【おくやみ】芥川賞作家、赤染晶子さん逝去─代表作『乙女の密告』

芥川賞作家赤染晶子さんおくやみ、『乙女の密告』

2017年9月18日、第143回芥川龍之介賞受賞作家の赤染晶子(あかぞめ・あきこ)さんが急性肺炎によって亡くなっていたことを京都新聞が報じました。享年、42歳。心からご冥福をお祈りいたします。

赤染晶子(あかぞめ・あきこ)さん(1974年10月31日 – 2017年9月18日)

京都府舞鶴市生まれ。京都外国語大学外国語学部ドイツ語学科卒業、北海道大学大学院文学研究科ドイツ文学専攻修士課程修了、同博士課程中退。2004年「初子さん」にて第99回文学界新人賞を受賞し作家デビュー。10年「乙女の密告」(『新潮』2010年6月号収録)にて 第143回芥川龍之介賞を受賞。「赤染晶子」は筆名で、本名は「瀬野晶子」(せの・あきこ)。

代表作 芥川龍之介賞受賞作『乙女の密告』(新潮文庫)

『乙女の密告』は、京都の女子学生たちが『アンネの日記』の独語訳の暗唱に関わりつつ、アンネ・フランクに近づいていく様子を描いた短編です。アンネを密告したのは誰か、というテーマを描いたことに大きな賛辞がよせられていました。著者の京都外国語大学在学経験も活かされた作品です。

受賞作として単行本が発行されたのち、2012年に文庫化されています。世界観に対してブクログでも賛否両論寄せられていますが、歴史上の偉人となったアンネ・フランクと現代の女子大生とを結びつける物語に、大きな賞賛を寄せるかたも多い作品でした。

2010年上期:第143回芥川賞受賞作品。言葉遣いや文章に、くすっとするユーモアがあって、とても読みやすい本だと思います。外国語大学のスピーチ・ゼミを舞台に、コンテストを目指す女子大生達が、噂話で他者を排除するゴタゴタと、その標的になることを怖れ、悩み、自らのアイデンティティに深く入り込んでいく主人公・みか子の物語。コンテスト課題である、みか子の大好きなアンネ・フランクの手記『ヘト アハテルハイス』の暗唱が、物語の大きなキーワードになっています。アンネのユダヤ人であることに対する苦悩と表明が、そのままみか子の心の動きと重なって…うーん、唸ってしまいます。

sui108さんのレビュー

赤染晶子さんの作品

発売されている著書は多くありません。『うつつ・うつら』は第99回文学界新人賞「初子さん」を収録。『WANTED!!かい人21面相』は芥川賞受賞後の第一作目で、塩田武士さんのヒット作『罪の声』に先駆けグリコ・森永事件を題材にした著作です。ただし、2冊とも単行本のみの発売で、現在入手が難しくなっています。

なお、赤染晶子さんはかつて大学院でベルトルト・ブレヒトを研究しており、その時の本名名義の紀要論文がWeb上で閲覧できます。

「アンティゴネー・モチーフ-ブレヒトの『アンティゴネーモデル1948』を中心に-」(北海道大学ドイツ語学・文学研究会 『独語独文学研究年報』No.27、pp.14-24、2000)

赤染晶子さんのおすすめランキング

これからも赤染晶子さんの著作が、読まれつづけることを願ってやみません。

参考リンク

赤染晶子さん死去 芥川賞「乙女の密告」、42歳(京都新聞 2017年12月10日)
「芥川賞のすべて・のようなもの」受賞作候補作一覧 第143回 平成22年/2010年上半期