【おくやみ】毛利子来さん逝去─弱い立場の子供、そして母親を尊重した小児科医「たぬき先生」

2017年10月26日、小児科医の毛利子来さんが慢性心不全で逝去。87歳でした。心からご冥福をお祈りいたします。

毛利子来(もうり・たねき)さん(1929年11月27日 – 2017年10月26日)

千葉県生まれ。旧制岡山医科大学卒。医師になって大阪の診療所などで勤務したのち、1960年東京の原宿にて毛利医院を開業。育児、教育相談に力を入れ、現在に至ります。著書は多数ありますが、主なものでは1987年に毎日出版文化賞受賞を受賞した、『ひとりひとりのお産と育児の本』。活躍は多岐にわたりますが、ルソーの教育論を範とした『新エミール』は文庫化され、気軽に手にとることが可能です。そして絵本にも関わっており、人のからだの仕組みをやさしい語り口で説明する啓蒙的な絵本、『ひとのからだ』、『ゲーとピー』の文章も担当しました。

弱い立場に置かれがちな子供のことを尊重しつつ、その目線から一貫して発言を続けました。その一方、男性も関わるようになった現代育児、推奨されていく共働きといった、時代の趨勢のなかで軽視されがちな母親の立場にも配慮しています。子育てに決まりごとがないことに言及しながら提唱された育児論は、多くの人々の支持を集めていました。

雑誌『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』生みの親でもありました。初代編集人の松田博美さんが追悼の文をFacebookに寄せていますので、紹介します。

毛利子来さんのおすすめランキング

ブクログで人気─山田真さんとの共著、『育育児典』

ブクログでもっとも人気で、多数コメントがついていたのが『育育児典』です。くしくもこの本が発売された2007年の10月26日という日は、毛利子来さんがお亡くなりになった日のちょうど10年前でした。

育育児典

著者 : 毛利子来

岩波書店

発売日 : 2007年10月26日

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正しい子育てなんてないから、なるたけ肩の力を抜いて気張らず、赤ちゃんとの暮らしを楽しみなさい。と、優しく背中を押してくれる素晴らしい育児書でした。

pass0pass0さんのレビュー

人それぞれでいいんだよという著者2人の優しいまなざしが感じられる新しい育児書です。参考資料や、インターネットのサイトが紹介されているのが現代らしいなと思います。そして、使いたい制度とサービスとして児童手当とか出産手当金があるかと思えば幼稚園の預かり保育まで書いてあります。親切な本だと思います。装丁がシンプルですが素敵です。

tomo3191さんのレビュー

どちらかと言うとご家庭に一冊あると重宝される書籍です。「暮らし編」「病気編」の2冊構成となっており、月齢に伴う育児方法の基本や制度・サービスについてなど、子どもの時に罹りやすい病気や怪我、その対処方法などが掲載されています。
 子どもが身近にいる保育所(園)等においても、育児の基本が書いてあるので保護者との面談時に知識として確認したり、病気に関する基礎知識を培うときには最適な1冊だと思います。
 なお、私(管理者)は保育に関する報告書を書く際に、この育育児典を何度か参考とさせて頂いています。

socialさんのレビュー

これからも毛利子来さんの著作が、育児に悩む人々に読まれつづけることを願ってやみません。

参考記事

マガジン9条「毛利子来の狸穴から」