【おくやみ】エンデ『はてしない物語』翻訳者 上田真而子さん逝去

『はてしない物語』翻訳者、上田真而子さん死去

2017年12月17日、ドイツ文学者であり、翻訳家の上田真而子(うえだ・まにこ)さんが亡くなったことが報じられました。享年、87歳。心からご冥福をお祈りいたします。

上田真而子(うえだ・まにこ)さん(1930年5月25日 -2017年12月17日)

和歌山県生まれ。随筆集『幼い日への旅』によれば、幼少期を高野山で過ごしたそうです。京都府立女子専門学校卒業後にドイツに留学し、マールブルク大学で宗教美術史を学びます。大学中退後に京都ドイツ文化センターに勤務。児童文学の翻訳をはじめ、多くの作品の翻訳にかかわりました。1982年、ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』(岩波書店)で日本翻訳文化賞を受賞(佐藤真理子さんとの共訳。佐藤真理子さんは1989年にエンデ本人と結婚された翻訳家)。

代表翻訳作

日本翻訳文化賞を受賞した翻訳、ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』は特注の布で作られた装丁の豪華さもあって単行本の人気が非常に高い作品です。岩波少年文庫でも上下巻で発売されました。

またアニメ『アルプスの少女ハイジ』の原作として知られる『ハイジ』は多くの翻訳が発売されていますが、上田真而子さんもこの作品の翻訳を残しています。

ここで挙げた以外にもドイツの児童書についての翻訳は大変多く、ドイツ児童書の古典にあたる作品の翻訳にも取り組みました。日本の児童書に多大な影響を与えてきたといって過言ではありません。

上田真而子さんのおすすめランキング

上田真而子さんの著作、『幼い日への旅』『おばけさんとのやくそく』

上田真而子さんは著書も出しています。幼い頃の高野山や、父母のことを記した回想的な随筆、『幼い日への旅』。そして、「おばけさんとのやくそく」「お墓が百も千も万も」「みんなでばんごはん」「雪にのって」という春夏秋冬の四話を収録した創作童話『おばけさんとのやくそく』。『幼い日への旅』で記されているような、昭和の暮らしが描かれています。

なお、大阪府立中央図書館にて、資料展示「ドイツの子どもの本の魅力-翻訳者上田真而子の仕事-」が開催中です。2017年12月28日までとなっておりますので、興味のあるかたはぜひ足を運んで、上田真而子さんの業績をごらんいただければと思います。

これからも上田真而子さんの翻訳が、読まれつづけることを願ってやみません。

参考リンク

大阪府立中央図書館 資料展示「ドイツの子どもの本の魅力-翻訳者上田真而子の仕事-」
朝日新聞「『はてしない物語』翻訳、上田真而子さん死去」(2017年12月18日)
京都新聞「上田真而子さん死去 『はてしない物語』『ハイジ」翻訳』(2017年12月18日)