最新科学を応用できる!仕事や生活にも役立つブルーバックスおすすめ10タイトル他、3月最新刊も一挙紹介!

前編はブルーバックス編集者の家田さんから「趣味」という切り口でおすすめ本をご紹介いただきました!今回は科学の応用が仕事や生活に役立つおすすめ10タイトルほか、3月最新刊についてのお話もお伺いしています。今回で最終回!インタビューを参考に最寄の書店でブルーバックスをぜひ手にとってみてください!

趣味のブルーバックスから3月最新刊までおすすめ8タイトルプレゼント企画も実施しています!最後までお見逃しなく!

取材・文・撮影/ブクログ通信 編集部 持田泰 猿橋由佳

仕事や生活で役に立つブルーバックス!

−こう眺めてみるとやはり「科学新書」だからといって「最新科学の説明」というだけではなく、本当に様々な形に「応用」されていますね。

ふだん意識することはあまりなくても、身のまわりの自然現象や応用された技術まで、生活するうえで必ず科学には触れているはずなので、ブルーバックスで取り上げられるテーマもそれだけ幅広いのだと思います。

—また少し視点を変えて、具体的に「仕事や生活に役立つ」かもしれないブルーバックスというものはありますか?第1弾インタビューで篠木編集長から「理系のためのライフハック」というジャンルを教えていただきましたが、理系文系問わずありそうに思いますが。

自然科学からは離れますが、『論理が伝わる世界標準の「書く技術」』(2012年)『論理が伝わる 世界標準の「プレゼン術」』(2014年)や『研究発表のためのスライドデザイン』(2013年)、「分かりやすい」シリーズで累計65万部のベストセラーになっている『「分かりやすい説明」の技術 最強のプレゼンテーション15のルール』(2002年)などもあります。理系文系にかかわらず、「伝えること」というのは欠かせない能力ですよね。仕事におけるいろいろな交渉現場でとても役に立つのではないでしょうか。

倉島保美『論理が伝わる 世界標準の「プレゼン術」』(2014年)

−おもしろいですね。修辞学ですね。

他には、数学の本ですが『直感を裏切る数学 「思い込み」にだまされない数学的思考法』(2014年)も仕事や生活で役に立つかもしれません。数字の並びを見るだけで不正経理を見抜く方法や健康診断の結果を正確に見極めるコツなど、専門家でさえ間違うこともある「思い込みの罠」を様々な事例で紹介しながら、本質を見抜くための数学的思考法を解説しています。

ひとつしか空いていないスーパーのレジに並んでいるとき、もう一つレジが空くと、待ち時間はどれくらい短縮されると思いますか?

—むむ…。半分になるのではないでしょうか。

この本の中で紹介されているネタですが、直感的にはそう思うのですが、数学的に考えれば間違っていて、待ち時間は2分の1よりもっと短くなるはずなんです。

−そうなのですか……! 僕は「直感」で仕事を進めて痛い目にばかりあっていて、懲りてもいますが、数学的思考はろくに身についているように思えません。

神永正博『直感を裏切る数学 「思い込み」にだまされない数学的思考法』(2014年)

そんな方に是非おすすめしたいです(笑)。
統計でウソをつく法』(1968年)も知っておくと役に立つ思考が身につく1冊です。刊行から50年近く経ちますが今でも支持されていて、累計32万部を突破しているロングセラーの名著です。ブルーバックスの著者の先生方にもファンが多い1冊なんです。統計データやグラフは、見せ方によって印象を大きく変えることもできてしまうので、騙されないためにはどうすればいいかを知ることができますよ。数式は出てこないので、数学が得意でない人にも読みやすいと思います。

ダレル・ハフ・著/高木秀玄・訳『統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門』(1968年)

-自慢じゃありませんけど、数学は得意ではありません。

そんな方に是非おすすめしたいです(笑)。

仕事に「すぐ役立つ」即戦力本

もっと具体的な仕事の現場で使えるものですと、パソコン関係の解説書もあります。最近出た本では『カラー図解Excel「超」効率化マニュアル 面倒な入力作業を楽にする』(2017年)。事務系の仕事でデータ入力が欠かせない方も多いと思うのですが、膨大なデータを手入力していくと、時間もかかるしミスも増えてしまいます。ですが、エクセルの機能をうまく組み合わせれば、大変だと思っていた作業が驚くほど効率よく進められるんです。

立山秀利『カラー図解Excel「超」効率化マニュアル 面倒な入力作業を楽にする』(2017年)

同じ立山秀利先生の『入門者のExcel VBA―初めての人にベストな学び方』も、2012年の発売以来、とてもわかりやすいと評判です。データ入力に限らず、パソコン上で行う面倒な操作を簡単に終わらせられる仕組みも作れるようになります。たとえば、セルのデータを指定した内容に書き換えて、データが完成したら印刷をして終了……というような一連の操作がワンクリックでできるようになったりもします。プログラミング未経験者にもわかるように、基本的な文法が丁寧に解説されているので、「VBAを学ぶなら、まず最初にこの本を買うべき!」と多くの方に支持されてベストセラーとなっています。

―Excelは仕事で使っているけど、VBAまで習得するには少しハードルを感じている方にもおすすめですね。ブルーバックスはPC関連の入門書も多いですね。

そうですね。コマンド入力によるコンピュータの操作を学べる『入門者のLinux 素朴な疑問を解消しながら学ぶ』(2016年)や『知識ゼロからのExcelビジネスデータ分析入門』など、PC関連の実践本は20タイトル以上あります。

そういう「実践」本も多いんですね。

450の研究室、3000人の研究者、100年を迎える理化学研究所、その全貌に迫る

-3月14日に出たブルーバックス最新刊について教えてください。

今月は山根一眞先生『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』唐戸俊一郎先生『地球はなぜ「水の惑星」なのか 水の「起源・分布・循環」から読み解く地球史』伊藤誠二先生『痛覚のふしぎ 脳で感知する痛みのメカニズム』の3タイトルです。

−山根一眞先生の『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』は少しブルーバックスでは変わったタイトルですね。ノンフィクションなのですか?

