新聞広告からみる出版社の2018年!本の広告から出版社のメッセージを探る

出版社、元旦の新聞広告

こんにちは、ブクログ通信です。

2018年の正月はどのように過ごしましたか?正月休みのかたは実家で新聞を手にとってテレビをみたり、時間つぶししたりしていたのではないでしょうか。

実は年始の新聞広告って、本の広告が普段よりもたくさん掲載されているものです。2017年に大ヒットした本を改めて紹介しているところもあれば、2018年の抱負や新刊計画を書いているところも。ですから、本に関わるひとは興味深く正月の新聞広告をチェックしています。

主な出版社の新聞広告をご紹介していきます(出版社50音順)。2018年の面白そうな話題をチェックしてみましょう!

岩波書店:『広辞苑』改訂版発売予告と岩波新書80周年

朝日新聞5面で掲載されていた岩波書店の広告(全面広告)は、「対話」をキーワードに、1月12日発売の『広辞苑』改訂版発売予告、そして岩波新書80周年を紹介。まず「もっと対話を」という切り口から、対話における言葉の必要性を説き、言葉を知るために『広辞苑』を引いて対話して欲しい、と語られます。

そして対話は平和と希望を呼び寄せる道、ということでで『対話する社会へ』が紹介されました。岩波新書は創刊80周年。「岩波新書は、時代の潮流に押し流されず、自分自身で考えるために生まれた、世界に開かれた叢書です。その意味で、岩波新書そのものが、世界との、時代との開かれた対話の姿ともいえます」。

今年岩波新書は、閉塞しがちな現代の日本にさわやかな風を吹き込むラインナップを準備しているとのこと。メモリアルイヤーに生まれるはずの企画、楽しみですね。

KADOKAWA:大河ドラマ原作『西郷どん!』、映画「KU-KAI」原作など

元旦の朝日新聞12面で、今年話題の2作品、47万部を突破した大河ドラマ原作『西郷どん!』に、映画「KU-KAI」原作となる『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』が紹介されました。

『西郷どん!』は上製版(全2巻)と並製版(全3巻)の2種類があります。巻数も異なるのでご注意ください。

映画「KU-KAI」は2月24日公開です。楽しみですね!

なお毎日新聞10面全面広告では『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』の最新刊、および1月11日スタートのアニメ放送についてもふれています。

講談社:ノーベル賞学者、山中伸弥さんの挑戦

ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥さんが朝日新聞6面、読売新聞5面の全面広告で登場。京都大学iPS細胞研究所所長として研究を進めていますが、アメリカがこの分野に投じる研究費は10倍を超える規模。海外との競争に負けてしまうかもしれない。けれども山中さんは「どんなに険しい道でも、僕は挑戦します」と宣言。そして「講談社は、あなたの挑戦を応援します」と。京都大学iPS細胞研究所への支援願いを紙面で出しています。

講談社 2018年元旦広告特設サイト

サイトでは山中さんの著作も二冊紹介されています。

特に、『友情』は講談社から発売された昨年のベストセラーでした。しかし講談社は本の宣伝を最小限にしたうえで、社会的貢献を果たそうとしているように見えます。講談社には、ぜひこういう活動を続けてほしいですね。

光文社:『アルスラーン戦記』完結!

「シリーズ開始から31年、伝説のベストセラーついに完結!」。読売新聞4面で『アルスラーン戦記』完結のお知らせ。

昨年12月に最新の16巻『天涯無限』が発売。それに伴ってシリーズ作全ての書影が紹介されています。なお朝日新聞9面でも、毎日出版文化賞受賞作『バッタを倒しにアフリカへ』、サントリー学芸賞・日経・経済図書文化賞受賞作『データ分析の力』、料理レシピ本大賞料理部門大賞作の『世界一おいしい煮卵の作り方』など、売れている新書が紹介されました。

集英社:パラスポーツの応援「あなたの個性は、みんなの可能性だ」

集英社パラスポーツ応援サイト「パラスポ+!」でも紹介されているように、パラアスリートと集英社にかかわりの深い人物・キャラクターのコラボレーションが元旦広告を飾りました。読売6面、日経4面、毎日8面、朝日8面、産経4面を繋げると、先のリンク先で流れるスライドショーのような形で、広告が一つになります。新聞全てを購入するのは難しいですが、ファッション、漫画、読み物など、様々な角度から、パラスポーツをフォーカスし、応援する集英社の試み、ぜひ応援したいですね。

