支えてくださった方々の思いがようやく形に 話題のWebマンガ『良い祖母と孫の話』加藤片インタビュー

Webマンガサイト・電脳MAVO(マヴォ)にて2014年に公開され、2000万ページビューをあつめ話題となった加藤片さんの『良い祖母と孫の話』が9月10日に発売されました。

父親と二人暮らしの高校生しょう子。別居していた祖母を引き取ることになり、三人での同居生活がはじまります。祖母は、しょう子の栄養を気にしてお弁当を作りますが、しょう子はそのお弁当を学校のトイレに捨て、菓子パンを買って食べていました。それを祖母に見られ、二人の関係性が変わりはじめる、そんな物語です。
祖母の手作り弁当を孫がトイレに捨てるという衝撃的なシーンが印象に残りましたが、最後は多くの人が涙する形で完結しました。

作中では、印象的なコマも多く、ネットで話題になった際に目にして記憶に残っている方も多いのではないでしょうか?

そんな『良い祖母と孫の話』の作者である加藤片さんに、ブクログ通信編集部がインタビューを行いました。

ー作品を作る上で、影響を受けた作家さんはいますか?

『良い祖母と孫の話』を描くにあたって、クレヨンしんちゃんの劇場版などを手がけられたアニメーション監督の原恵一さんの作品を繰り返し観たので影響を受けているかもしれません。
食事の風景ひとつで人間関係を的確に表現しており、演出の技術が素晴らしいと思います。

良い祖母と孫の話から

ー2000万ページビューという大きな注目を受けましたが、それによって感じたことなどありますか?

第一話のインパクトに勝る絵はもう描けないだろうと思いながら描いていたので、最終話をアップした直後に急に注目されたことには驚きました。
自分自身に関しては、最終話を描き上げたことで心のつっかえが取れて、以前よりのびのびと絵を描けるようになったように感じています。
ネット上で感想をいただくことが増えたので、何かしら心に刺さるものを描けたのだな、と実感しました。

ーネット上で、大勢の方が作品に触れられて反響がありましたが、今回、紙のコミックスになったことに感慨はありますか? 最初に出来上がった本を受け取った時の感想をお聞かせください。また紙のコミックスを出す意義について、どう思われますか?

当初からネットで作品を発表していましたが、作品自体は紙媒体で読まれることを想定して描いていたので、ようやくしっくりくる形になったと思っています。単行本化に関しては、出版社様、編集者様、デザイナー様、書店員様のお力無しには実現できませんでした。ですので、出来上がった本を受け取った時は「作品が本になった」というよりは、「自分の作品を読んで支えてくださった方々の思いがようやく形になった」という感慨がありました。
紙媒体になったことで、ネットでは届かないところにも作品が届けられたらうれしいです。

ー好きな作家さんや好きな本を教えてください。

小説だと、朝井リョウさんの作品をよく読みます。「何者」が特に傑作だと思います。
最近は吉田修一さんの「怒り」を読み終えたばかりで、まだ余韻が消えません。

ー今後、どういった作品を書いていきたいですか?

これまでは、寓話的だったり個人的なテーマを前面に出したような作品が多かったのですが、今後はもう少しエンターテインメントに寄せた作品を描いていくつもりです。

ー今回は短編作品でしたが、今後長編作品に挑戦したいという気持ちはありますか?

はい。時間をかけてキャラクターが成長して進んでいく物語を描ければと思っています。

ーありがとうございました。

今後の作品の方向性や、ご自身の読まれている作品なども語られ、加藤さんの人柄を感じられるインタビューとなりました。
インターネットで発表され、話題になった本作ですが、今後は加藤片さんの作品がどういう場所で発表され、どのような作品になるのか楽しみですね。

気になった方は『良い祖母と孫の話』を手にとってみてはいかがでしょうか。