山根一眞『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』(2017年)

そうです。山根先生には以前に『小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦』(2014年)でもノンフィクションを手掛けていただきました。
理化学研究所はちょうど今年2017年で創立100周年を迎えるんですね。山根先生が仙台から播磨までその現場を訪ね歩き、70人以上の研究者にインタビューを重ねて「今いったいどんな研究が行われ、研究者たちは何を目指しているのか」、その全貌を明らかにしています。

-「450の研究室、3000人の研究者」て、こんなに巨大だったんですか!

はい。自然科学全般を広くカバーしている世界有数の研究所です。最近では、原子番号113の元素の合成を初めて成功させたのも理化学研究所の研究チームです。昨年、「ニホニウム」という元素名がつけられたことで、話題になりましたよね。

「水」からわかる「地球」とは

−次に唐戸俊一郎先生の『地球はなぜ「水の惑星」なのか 水の「起源・分布・循環」から読み解く地球史』ですね。こちらは地球科学の本ですね。

地球は地表の多くが海に覆われていて「水の惑星」と呼ばれたりもしますが、じつは地球の水がいつ、どこからきたのかというのは、まだ結論が出ていない地球科学の大きな謎のひとつなんです。水なんて身近な物質なのに、基本的な謎が解かれていないって意外ですよね。
生命が存在していることや、プレートテクトニクスが起きていることなど、他の惑星ではまだ見つかっていない地球のユニークな性質があるのですが、なぜ地球がそうなのか、その理由にたどり着くカギが水にあるかもしれないそうです。唐戸先生はこの分野の研究では第一人者で、本書でも「起源・分布・循環」というさまざまな角度から迫っています。

唐戸俊一郎『地球はなぜ「水の惑星」なのか 水の「起源・分布・循環」から読み解く地球史』(2017年)

−地球科学は近年ブルーバックスが力を入れているジャンルですよね。

『地球はなぜ「水の惑星なのか」』と似たようなテーマですと、『地球はどうしてできたのか』(2014年)、『地球進化46億年の物語』(2014年)などもあります。
たしかに最近ヒットしている『日本列島100万年史』(2017年)や『地学ノススメ』(2017年)などもそうですし、地学がテーマの本はよく刊行されています。

-最近その億年規模の大きな歴史の視点から描いたものが人気のような気がします。

そうなんですよ。地学ではありませんが、先月出た『宇宙に「終わり」はあるのか』(2017年)などは、宇宙が誕生した138億年前から、「10の100乗年」後という途方もなく遠い未来の宇宙までを語った本で、ベストセラーになっています。
以前、ある地球科学の先生がおっしゃっていましたが、今は分刻みで忙しい時代だからこそ、「悠久の時」の流れの中から歴史を振り返ることのほうがかえって人気を集めるのかもしれないですね。

「痛み」とは「脳科学そのもの」?

-もう一冊が、伊藤誠二先生の『痛覚のふしぎ』ですね。

「痒いと痛いはじつは同じ?」「ジンジン痛むとビリビリ痛むはどう違う?」「鎮痛薬をのむと痛みが消えるのはなぜ?」など、日常のさまざまな場面で誰もが体験する「痛み」を、生化学・分子生物学の立場からわかりやすく解説してもらっています。私たちが「痛いっ!」と感じたとき、受けた刺激によって皮膚の下にある受容体が活性化されます。そして、その情報が感覚神経を通り、脊髄から大脳に伝わり、痛みとして認識されるそうです。

伊藤誠二『痛覚のふしぎ』(2017年)

-なるほど…ちょっと難しいですね。

痛みは脳が感じているものなので、この一連のメカニズムを見ると、痛覚というのは脳科学と言ってもいいのかもしれません。認知症の問題となる記憶学習のメカニズムとも共通する点が多いそうですよ。

-なるほどそういうものなのですね。

身近なところからわかる「科学のおもしろさ」

-最後に、ブルーバックスを待っている読者に一言いただけますか。

理系の方に限らず興味を持っていただけそうな本をご紹介しましたが、身近なところから科学のおもしろさを知ってもらえる機会につながれば嬉しいです。すでに2000冊もの本を出してきたブルーバックスですが、科学はどんどん進歩するものですし、新しい視点で、より多くの方に楽しんでもらえるものが作っていけたらと思っています。

-「身近なところ」に「科学」があるのだと改めて認識した次第です。その扉を開いてくれるブルーバックスを今後も応援していきます!本日はありがとうございました!


4回にわたったブルーバックス連続インタビュー今回で最終回です。創刊からの歴史を紐解き、ベストセラーの意外な裏話、ビギナーにうれしいタイトルの選び方、そして今回、家田さんからは「趣味に」「仕事」に役立つの視点から、バリエーション豊富なブルーバックスを様々にご紹介いただきました。いかがだったでしょうか。書店でブルーバックスの棚の前で少し立ち止まってみたくなりませんか?今回の連続インタビューを参考にしてぜひ気になるタイトルを気軽に手に取ってみてください。「科学」との素敵な出会いがあるはずです。

最後にブルーバックス編集部の皆さま、長時間のインタビューにお付き合いいただき誠にありがとうございました!


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