ファンの質問に全部答えます!新井素子「星へ行く船」シリーズ完全版の刊行記念企画、第2弾!

ファン待望の新井素子『新装・完全版 星へ行く船シリーズ』が9月16日に刊行開始。ブクログでは特別企画として、独占インタビューを実施しました。今回は特別企画の第2弾として、ファンのみなさんから寄せられた質問・疑問に対して、新井素子さん自ら答えていただきました!

『星へ行く船』シリーズについて

質問

『星へ行く船』シリーズで一番思い入れのあるキャラは誰ですか?

ブルーバードさん

新井素子さんの回答

……なんて難しい質問なんだ。ま、どんなお話でも、一人称一視点をとっている限り、その視点人物に一番思い入れないとお話作れないんですが……その原則でいうと、『星へ行く船』シリーズで、一番思い入れがあるキャラは、あゆみちゃんに決まっているんですが、うーん、このお話の場合、他のキャラにも結構思い入れはありますね。
まあ、でも。あゆみちゃんって、結構“理想の私”なので、ここは、あゆみちゃんにしておきます。

質問

かなり前に書いた『星へ行く船』シリーズを、短編とはいえもう一度書くのは難しくはないのでしょうか。上手い例えが思いつかないので申し訳ないのですが、かなり長い間寝ていた子たちを起こして無理矢理動かすという感じなのかなと思うのですが、いかがでしょうか。

「星へ行く船」シリーズは、私の中学高校時代の大切な思い出の本たちです。今もコバルト文庫を手元に置いています。
太一郎さんは、太一郎さんの年齢を追い越した今でも理想の男性です。その太一郎さんにまた会えるなんて夢のようです。

もももさん

新井素子さんの回答

寝ていた子たちを起こして無理矢理動かす……うーん、現象的には、そーだなー、確かに。
私もね、書くまでは、そうなるかなーって思っていました。でも、実際に書いてみたら、全然違いました。(と言うか、私、短編書く前にもの凄くこのシリーズを読み返していたのね。訂正原本版を作る為に、三回も四回も読み返していて、直しをいれていて……そしたら、もう、“寝た子を起こす”んじゃなくて、おひさしぶりーって感じになっていました。)
だから、あのね、なんか小学校の同窓会みたいな感じだったの。おおおおお、ひっさしぶりじゃん! 書きながら、私が思ったのは、こんな感覚でした。懐かしくって、嬉しくって、今でもあんたは元気かいって、ほぼ、そういう感覚。だもんで、書くの、全然難しくなかった……っていうか、とても楽しかったです。
それと。
うちの子達(『星へ行く船』シリーズのことです)を、とっても愛してくださって……本当に、どうもありがとうございます。

質問

はじめて手に取ったティーンズ向けの小説で、その他のものはもうありませんが『星へ行く船』シリーズは今も手元にあります。読み返すと主人公の年齢を過ぎてしまった私でもわくわくし前向きな気持ちになります。
ただ、主人公の置かれた状況はご本人の性格や周囲の環境に惑わされそうですが、かなりハードだなと感じ・・・。
その大きい負荷らをなぜ思いつかれたんだろう?と気になります。

名無しさん

新井素子さんの回答

負荷。大きい、ですか?
いや、考えてみれば、とっても大きいんですけれど。
この時代の私は、とにかく登場人物を極限まで追い詰めて、その、追い詰めて追い詰めて追い詰め抜いたあと、そのひとがどう反発するかを追求しておりました。(というか、思いっきりキャラクターを追い詰めたあと、作者である私が、それをどう克服するか。ほとんど、自分の能力に挑戦って感じで、これをやっておりました。)
あゆみちゃんは、この私の挑戦を見事にクリアしてくれたキャラで、ほんと、一番追い詰めたあとでも、(あの“能力”って、あゆみちゃんの性格を考えるに、追い詰めるにも程があろうって処まで追い詰めたのですが)、それでも、立ち直った。
『そして、星へ行く船』を書き終えた瞬間、なんか、私、「勝った!」って気分になりました。
だから私は、あゆみちゃんが大好きで、『星へ行く船』を、初期の私の代表作だって思っております。

質問

太一郎さんとあゆみちゃん、あれからあの星の生物と意志疎通が出来て無事に任務完了したのでしょうか?
そしてその後の二人の様子と、水沢事務所の皆さんやレイディ、その他の皆さんのその後の様子も知りたいので、是非是非続きの話を何らかの形で書いて頂けたら嬉しいです♡

harulove916さん

そして星へ行く船以降の水沢事務所の人達のその後が気になります。外伝の予定はありませんか?

