本から始まる雑談に花咲かせー『BOOK BAR お好みの本、あります。』

『BOOK BAR お好みの本、あります』

10年続くJ-WAVEの人気ラジオ番組「BOOK BAR」が待望の書籍化を果たし、ブクログでも人気が高まっています。

杏、大倉眞一郎『BOOK BAR お好みの本、あります。』
杏、大倉眞一郎『BOOK BAR お好みの本、あります。』

「BOOK BAR」は2008年に始まり、六本木のバーで杏さんと大倉眞一郎さんが「本から始まる様々な四方山話」を広げていく番組です。10年のなかで、杏さんと大倉眞一郎さんが紹介しあった本の数は、なんと1000冊を超えるそう!その中から厳選された50冊の四方山話が一冊にまとまり、2月27日に書籍化されたのが『BOOK BAR お好みの本、あります。』です。

自他ともに認める「歴女」、杏さんの歴史小説語りを楽しむ

杏さんといえば「2009 ユーキャン新語・流行語大賞」トップテン「歴女」授賞式に登場するなど、自他共に認める歴史好きの女性です。

「BOOK BAR」でも歴史小説についてその豊かな知識を披露しています。『BOOK BAR お好みの本、あります。』収録一作目は、『幕末新選組』でした。この本の紹介は、流行語大賞受賞前、2008年の番組開始まもなく収録されたものです。

池波正太郎『幕末新撰組』
池波正太郎『幕末新撰組』

10代の頃から関連本を何年もかけて集めていたそうで、「自宅の本棚には新撰組および幕末の本がワンコーナーあります」(p.15)とのこと。「歴史小説の面白みって、見ていないのにわかるとか、知らないのに知っているという、あの感覚ですよね。自分の中に流れるものをなんとなく感じるのが不思議です」(p.18)。本をめぐる対話のなかで、杏さん本人のプライベートや、価値観が滲み出てくる箇所が非常に魅力的です。

他にも杏さんは、半藤一利さんの『幕末史』、杉本鉞子『武士の娘』、佐藤憲一さんの『伊達政宗の手紙』など、多くの歴史本を紹介しています。杏さんの知識にも驚かされますが、一冊の本を通じて歴史にまつわる魅力的な四方山話が続いていくところが、番組の面白さであり、いわばバーの楽しみなのかもしれません。

活字中毒の人、大倉眞一郎さんの「ハードな本」の紹介!

対して、大倉眞一郎さんは放送開始第一回でトーマス・マン『魔の山』、二回目で中上健次の『異族』を持ってきたことで、「この辺からディレクターの顔が少しずつ変わってきました」(p.209)という逸話があるほどの博覧強記ぶり。ご本人いわく、「ジャンルを決めないで読むタイプ」(p.210)だそう。

そんな中で、大倉さんは多くの翻訳本を紹介してきました。カズオ・イシグロさんがまだ日本では読書人以外に広く知られていないなか、2010年に『わたしを離さないで』について熱く語っています。「この本は『小説好きの方のための小説』です」「心が荒野になったような、あまりの空虚感の中に、ぽんと置かれたような、そんな気分になる本ですね」(p.72)。

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

そしてカズオ・イシグロさんの話がしばらく続いたあと、脱線して「小説という形態が何となく変わりつつあるなという印象がある」(p.74)という大倉さんの話から、昔日本では私小説が主流だったこと、そして小説がノンジャンルになってきたことから評価の仕方が変わったことへと話が変わります。「だからこそ、BOOK BARがあるのかもしれませんね。一冊、一冊を取り上げていく、そういう番組です」(p75.)という杏さんの合いの手が入るのが見事です。

こうして、話が次から次へと脱線していくことも、「本から始まる様々な四方山話」の楽しみかもしれません。なお、全てラジオで聴いているという番組ファンの方でも、杏さん、大倉さん二人の巻末スペシャル対談や、20ページ超の「BOOK BAR」紹介書籍リストが収録されています!


(2月23日、公式Twitterからの引用。第1回放送は終了しています)

興味のある方は、ぜひ『BOOK BAR お好みの本、あります。』を手にとってみてくださいね。

関連リンク

「BOOK BAR」公式Twitter
「BOOK BAR」公式ブログ