【おくやみ】加藤廣さん逝去―小泉純一郎さんの愛読書『信長の棺』著者

加藤廣さん逝去、おくやみ―代表作・オススメ作『信長の棺』

4月7日、『信長の棺』で知られる作家、加藤廣さんが循環器不全のため亡くなりました。87歳でした。ご冥福をお祈りします。

読売新聞「高齢の新人作家、加藤廣さん死去…『信長の棺』」(2018年4月16日)

経歴:加藤 廣(かとう ひろし、1930年6月27日- 2018年4月7日)

東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、中小企業金融公庫(現日本政策金融公庫)に勤務し、調査部長などを歴任。山一証券経済研究所顧問、埼玉大学経済学部講師を経て経営コンサルタントとして独立し、ビジネス書執筆や講演活動を行う。のちに大阪経済大学経営学部客員教授も務めた。

50歳頃から、人生を結晶させたものを残したいと考えるようになり、歴史関係の資料類を収集。2005年、構想15年をかけた『信長の棺』で作家デビュー。当時の小泉純一郎首相の愛読書との報道があって一気にベストセラーになり、高齢新人作家としても話題になった。『秀吉の枷』『明智左馬助の恋』を著し、『信長の棺』を含めて本能寺3部作と称される。また『水軍遙かなり』、『利休の闇』など近年まで次々と新作を発表していた。その一方で『戦国武将の辞世 遺言に秘められた真実』、『意にかなう人生 心と懐を豊かにする16講』など、歴史エッセイや教養書も刊行を続けていた。

加藤廣さんの作品一覧

加藤廣さん代表作『信長の棺』―小泉純一郎総理の愛読書、構想15年のデビュー作にして250万部発行のベストセラー

加藤廣さん『信長の棺〈上〉 (文春文庫)
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加藤廣さん『信長の棺〈下〉 (文春文庫)
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明智光秀、謀反。織田信長の本拠地、安土城でその知らせを聞いた太田牛一は、生前の信長の密命によって西へ向かう。しかし佐久間軍に捕えられ幽閉。10カ月後、羽柴秀吉から伝記を執筆することを条件に牛一は解放される。のちに『信長公記』を記すことになる牛一は、信長暗殺の謎を追う。信長の遺骸はどうなったのか?なぜ本能寺から消えたのか―?

日本経済新聞に連載され、2005年5月に単行本刊行。第87-89代内閣総理大臣小泉純一郎さんの愛読書として紹介され、大きな話題となりました。そして2008年に文庫化されましたが、単行本と文庫本両者合わせて、250万部位売れたといわれる大ベストセラーになっています。2006年にスペシャルテレビドラマ化、九代目松本幸四郎さん(現・ニ代目 松本白鸚さん)主演でテレビ朝日系列で放送されました。

資料を徹底的に読み込みながら、独自の解釈を散りばめている『信長の棺』。歴史小説・歴史ミステリとして、歴史好きをうならせる作品です。また、同作における太田牛一の目を通して織田信長、豊臣秀吉を描くアプローチは、後の作品にも見られます。たとえば『水軍遙かなり』は九鬼守隆を通じて織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の虚像と実像を描きたかった、と作者があとがきで直接述べています。『信長の棺』はデビュー作にして、加藤廣さんの関心の原点があるのかもしれません。


加藤廣さんは歴史小説に留まらず多くの作品を残しました。加藤廣さんの作品が、様々なかたちで読まれることを願ってやみません。

参考リンク

ZAKZAK「【加藤廣】『信長の棺』で75歳衝撃デビュー、話題作を書き続け86歳 次作はこれまで避けてきた恋愛小説」(2017年2月1日)