「現場に熱を生み出すための事例集を」川上徹也さん『物を売るバカ2』刊行記念インタビュー

川上徹也さん『物を売るバカ2』発売記念ショートインタビュー

こんにちは、ブクログ通信です。

「物語で売る」ストーリーブランディングという手法の第一人者、コピーライター川上徹也さんの新刊『物を売るバカ2 感情を揺さぶる7つの売り方』が10月6日に発売されました!大ヒットとなった前作『物を売るバカ』の続編にあたり、「感情を揺さぶる売り方」の優れた実例集となっております。

今回、ブクログ通信で川上さんにショートインタビューを行いました。そして、『物を売るバカ2』発売記念プレゼント企画も行います!くわしくはインタビュー末尾をご覧くださいませ。

川上徹也(かわかみ・てつや)さんプロフィール

コピーライター。湘南ストーリーブランディング研究所代表。大阪大学人間科学部卒業後、大手広告会社勤務を経て独立。東京コピーライターズクラブ新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴多数。特に「経営理念」「企業スローガン」など会社の旗印になる「川上コピー」を得意とする。「物語で売る」という手法を体系化し「ストーリーブランディング」と名づけた第一人者としても知られている。著書は『物を売るバカ』『1行バカ売れ』『「コト消費」の嘘』(いずれも角川新書)など。海外にも多数翻訳されている。

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『物を売るバカ2』は、現場に「熱」を生み出すための本

―前著『物を売るバカ』は大ヒット作でしたね。物語で売るための販売促進「ストーリーブランディング」について多くの事例をもとに示し、多くの読者を獲得した一冊でした。

『物を売るバカ』は、たくさんの人に読んでいただきました。消費者が心から欲しいものがない時代、「物を売らずに物語を売る」ことで、生活者の「欲しい気持ち」を沸き上がらせようという内容に反響があったんです。

―今回の『物を売るバカ2』はその続編にあたるわけですね。

そうです。前著から4年半が経ちました。けれども、少なからず、こんな意見をいただいたんです。

「理論にしたがって『物語』を構築しようとしたが、すぐに結果が出なかったので止めてしまった」と。

―そんなご意見があったのですか。

なぜうまくいかないのか?それは現場に「熱」が足りないからだと考えました。だから、続編を出版することにしたんです。

―「熱」、ですか。どういうことでしょうか。

たとえば、大きな鉄板で焼きそばを作る時のことを思い浮かべてください。どんなにいい具材を集めたところで、鉄板が温まってなかったらおいしい焼きそばはできません。つまり、理屈は通っていても熱がないと結果に繋がらないんですよ。

―なるほど。

そこで実践篇的な位置づけで、「現場に熱を生み出す感情を揺さぶる売り方」の事例をひたすら紹介する本を書こうと思いついたんですね。難しい理屈は書いてないけど、現場に熱を生み出す参考になる本。数多くの事例が書いてあることで、自分もやってみようかなと思わせてくれる本。それでいて表面的な施策だけでなく、バックストーリーもある程度わかり、読み物として読んでもおもしろい本。なにより「物を売るバカ」にならないための「優秀なアンチョコ」、お手軽な参考書になるような本です。

『物を売るバカ2』、前作との相補的な関係

八文字屋書店 SELVA店
八文字屋書店 SELVA店

―大変よく分かりました。

やはり現場に「熱」がないと、いくらいいストーリーを組み立てても「絵に描いた餅」になってしまうということです。そういう意味で、あえて事例をこれでもかと紹介することで、「新しい売り方にチャレンジしてみようと思う気になる本」を目指しました。タイトルは悩みましたが、ストレートに続編であることがわかる『物を売るバカ2』にしました。

―前著と本著『物を売るバカ2』、両方とも読んだことがない方がいらっしゃるかもしれません。そういう方は、どちらから先に読んだほうがよいでしょうか。

今、自分の店や会社に活気がないと思っている方は、まず『物を売るバカ2』から読んでみてください。そしてうまくいく場合もいかない場合もあるでしょうけど、新しい売り方にチャレンジしてみてほしいです。そして現場に「熱」が生まれてきたと感じたら、前著に戻ってストーリーを組み立ててほしいと思います。

―なるほど。この2冊は、相補的な関係にもなっているのですね。『物を売るバカ2』では、見方を変えて売っているものの価値を再定義、再提案することでの成功例がさまざまな形で紹介されていると思えます。72にわたる大変多くの事例がありました。その中で、川上さんが特に強い関心を持ったケースはありますか?

