車椅子の物理学者、天才科学者として世界的に知られる、スティーヴン・ウィリアム・ホーキング博士が亡くなりました。76歳でした。ご冥福をお祈りします。
BBC NEWS JAPAN「スティーブン・ホーキング氏が死去、76歳」（2018年3月14日）
経歴：スティーヴン・ウィリアム・ホーキング（Stephen William Hawking）さん 1942年1月8日-2018年3月14日
イギリスのオックスフォードで生まれる。1957年、物理と化学を学ぶためにオックスフォード大学ユニバーシティカレッジ入学。大学卒業後はケンブリッジ大学大学院、応用数学・理論物理学科に入学。大学院入学後の1963年に「筋萎縮性側索硬化症」（ALS）と診断され、当時あと2、3年の命と宣告された。しかし途中から病の進行が弱まったこともあり、精力的に活動を続けてきた。1965年にはジェーン・ワイルドと一度目の結婚。
1963年にブラックホールの特異点定理を発表し世界的に名を知られた。1967年アダムズ賞受賞。1974年に 「ブラックホールの蒸発理論」発表し、同年に史上最年少でイギリスの王立協会会員（FRS）となった。1977年ケンブリッジ大学の教授職を務め、1979年にはケンブリッジ大学のルーカス記念鋼材教授職に就任（かつてニュートンも就いた歴史あるポジション）。1991年にタイムトラベルの不可能性などを説いた「時間順序保護仮説」を提唱。同年ジェーン・ワイルドと離婚（1995年にはエレイン・メイソンと再婚したが、のちの2011年に離婚）。
1990年、1993年、2001年と度々来日して大きく報道されており、日本で最もよく知られる世界的科学者の一人でもあった。アダムズ賞以外の受賞も多数あり、ピウス11世メダル（1975年）、エディントン・メダル（1975年）、ハイネマン賞数理物理学部門（1976年）、ヒューズ・メダル（1976年）、アルベルト・アインシュタイン・メダル（1979年）、フランクリン・メダル（1981年）、王立天文学会ゴールドメダル（1985年）、ポール・ディラック賞（1987年）、ウルフ賞物理学部門（1988年）、アストゥリアス皇太子賞平和部門（1989年）、オスカル・クラインメダル（2003年）、コプリ・メダル（2006年）、ブレイクスルー財団基礎物理学賞（2012年）がある。
ホーキング博士の代表作
1988年に刊行された代表作『ホーキング、宇宙を語る』（原題 “A Brief History of Time”）は全世界で1000万部を超える大ベストセラーになり、日本でも1989年に翻訳されて100万部を超える売上となりました。
われわれは謎に満ちた世界にいる。まわりに見えるものを理解したいとわれわれは望み、こうたずねる。宇宙の本性は何か？宇宙におけるわれわれの地位はなにか、宇宙とわれわれはどこからきたのか？なぜ宇宙はこのようになっているのか？
『ホーキング、宇宙を語る』（p.237）
この本の凄さは、方程式がほとんど出てこないことです。数式が入るたびに読者が減るという忠告を受けて、ホーキング博士はアインシュタインの相対性理論「E = mc2」以外、方程式を出さずに宇宙の起源と神秘について語ったのでした。
本書は難解だという評がありますが、要約が結論部で示されています。一読して難解だと思う方は、結論から読み始めると理解の助けになります。代表作にして、非常にスリリングな一冊です。
ホーキング博士の様々な一面
重度障害者用意思伝達装置を使い、スピーチや会話ではコンピュータプログラムによる合成音声を利用してコミュニケーションを取っていました。日本の講演でもユーモアあふれる語り口で多くの聴衆を魅了したそうです。
コメディユニット「モンティ・パイソン」の曲をカバーしたこともありました。ここで、合成音声で歌い上げるホーキング博士を見ることができます。
The Huffington Post「ホーキング博士とモンティ・パイソン。ビッグバン級の出会いがここに（動画）」（2015年4月15日）
また2014年にはホーキンス博士と最初の妻、ジェーン・ホーキングさんの物語『博士と彼女のセオリー』が映画公開されています。ジェーン・ホーキングさんの自伝 “Travelling to Infinity: My Life with Stephen”（邦訳なし）を元に、ホーキング博士とジェーン・ホーキングさんの出会いと別れが描かれる映画です。ホーキング博士存命中に撮影されました。
第87回アカデミー賞では5部門にノミネート。ホーキング博士を演じたエディ・レッドメインさんが主演男優賞を受賞した作品でした。ホーキング博士の一側面を映画を通して観ることができる一作です。
ホーキング博士についてはこれから沢山の追悼文が発表され、読み直されていくことでしょう。その業績が更に広まり、一般の読者にも科学のすばらしさ、宇宙の神秘が伝わればと願ってやみません。
