こんにちは、ブクログ通信です。
紀伊國屋書店が運営・選出する人文書の賞、「紀伊國屋じんぶん大賞2019」が発表されました！「キノベス！2019」と同日の発表となりました（詳しくは「キノベス2019」発表！1位は、瀬尾まいこさん『そして、バトンは渡された』！参照）。
紀伊國屋じんぶん大賞とは？
「読者の皆さまと共に優れた人文書を紹介し、魅力ある『書店空間』を作っていきたい」――との思いから立ち上げた「紀伊國屋じんぶん大賞」は、今年で第9回目を迎えました。
一般読者の方々からいただいたアンケートを元に、出版社、紀伊國屋書店社員による推薦を加味して事務局にて集計し、ベスト30を選定いたしました。
※2017年12月～2018年11月に刊行（店頭発売日基準）された人文書を対象とし、2018年11月1日（木）～11月30日（金）の期間に読者の皆さまからアンケートを募りました。当企画における「人文書」とは、「哲学・思想、心理、宗教、歴史、社会、教育学、批評・評論」のジャンルに該当する書籍（文庫・新書も可）としております。
◆紀伊國屋じんぶん大賞2018フェアは、2019年2月1日（金）より開催予定です。選考委員および読者からの推薦コメントを掲載した小冊子を店頭にて配布いたします。詳細は各店舗にお問い合わせください。
もともと人文書を顕彰する賞はけして多くないなか、読者投票が元になっている賞としては他に類をみない賞です。以下、発表されたベスト30をご紹介します。リンク先でブクログユーザーのコメントも確認できますので、ぜひあわせてご覧くださいね。
紀伊國屋じんぶん大賞 ベスト10発表！
紀伊國屋じんぶん大賞1位 『誰のために法は生まれた』木庭顕（朝日出版社）
追いつめられた、たった一人を守るもの。それが法とデモクラシーの基―。ローマ法の研究者である著者が、古い映画やギリシャ・ローマの戯曲を題材に、デモクラシーが目指すもの、占有の原理について中高生に講義した記録。各新聞書評などでも評価を受けた本作が、じんぶん大賞に輝きました。なお、発行元の朝日出版社は、これまでに國分功一郎さん『暇と退屈の倫理学』、岸政彦さん『断片的なものの社会学』、加藤陽子さん『戦争まで』に続き、本書で4度目のじんぶん大賞受賞作を世に出したことになります。
紀伊國屋じんぶん大賞2位 『歴史修正主義とサブカルチャー』倉橋耕平（青弓社）
ヘイトスピーチやフェイク・ニュースがあふれ「右傾化」が懸念される日本において、歴史修正主義（歴史否定論）批判は、支持者たちになぜ届かないのか。彼らの思考には、いかなる整合性が保たれているのか。保守、右派を学術的に考察する一冊です。
紀伊國屋じんぶん大賞3位 『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』吉川浩満（河出書房新社）
急速に発展した科学技術によって、従来の人間観は揺らいでいる。人間はどこから来て、どこへ行くのか。そして何者なのか。人間に関わる新しい科学と技術についての対談・評論集が3位になりました。
紀伊國屋じんぶん大賞4位 『新復興論』小松理虔（ゲンロン）
震災から七年、復興は地域の衰退を加速しただけだった。復興のなかで立ち現れてくる様々な矛盾と、どう相対するか？第18回大佛次郎論壇賞を受賞した『新復興論』が、じんぶん大賞でも上位ランクインです！
紀伊國屋じんぶん大賞5位 『眼がスクリーンになるとき ゼロから読むドゥルーズ「シネマ」』福尾匠（フィルムアート社）
ドゥルーズの主著とされ、彼の哲学、そして映画批評が綴られる『シネマ』。本書は『シネマ』と相対し、「見る」ことと「読む」ことの困難、実践、そして創造と復権を同時に実現しようと試みるもの。26歳の俊英デビュー作がじんぶん大賞ランクイン！
紀伊國屋じんぶん大賞6位 『どもる体』伊藤亜紗（医学書院）
吃音とは、言葉が肉体に拒否されている状態。しかし、なぜ歌っているときにはどもらないのか。そしてなぜ独り言だとどもらないのか。医学的・心理的アプローチとは異なる視点によって、吃音を論じ、その謎を解こうとする身体論。メディアで多数紹介された注目書が6位にランクイン。
紀伊國屋じんぶん大賞7位 『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』奥野克巳（亜紀書房）
ボルネオ島にフィールドワークを行い、そこに住まう狩猟採集民「プナン」と接するなかで見えてきたことは？私たちが考えている豊かさ、自由、幸せが、別種の価値によって問い直されることになる一冊です。
紀伊國屋じんぶん大賞8位 『未来をはじめる「人と一緒にいること」の政治学』宇野重規（東京大学出版会）