なお、それぞれの広告紙面で「セブンティーン創刊50周年」「創業90周年記念企画の美術全集『ART GALLERY』」「週刊少年ジャンプ創刊50周年」などのトピックも紹介されています。それぞれ盛り上がりが期待できそうですね。

新潮社:塩野七生さん「十七歳の出会い」

元旦広告で、塩野七生さんの近影と近著『ギリシア人の物語Ⅲ』、そして一冊の本との出会いが紹介されています。

63年前、17歳だった塩野七生さんは都立日比谷高校の図書館で、ホーマー(ホメーロスの英語読み)『イーリアス』と出会って夢中になり、地中海への憧れを募らせました。そして26歳のときヨーロッパに出発し、そのまま今日までずっとヨーロッパで生活。「ルネサンスの女たち」の文章発表から、『ローマ人の物語』、そして『ギリシア人の物語』を書き上げ、約2500年の西洋史を書ききってしまったのです。「十七歳の少女に夢と勇気を与え、人生をも変えてしまった、一冊の本とのかけがえのない出会い─。今年も新潮社は『特別な一冊との出会い』をお届けしてまいります」と広告は締められています。

塩野さんは昨年から新聞各紙でインタビューを受けており、古代ギリシアと現代日本との比較について述べる機会が多くなっていますね。

宝島社:世界は、日本を待っている─アラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンド

正月から少し外れますが、1月5日、毎年恒例の宝島社意見広告がありました。今年はフランスの伝説的俳優ふたり、アラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドの姿が!フランスと日本のかかわりから始まり、「世界は、日本を待っている」と説かれる広告でした。

宝島社広告 アラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンド
アラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンド

ポール・クローデルいわく、「私がどうしても滅びてほしくない民族があります。それは日本人です」。日本の美術工芸品は1867年パリ万博で紹介されてから印象派絵画をはじめ、プルースト『失われたときを求めて』まで影響を及ぼしたことにふれつつ、世界に誇れるはずの日本のモノづくりが自ら誇りを傷つけ萎縮してないか、と問います。そして名優二人のメッセージ。

「ジャポンは、自信をもって世界をリードすればいいのに…ジャポンが元気だとみんなが刺激を受けるよ。もちろん僕たちもね」(アラン・ドロン)

「その深くて大きい精神性にも、美意識にも、私は誉れと友情を感じている。ともに胸を張って進もう!」(ジャン=ポール・ベルモンド)

宝島社は意図をPR TIMES「宝島社企業広告『世界は、日本を待っている。』」でコメントしています。

「太古より自然を崇拝し、異文化を融合させながら常に新しい文化を創造してきた国、日本。誠実、勤勉、礼節、友愛を尊び、調和を「美」とし、“独自のモノづくり文化”を大切に育んできました。いまや経済大国となった日本ですが、昨今、欧米の合理性を追い求めるあまり、自らの手で、その“モノづくり文化”を傷つけ、自信を失いつつあるように感じられます。
日仏友好160周年記念「ジャポニスム2018」がパリで開催される年のはじめに、フランスを代表する二人の名優、アラン・ドロン氏、ジャン=ポール・ベルモンド氏からのメッセージを届けて、日本人の心を鼓舞。このメッセージが、いま一度、悠久の歴史によって培われた、日本文化の素晴らしさと自信を呼び覚まし、プロアクティブな行動に駆り立てるきっかけになれば幸いです」

宝島社のアグレッシブな広告、来年はどんなものになるのでしょう?今から楽しみです。

文藝春秋:「2018年も文藝春秋の話題作!」

文藝春秋は元旦の読売新聞2面、朝日新聞3面、日本経済新聞2面に話題のベストセラー『ふたご』『サイコパス』『銀翼のイカロス』と、今年映像化される作品を紹介しています。非常に好調なのがすぐわかるラインナップですね。

ふたご

著者 : 藤崎彩織

文藝春秋

発売日 : 2017年10月28日

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8月映画公開の『検察側の罪人』、6月映画公開の本屋大賞受賞作『羊と鋼の森』、1月ドラマスタートの、映画公開中の『勝手にふるえてろ』も紹介あり。

なお宮下奈都さんの『羊と鋼の森』は2月に文庫化決定とも記載がありました!

正月の新聞広告はまだまだ他にもありますが、特色のある広告を取り上げてみました。いかがでしたか?

正月に限らず出版社の新聞広告を定期的にチェックしていくと、色々な発見もあり、出版社それぞれの特色を見ることもできて、とても面白いものです。ぜひ新聞をとっているかたは、新聞広告もチェックしてみてくださいね。