第39回 サントリー学芸賞決定!伊藤公一朗さん『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』ら受賞作ご紹介

こんにちは、ブクログ通信です。

11月9日、第39回 サントリー学芸賞決定いたしました!

「サントリー学芸賞」とは、公益財団法人サントリー文化財団が主催する学術賞で、「広く社会と文化を考える、独創的で優れた研究、評論活動をされた方」を顕彰する賞です。1979年創設以来の伝統があります。専攻の対象となるのは「前年1月以降に出版された著作物」で、人文・社会・芸術などの分野の専門書を評価する数少ない賞のひとつです。受賞部門は、「政治・経済」「芸術・文学」「社会・風俗」「思想・歴史」の4部門。優れた作品が複数あれば、同一部門内での複数受賞もあり、毎年各部門で1~3名の受賞が発表されます。今年は各部門2名ずつ選出されました。

なお受賞については、「個性豊かで将来が期待される新進の評論家、研究者であること、本人の思想、主張が明確な作品であること」、「代表候補作品だけでなく、これまでの一連の著作活動の業績を総合して選考の対象」になっていることが考慮されています。

受賞者および対象作の紹介

〔政治・経済部門〕伊藤公一朗さん『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(光文社)

数式なしで説明できる範囲で、いくつかの統計分析手法の解説がされている。それぞれの手法について強みと弱み、具体的な実施結果が示され、面白かった。とくに車の重量のところが顕著で、人間の浅ましさを見た気がする。部分最適ではあるのだろうが、デザインを間違うと悪い方向に作用することがよくわかった。

tomohixさんのレビュー

著者:伊藤公一朗(いとう・こういちろう)さん

1982年宮城県生まれ。京都大学経済学部卒業、ブリティッシュ・コロンビア大学修士課程を経て、カリフォルニア大学バークレー校博士課程修了(農業資源経済学専攻)、Ph.D.。スタンフォード大学経済政策研究所研究員、ボストン大学ビジネススクール助教授を経て、2015年よりシカゴ大学公共政策大学院ハリススクール助教授に着任、現在に至る。全米経済研究所研究員、経済産業研究所研究員を兼務。
専門は環境・エネルギー経済学、産業組織論、応用計量経済学。『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』はサントリー学芸賞のみならず、日経・経済図書文化賞も受賞している。新書媒体での受賞は珍しい。

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参考リンク

伊藤公一朗さん シカゴ大学公式サイト日本語版

〔政治・経済部門〕宮下雄一郎さん『フランス再興と国際秩序の構想 ―― 第二次世界大戦期の政治と外交』(勁草書房)

著者:宮下雄一郎(みやした・ゆういちろう)さん

1977年神奈川県生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学(政治学専攻)、博士(法学)。パリ政治学院大学院歴史学研究所修了、Ph.D.(History)。
現在、松山大学法学部法学科准教授。また、国立公文書館アジア・歴史資料センター短期非常勤職員や日本学術振興会特別研究員(PD)、北海道大学大学院法学研究科附属高等法政教育研究センター協力研究員を務めてきた。
専門は国際関係論、国際関係史、フランス外交史、欧州統合論。政治学と歴史学、双方の視点から「国際秩序構想史」分野の開拓を目指している。

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参考リンク

松山大学教員情報ページ 宮下雄一郎

松山大学法学部 研究室訪問 宮下雄一郎先生

研究者researchmap 宮下雄一郎

〔芸術・文学部門〕加藤耕一さん『時がつくる建築―リノベーションの西洋建築史』(東京大学出版会)

著者:加藤耕一(かとう・こういち)さん

1973年、東京都生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(建築学専攻)、博士(工学)。
東京理科大学理工学部建築学科助手、パリ第4大学客員研究員(日本学術振興会海外特別研究員)、近畿大学工学部建築学科講師などを経て、現在、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授。
専門は西洋建築史。

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東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 加藤耕一研究室

研究者researchmap 加藤耕一

〔芸術・文学部門〕金子遊さん『映像の境域 ―― アートフィルム/ワールドシネマ』(森話社)