日本を代表する政治学者、宇野重規さんが東京・豊島丘女子学園で行った講義を書籍化。変わりゆく世界と〈私〉、働くこと、生きること、民主主義や選挙の意義。やわらかな語り口で、多くのことを考えるきっかけになる書です。
紀伊國屋じんぶん大賞9位 『エコラリアス 言語の忘却について』ダニエル・ヘラー=ローゼン（みすず書房）
子どもは言葉を覚えるとき、それ以前に用い、発話していた赤ちゃん語を忘れてしまう。言葉はいつも「消えてしまった言葉のエコー」。忘却は言語の運動性であり、創造の源にもなることを論じた一冊。刺激的な試論が、9位にランクインしました。
紀伊國屋じんぶん大賞10位 『文字と組織の世界史 新しい「比較文明史」のスケッチ』鈴木董（山川出版社）
諸々の文明を「文字世界」として、歴史上の巨大帝国を「支配組織」としてそれぞれ捉え、文字と組織の双方から人類史を読み解こうとする野心作。このスケールの大きい作品が日本の著者によって書かれたことにも注目です。
紀伊國屋じんぶん大賞11～30位
紀伊國屋じんぶん大賞11位 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ（河出書房新社）
紀伊國屋じんぶん大賞12位 『評伝 小室直樹 学問と酒と猫を愛した過激な天才』村上篤直（ミネルヴァ書房）
紀伊國屋じんぶん大賞13位 『知性は死なない 平成の鬱をこえて』與那覇潤（文藝春秋）
紀伊國屋じんぶん大賞14位 『意味がない無意味』千葉雅也（河出書房新社）
紀伊國屋じんぶん大賞15位 『「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義』シェリー・ケーガン（文響社）
紀伊國屋じんぶん大賞16位 『原民喜 死と愛と孤独の肖像』梯久美子（岩波書店）
紀伊國屋じんぶん大賞17位 『はじめての沖縄』岸政彦（新曜社）
紀伊國屋じんぶん大賞18位 『不道徳お母さん講座 私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか』堀越英美（河出書房新社）
紀伊國屋じんぶん大賞19位 『先史学者プラトン 紀元前一万年－五千年の神話と考古学』メアリー・セットガスト（朝日出版社）
紀伊國屋じんぶん大賞20位 『公開性の根源 秘密政治の系譜学』大竹弘二（太田出版）
紀伊國屋じんぶん大賞21位 『なぜ世界は存在しないのか』マルクス・ガブリエル（講談社）
紀伊國屋じんぶん大賞22位 『制作へ 上妻世海初期論考集』上妻世海（オーバーキャスト）
紀伊國屋じんぶん大賞23位 『トマス・アクィナス 理性と神秘』山本芳久（岩波書店）
紀伊國屋じんぶん大賞24位 『「コミュ障」の社会学』貴戸理恵（青土社）
紀伊國屋じんぶん大賞25位 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子（東洋経済新報社）
紀伊國屋じんぶん大賞26位 『超越と実存』南直哉（新潮社）
紀伊國屋じんぶん大賞27位 『労働者のための漫画の描き方教室』川崎昌平（春秋社）
紀伊國屋じんぶん大賞28位 『説教したがる男たち』レベッカ・ソルニット（左右社）
紀伊國屋じんぶん大賞29位 『絶望する勇気 グローバル資本主義・原理主義・ポピュリズム』スラヴォイ・ジジェク（青土社）
紀伊國屋じんぶん大賞30位 『社会制作の方法 社会は社会を創る、でもいかにして？』北田暁大（勁草書房）
紀伊國屋じんぶん大賞にランキングした著者・出版社、関係者のみなさまおめでとうございます。「紀伊國屋じんぶん大賞2018」フェアは2019年2月1日より開催。30位までの推薦コメントを掲載した小冊子も配布予定とのこと。コメントが楽しみですね。
関連リンク
「紀伊國屋じんぶん大賞2018」発表！1位は國分功一郎さん『中動態の世界』
紀伊國屋じんぶん大賞 事務局 Twitter
第1回 発表！！紀伊國屋じんぶん大賞2010
第2回 発表！！「紀伊國屋じんぶん大賞2011――読者がえらぶ人文書ベストブック」
第3回 発表！！紀伊國屋じんぶん大賞2012──読者と選ぶ人文書ベスト30
第4回 発表！！紀伊國屋じんぶん大賞2013──読者と選ぶ人文書ベスト30
第5回 発表！！紀伊國屋じんぶん大賞2015 ──読者と選ぶ人文書ベスト30
第6回 発表！！紀伊國屋じんぶん大賞2016――読者と選ぶ人文書ベスト30
第7回 発表！！紀伊國屋じんぶん大賞2017──読者と選ぶ人文書ベスト30
第8回 発表！！紀伊國屋じんぶん大賞2018――読者と選ぶ人文書ベスト30
