【おくやみ】第146回直木賞受賞者 葉室麟さん逝去

代表作『蜩ノ記』 第146回直木賞受賞者 葉室麟さん逝去

2017年12月23日、第146回直木三十五賞を受賞した小説家、葉室麟(はむろ・りん)さんが亡くなったことが報じられました。享年、66歳。心からご冥福をお祈りいたします。

葉室麟(はむろ・りん)さん(1951年1月25日 – 2017年12月23日)

福岡県北九州市小倉生まれ。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て小説家に。2005年に短編「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞受賞(のち単行本化)、2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。

本年も多くの作品を著し、ますますの活躍が期待されていました。来年映画公開の「散り椿」を控えるさなかでの訃報です。

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葉室麟さん代表作:『蜩ノ記』『鬼神の如く黒田叛臣伝―』

つねに堅実かつ高い評価を受ける一方で、2005年に作品を出してから今に至るまでに50作を超える単行本を著した多作家でもあります。多くの作品の中から、2作をご紹介します。

まず、直木賞受賞作の『蜩ノ記』。葉室さんは2009年から4年連続で直木賞の候補になり、毎年評価を高めていきながら、5度目にして受賞しました。本作は2012年にNHK-FM放送「青春アドベンチャー」にてラジオドラマ化されたのち、2014年10月4日に映画化。役所広司さんと岡田准一さんの共演が話題に。ブクログでも非常に高い評価をユーザーから受けている一作です。


「アサヒ・コム」直木賞受賞時の会見(2012年1月17日公開)

直木賞受賞作ということでかなり期待値高く読み始めましたが、その期待に充分答えてくれる作品でした。切腹の日が定められ山村に幽閉されている秋谷と、城内で不祥事を起こし秋谷の監視のため山村に遣わされた庄三郎。命の刻限が迫るにもかかわらず武士として自らを律し生きる秋谷を間近に、その切腹を命じられた罪過は誤りだとの確信を持ち、庄三郎は自ら調べ始めるが…。文中、源吉と慶仙和尚の言葉が深い。その言葉だけを抜き書きしておこうかと思う位に重みのある言葉が並ぶ。武士とは、武士の矜恃とはこのようなものかと心に迫る作品。

minakovskyさんのレビュー

また、第20回司馬遼太郎賞を受賞した『鬼神の如く─黒田叛臣伝』は江戸時代の福岡藩黒田家「黒田騒動」をテーマにした歴史小説。司馬遼太郎の読者であった葉室さんは受賞について「夢のようです」と語りました。

「謀反の疑いあり」――黒田家家老・栗山大膳は、虎視眈々と大名家の取り潰しを狙う幕府の次なる標的は自藩だと悟りながら、主君を訴えた。九州の覇権を狙う細川家、ルソン出兵を志す将軍・家光、そして藩主・黒田忠之に命を追われるなか、不敵に振る舞い続ける大膳の真意とは? 黒田騒動を舞台にまことの忠義と武士の一徹を描く本格歴史長篇。

新潮社「葉室麟 『鬼神の如く―黒田叛臣伝―』」

多作だった葉室麟さんは、これから非常に多くの作品が文庫化されていくことでしょう。来年は岡田准一と西島秀俊さん主演による映画化作、『散り椿』が控えています。葉室さんの作品が読まれつづけることを願ってやみません。

参考リンク

毎日新聞「評伝 葉室麟さん死去 遅咲き、陰と脇見つめ 久留米拠点、地方の視点で創作」(2017年12月24日)
直木賞のすべて「受賞作家の群像 葉室麟」
祥伝社「蜩ノ記 葉室麟」
新潮社「葉室麟 『鬼神の如く―黒田叛臣伝―』」
新刊JP「『鬼神の如く―黒田叛臣伝―』著者 葉室麟さん bestseller’s interview 第72回」
毎日新聞「混迷の時代こそ司馬文学を 贈賞式で葉室麟さん 歴史シンポで黒田如水論も 大阪」(2017年3月26日)
映画「散り椿」公式サイト