著者:金子遊(かねこ・ゆう)さん

1974年、埼玉県生まれ。批評家、映像作家。慶應義塾大学環境情報学部卒業。
大学在学中からライターとして活躍、映像、文学、民族学を領域横断的に研究する評論活動を展開。一方、テレビやPR映像の構成作家・脚本家を経て、ドキュメンタリー映画3本を劇場公開。慶應義塾大学環境情報学部非常勤講師を務める。
専門は映像表現論、映画批評、民族学。

参考リンク

金子遊さんのブログ:「シネマの舞台裏」

〔社会・風俗部門〕遠藤正敬さん『戸籍と無戸籍――「日本人」の輪郭』(人文書院)

「戸籍は何のためにあるのか?」と問われ、即答できる人は恐らく少数派だろう。かつて戸籍制度が担っていた役割は住民基本台帳などの他の制度に取って代わられており、戸籍が単独で我々の日常生活に影響を及ぼす局面は限定的。にも関わらず、我々は漠然と戸籍が日本人としてのアイデンティティに不可欠なものであると認識している。これはなぜなのだろう?本書はこの戸籍の不思議さについて、その来歴と運用の実態を大量の文献に当たり詳らかにしながら、現代の戸籍制度が内包する共同幻想=「道徳律」をあぶり出した労作。

Flooding Throneさんのレビュー

著者:遠藤正敬(えんどう・まさたか)さん

1972年、千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了(政治学専攻)。博士(政治学)。
現在、早稲田大学台湾研究所非常勤次席研究員。宇都宮大学、埼玉県立大学、大阪国際大学、早稲田大学、東邦大学等で非常勤講師を務める。
専門は政治と戸籍および国籍(国家による国民統合、植民地統治、人の移動、社会の多様性等の視点で)。

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早稲田大学台湾研究所

〔社会・風俗部門〕福間良明さん『「働く青年」と教養の戦後史: 「人生雑誌」と読者のゆくえ』(筑摩書房)

著者:福間良明(ふくま よしあき)さん

1969年、熊本県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了(歴史社会学専攻)。博士(人間・環境学)。
同志社大学文学部卒業後、出版社で編集者として勤務を続けながら、同志社大学大学院文学研究科で博士前期課程を修了、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程に。香川大学経済学部准教授などを経て、現在、立命館大学産業社会学部教授。
専門はメディア史・歴史社会学。

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立命館大学 研究者学術情報データベース 産業社会学部 現代社会学科 福間良明

立命館大学 社研の学び 福間良明

研究者researchmap 福間良明

〔思想・歴史部門〕左地亮子さん『現代フランスを生きるジプシー ―― 旅に住まうマヌーシュと共同性の人類学』(世界思想社)

著者:左地亮子(さち・りょうこ)さん

1980年、京都府生まれ。筑波大学大学院人文社会科学研究科修了(現代文化・公共政策専攻)。博士(学術)。
日本学術振興会特別研究員(PD)などを経て、現在、国立民族学博物館グローバル現象研究部機関研究員。大学院在学中、フランス政府給費留学生としてフランス国立ポー・ペイ・ドゥ・ラドゥール大学大学院社会人文科学研究科に留学。
専門は文化人類学、ジプシー/ロマ研究。

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国立民族博物館 スタッフの紹介/左地亮子

研究者researchmap 左地(野呂)亮子

〔思想・歴史部門〕前田亮介『全国政治の始動―帝国議会開設後の明治国家』(東京大学出版会)

著者:前田亮介(まえだ りょうすけ)さん

1985年、東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了(日本文化研究専攻)。博士(文学)。
日本学術振興会特別研究員を経て、現在、北海道大学大学院法学研究科准教授。ロンドン政治経済学院(LSE)国際関係史学部客員研究員としてイギリスに滞在中。
専門は日本近現代史、日本政治外交史。

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北海道大学 研究者総覧 前田亮介

研究者researchmap 前田亮介


贈呈式は12月11日(月)に東京で行われる予定です。

参考リンク

サントリーニュースリリース「第39回 サントリー学芸賞決定 」

公益財団法人サントリー文化財団公式サイト