破棄寸前の1万3000個のキャベツが、ひとつのアイデアと言葉でみんなハッピーになったというのは示唆にとんでいると思います。一般的には労働と思われていることが、一方では「お金」を出してでも体験したいことになる。これはいろいろな場面で応用できそうですよね。「小松菜にヘヴィメタルを聴かせたら何かが起こるかも」と育て、味も栄養分も変わらないけどそのまま売り出して飛ぶように売れたメタル小松菜や、見かけるだけでご利益があるという噂に乗じた四つ葉タクシーのように、まったく同じ商品が新しい視点を入れることで新しい価値を生み出すというのも参考になると思います。

「熱」を伝えるためのSNS、そしてスマホ活用を

本のがんこ堂 アクア店
本のがんこ堂 アクア店

―それにしても、挙げられている多くの事例を見ていると、インターネットやSNSに恩恵をうけた成功例がかなり紹介されているように思いました。前著でも示唆されたとおり、物語発信はネット・SNSが不可欠なものになりつつあるとも。

当然、不可欠になりつつあると思います。

―「エモ売り7」ではインスタ映えの項目も挙げられていますものね。

ただし、SNSで爆発的に話題になっていても、それを知らない人たちがいる。というよりそちらの方がマスかもしれない。ということも忘れてはいけないとも思います。

―SNSを考えすぎて、現場における、本来の顧客を取り違えてはいけないということですね。

その店や店員に熱いファンがつくという現象は昔からありましたからね。売っているものやSNSに関係なく、です。

それを踏まえたうえで、本書で紹介した仙台の笹かまぼこ屋さんの店長のように、SNSと連動することで、遠方やお店に行ったこともない人も含めファンになっていくといく現象は、これからの新しい売り方を示唆していると思います。現場とSNSがその場で連動して「売ることができる」ようになったことは、スマホの力によるものが大きいですね。

―スマホファーストという言葉も浸透しはじめてきていますね。スマホで運用しやすいよう、SNSのユーザーインターフェースも様々なかたちで調整されています。

しかし、意外にSNSを活用しきれている店は少ないと思います。もちろん活用するのは何も小売の現場でなくても、農作物を作っている現場でも、漁業の現場でも、工場の生産現場でもかまわないわけです。会社さえ許せば、新幹線や球場の売り子さんでも、もっと言えば、普通の営業マンでもかまわないかもしれない。たとえば、ある会社の営業マンがSNSで地道な日々の営業をその工夫とともに発信しつづけていたら、ひょっとしたら売っている現場だけでなく、遠く離れた会社や人から発注が来るかもしれない。

―なるほど。SNSによって、小売の立地条件や、地域の制約を克服することもできるかもしれません。

売っている現場とSNSをうまく連動させれば、その熱が現場だけでなく、世界と結ばれる可能性があると考えています。

―いわば、熱をうまくSNSに乗せ、連動させるということですね。

次の構想は「エロ売り」!?

―ちなみにこの本で取り扱えなかった事例もあったら伺ってよろしいでしょうか?

アーティストやタレントなどの配信が視聴でき、誰でも生配信ができるサービス、「showroom」がおもしろいなと思って結構詳しく書き始めていたんです。でも本書の趣旨と外れていきそうなのでカットしました。正確に言うと、一見さんの私にはまったくおもしろいと思わないことに、これだけの人が集まりおもしろがっていることがおもしろいと思います。

あと要素としては、当初はEMOTIONにもうひとつEをプラスしようと思っていました。それはErotic(エロティック)です。

―エロティック!どんなことを表そうとされていたんですか?

やはりエロは感情を揺さぶる大きな要素ですから。でも、きちんと分析すると分量が多くなりすぎるし、本の空気感も変わってしまう(笑)。なにより「エモ売り8」になってしまうので、泣く泣くやめました。もともと「エモ売り7」はサザンオールスターズの「エロティカ・セブン」へのオマージュでもあるんです。

―なるほど!確かにオマージュとしては、ちょっと語呂が悪くなりますね……(笑)

機会があれば『物を売るエロ』というタイトルで「エロ売り7」にまとめてみたいと思います。

 『物を売るエロ』(書影はイメージです)
『物を売るエロ』(書影はイメージです)

―非常に楽しみです!本日はありがとうございました。


川上徹也さん、ありがとうございました!そして今回ブクログ通信では、『物を売るバカ2 感情を揺さぶる7つの売り方』プレゼント企画を行っております。応募の締め切りは、2018年11月12日(月)終日です。興味おありの方は、ぜひチェックしてみてください!ぜひこの機会にご応募くださいね。

参考リンク

川上徹也さんTwitterアカウント
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