東京外国語大学名誉教授。専門はポーランド文学・文化論、比較文学。

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なお、今年の選考委員は、池澤夏樹さん、伊藤一彦さん、、小川洋子さん、荻野アンナさん、川上弘美さん、川村湊さん、高橋睦郎さん、辻原登さん、沼野充義さん、野田秀樹さん、松浦寿輝さん、渡辺保さんでした(五十音順)。

第69回読売文学賞の贈呈式は、2月21日18時半に東京・内幸町の帝国ホテルで行われるとのことです。受賞者の挨拶が楽しみですね!

関連リンク

読売文学賞
文学賞の世界「読売文学賞受賞作・候補作一覧1-68回」