12月10日、「三億円事件」から50年。あの事件を知るための関連作

三億円事件の犯人に迫る作品『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』『1968 三億円事件』含め5作

こんにちは、ブクログ通信です。

1968年12月10日、約3億円を積んだ現金輸送車が偽白バイ警察官に奪われた「三億円事件」から、ちょうど50年が経ちました。このタイミングで、小説投稿サイト「小説家になろう」で8月8日から全72回にわたり掲載された『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』、そして人気作家らの競作アンソロジー『1968 三億円事件』が相次いで書籍化されました。

今回のブクログ通信では、新刊『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』『1968 三億円事件』の二冊を紹介しながら、三億円事件を題材にした数々の作品をご紹介します。

『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』

白田さん『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。
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犯人による真相告白とされるものがネットの小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿されて以降、本当の犯人が書いたものなのか、それとも、という議論がネット上で起こり、大きな話題となりました。そして12月7日に書店に並んでから、ニュースにも取り上げられて、売れ行きを伸ばしています。

事件を知らない世代の人たちにとっては、見たことのない昭和の風景、その時代の青春・恋愛が描かれていることから、好評を博しているそうです。三億円事件を知らない人でも楽しめる作品になっているということかもしれませんね。年末年始、平成だけでなく昭和を振りかえるための一冊として、いかがでしょうか。

50年の区切りで発売されたアンソロジー、『1968 三億円事件』

日本推理作家協会・編さん『1968 三億円事件 (幻冬舎文庫)
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『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』以外にも、事件から50年の区切りとして発売された本があります。

手に取りやすい文庫版として発刊されたアンソロジー『1968 三億円事件』は、下村敦史さん、呉勝浩さん、池田久輝さん、織守きょうやさん、今野敏さんによる短編は、どれも読み応えがあり、戦後最大の事件がさまざまな作家にインスピレーションを与え続けていることがよくわかります。著名作家らによる骨太な作品集ですから、『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』などと読み比べてみるのも楽しそうですね。

三億円事件を題材にした数々の名作

三億円事件発生から50年の間に、事件を題材にした数々の作品が刊行されました。その中からブクログでも人気の高いオススメ作をご紹介します。

15年前に自殺とされた女性教師の墜落死。時効まであとわずかという日に、それは殺人だった、というタレ込みが警察署に入る。その時、学校で期末テスト奪取を計画した高校生たちが校舎内に潜入していた。そこに絡んでくるのは、戦後最大の謎、三億円事件!

人気ミステリ作家・横山秀夫さんのデビュー作。1991年に第9回「サントリーミステリー大賞」佳作に選ばれました。刊行されたのは2005年です。2008年9月21日はWOWOWで実写ドラマ化されました。ブクログでも非常に高い評価を得ており、横山秀夫さん幻の名作、というコメントも。

西村京太郎さんによる長編推理小説で、名探偵が結集するパロディ「名探偵シリーズ」の第1作にあたります。なんとエラリー・クイーン、メグレ元警部、エルキュール・ポワロ、明智小五郎が、再現された三億円事件と対決し、模倣犯を追いながら真相に迫ろうとする驚きの一作。往年の名探偵たちは事件の謎を解けるのか!?

刊行されたのは1971年。2006年講談社文庫で新版が刊行されましたが、いまは新刊で入手することが難しくなっており、残念です。古書店で探すか、電子書籍をオススメします。

新宿のジャズ喫茶で出会ったN、T、ヨーコの3人。彼らはTが書いた映画脚本「アンラッキーヤングメン」をもとに、現金輸送車を襲撃。無事計画は成功し、3億円を手にした彼らは―。

2004~2006年に『小説野性時代』で連載されていた、原作:大塚英志さん、作画:藤原カムイさんによる共作コミックです。三億円事件のみならず、東大安田講堂事件、三島事件、連合赤軍あさま山荘事件など数々の事件を縫うように展開される物語が、読者を昭和の世界に引き込みます。三億円事件、学生闘争、そして若者たちの青春があますことなく描かれた作品です。こちらも新刊入手が困難ですが、電子書籍版で読んでみてくださいね。

初恋

著者 : 中原みすず

リトルモア

発売日 : 2002年2月15日

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三億円強奪事件実行犯は、実は女子高生だった!孤独な少女はジャズ喫茶で仲間と知り合い、学生運動盛んな1960年代の雰囲気に呑まれながら、共犯計画に手を貸した―。

2002年に刊行された本作は、2006年に宮崎あおいさん主演で映画化されました。三億円事件を題材にしながらも、当時の若者たちの雰囲気がしのばれる青春映画として人気を博しました。宮崎あおいさんの勢いを感じる映画ですが、原作もいまなお根強い人気を誇る作品です。


これら6作以外にも、三億円事件を題材にした作品は数多くあります。ただ、新刊で入手可能なものは少ないのが残念です。事件に興味があるかたは、ぜひ古書店や電子書籍で関連作を探してみてくださいね。

参考リンク

Pebbles Books Twitter
ポプラ社『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』
BLOGOS「アナタは本人なんですか?自称『三億円事件の犯人』に直接取材してみた」(2018年10月20日)