【おくやみ】作家:加古里子さん逝去―『からすのパンやさん』「だるまちゃん」シリーズ

絵本作家、加古里子さん(かこさとしさん)逝去、代表作、おすすめ作の紹介

5月2日、『だるまちゃん』シリーズで知られる作家・絵本作家、加古里子さん(かこ さとし、本名:中島哲)が慢性腎不全で亡くなりました。92歳でした。ご冥福をお祈りします。

(2018年5月14日最終更新)

毎日新聞「訃報 加古里子さん92歳=絵本作家『だるまちゃん」』(2018年5月7日)

経歴:加古里子(かこ さとし、1926年3月31日 – 2018年5月2日)

福井県越前市(旧・武生市)生まれ。8歳から東京都板橋区で育つ。成蹊高等学校(旧制)を経て東京大学工学部応用化学科卒業後、昭和電工の研究所に勤める。工学博士、技術士の資格を取得。勤務のかたわら困難を抱えた人々に寄り添うセツルメント活動、児童向け人形劇、紙芝居などの活動に従事自作の紙芝居が福音館書店の松居直の目に留まり、59年に絵本『だむのおじさんたち』でデビュー。

1973年に会社を退職後、ニュースキャスター、大学講師、海外での教育実践活動に励みながら、物語絵本、知識絵本、童話、紙芝居など非常に多くの作品を記した。特に自然科学の専門知識を活かした「科学絵本」の開拓者・先駆者となる。2008年「絵本作家、児童文学者としてのユニークな活動と、子供の遊びについての資料集成『伝承遊び考』全四巻の完成」により菊池寛賞、2009年『伝承遊び考』で日本児童文学学会特別賞をそれぞれ受賞。

50代で緑内障を患って以来左目はほとんど見えず、近年は持病の腰痛もあって車椅子生活が続いたが、創作意欲は全く衰えず、1月には「だるまちゃん」シリーズの新作を刊行。亡くなる前日まで、届いたファンレターの読み上げを聞いていたという。

加古里子さんの作品一覧

加古里子(かこさとし)さん代表作・おすすめ本7選 あらゆる親子のための本

非常に多くの作品を記していますが、その中からとりわけ著名な作品をご紹介します。

加古里子さん代表作1 『からすのパンやさん』―美味しそうなパンが沢山出てくる児童絵本

1973年に偕成社から発売されました。4羽の赤ちゃんが生まれたからすのパン屋の家での出来事を描く作品です。

加古里子さん『からすのパンやさん (かこさとしおはなしのほん (7))
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カラスの町「いずみがもり」にある、1軒の売れないパン屋さん。お父さんお母さん、4羽の子ガラス、家族みんなで、楽しい形のパンをどっさり焼いた。パンを買いにやってきたカラスの子ども、おじいさん、おばあさん、そしてなぜか消防自動車、救急車、テレビのカメラマンまでやってきて森は大騒ぎに…。

この本はもともと、加古さんが先輩の結婚祝いとしてまとめた手作りの絵本があり、それを元に仕上げられたものです。また、モイセーエフ舞踊団の演目「パルチザン」に「個々の生きた人物描写と全体への総合化の大事なこと」を学び、それをからすの一羽一羽に試みた、ということが「あとがき」で語られています。

その後、2013年に続編の『からすのおかしやさん』『からすのやおやさん』『からすのてんぷらやさん』『からすのそばやさん』といった一連のシリーズが誕生しました。

加古里子さん代表作2 『だるまちゃんとてんぐちゃん』―民族性に富んだ名作絵本にして、児童文学の金字塔

1967年に福音館書店から発売されました。だるまちゃんが大好きな友だち:てんぐちゃんと同じ持ち物に次々あこがれてしまう、愉快な物語です。

加古里子さん『だるまちゃんとてんぐちゃん
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「だるまちゃん」は、友だちの「てんぐちゃん」のうちわや帽子などちょっと変わった持ち物が欲しくてたまらない。お父さんの持ってきてくれるものには納得がいかず、自分で工夫しながら手に入れていくだるまちゃん。最後には、てんぐちゃんの長い鼻が欲しくなってしまうのだが…。

「あとがき」によれば加古さんは戦後、無国籍の児童文学が多い中で、日本的な民族性に富んだものを作りたい、と思っていたそう。そして親しんでいた郷土玩具のキャラクターから題材を選び、達磨と天狗の幼児形を日本の子供の代表として描いたのだそうです。

2018年まで続く大人気シリーズとなりました。2018年1月には『だるまちゃんとかまどんちゃん』『だるまちゃんとはやたちゃん』『だるまちゃんとキジムナちゃん』といった新作も発売されていました。

加古里子さん代表作3 『宇宙』ほか科学絵本シリーズ―専門知識を活かした子供向け科学絵本

1960年代から加古さんが手がけてきた科学絵本、「福音館の科学」シリーズは、啓蒙的な内容とともに広く知られ、愛され、子供たちの知識を支えてきました。

加古里子さん『宇宙 (福音館の科学シリーズ)
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宇宙はどれほど広く、その果てはどうなっているのか?巨大な宇宙の広がりをテーマに、ノミのジャンプからはじまり、「走る」「飛ぶ」という事象を物理学的にきわめてやさしく紹介し、望遠鏡やロケットの歴史、星の進化とその一生、宇宙有限論までを紹介してゆく一冊。

他にも『地球』『海』など多くの作品が刊行されています。40年近く前の作品でやや内容に古いところがあると指摘されもしますが、穏やかで平易な語り口からスケールの大きい話へと繋がっていく語り口が、非常に見事な名作シリーズです。


その他にも、とても多くの著作を加古里子さんは描いています。様々なかたちで、多くの子供たち、大人たちに読まれることを願ってやみません。

参考リンク

「加古里子(かこさとし)さん代表作・おすすめ本7選 あらゆる親子のための本」
かこさとしさん公式webサイト
越前市「かこさとし ふるさと絵本館「石石」(らく)」
加古里子(かこさとし)さん代表作・おすすめ本7選 あらゆる親子のための本