guliguraさん

新井素子さんの回答

すみません。
この二つの質問、多分、お答えが同じになると思いますので、同時に答えさせていただきます。

『そして、星へ行く船』にFINマークをつけた時。
あの時、私は、ほんとに、ふえーって思ったのです。
書き切った。もう、満足度百パーセント。このお話、綺麗に終わっていて、とっても書き切った気持ち。

と、言う訳で。
“書き切った”って思った時から(いや、そもそも、“書き切った”訳なんですから)、“その後のお話”は、ある訳ないんですが。
ただ。あゆみちゃんも太一郎さんも、私は大好きだったので、ちょっと妥協。
“そのあとどうなったのかを絶対に具体的に書かない”という縛りで、そのあとの蛇足を書いてみました。それが、『αだより』 ※ですね。やってみたら、あゆみちゃんが、太一郎さんのことを“可愛い”とか言っちゃって、も、書いてて楽しいのなんの。
これ、とっても楽しかったです。
すみません、『そして、星へ行く船』以降の、水沢事務所の方々の消息は、これが最後です。
どうもありがとうございましたっ。

※『αだより』は、『星へ行く船』シリーズ完全版5巻『そして、星へ行く船』(17年3月発売予定)に収録されます。

『星へ行く船』シリーズ以外の作品などについて

質問

テイストの違う作品も多く書かれていらっしゃいますが、これまでの作品で一番難産だった作品というとどの作品になりますか?その作品のどういうところが難しかったのでしょうか。

あんずさん

新井素子さんの回答

これはもう。『もいちどあなたにあいたいな』です。
あの作品の、何がどう難しかったのか、今となってはよく判らないんですが、私の、三十年を超す作家人生で初めて、「このお話、なかったことにしようか?」って思ってしまったお話でもあります。本気で書くのやめて、違うお話にしようかって思いました。だから、出来上がった今となっては、とても好きなお話です。

質問

一番最近読了した本はなんですか?

neko5588さん

新井素子さんの回答

これは何と答えていいのやら。
だって私は、一日二冊は本を読むもん。

質問

『ふたりのかつみ』の続きはいつ出ますか?
待ってるうちにおばーちゃんになりそうです。

kikiさん

新井素子さんの回答

 ……。
 …………。
 ………………。
 すみません。
 こういう質問は、版元さんの方に、お願い致します。

質問

大好きなキャラはいますか?

kouhakukouchanさん

新井素子さんの回答

これは……えっと……私のお話のキャラクターのことじゃ、ないですよね? 
なら、私が中学時代からずっと愛し続けていたのは、平井和正さんの『狼男だよ』の、犬神明さまです。この方は、私の、初恋のひとです。(平井さんの狼男シリーズには二つ種類があります。ヤング・ウルフガイと、アダルト・ウルフガイ。私の初恋の方は、アダルトの方の犬神明さまです。)
いやあ。未だに。未だに彼について何か書くと、自然に、呼び方が“犬神明さま”になっちゃうもんなあ。呼び捨てなんか絶対できないし、“犬神明さん”とか、そんな軽い敬称では絶対彼のことを呼べないの。


いかがだったでしょうか。
新井素子さんの初恋のひとが明らかになったので、ファンのみなさんは『狼男だよ』を要チェックですね。
ブクログ談話室で質問いただいたみなさん、たくさんのエピソードをお話ししてくださった新井素子さん、ありがとうございました。

今後も『新装・完全版 星へ行く船シリーズ』の刊行が続きますのでお楽しみに!

著者 新井素子さんについて

araimotoko

1960年東京都生まれ。立教大学ドイツ文学科卒業。 77年、高校在学中に「あたしの中の……」が第1回奇想天外SF新人賞佳作に入選し、デビュー。少女作家として注目を集める。「あたし」という女性一人称を用い、口語体で語る独特の文体で、以後多くのSFの傑作を世に送り出している。 81年「グリーン・レクイエム」で第12回星雲賞、82年「ネプチューン」で第13回星雲賞受賞。99年「チグリスとユーフラテス」で第20回日本SF大賞をそれぞれ受賞。「結婚物語」、「銀婚式物語」、「もいちどあなたにあいたいな」、「未来へ……」など著書多数。

新井素子さんの作品一覧