『あるかしら書店』刊行記念!ヨシタケシンスケさんインタビュー

ポプラ社の文芸PR誌asta*で大人気だった連載「頭の中書店」が、『あるかしら書店』とタイトルを新たに本になりました! 刊行を記念して、ヨシタケシンスケさんにお話を伺いました!

取材・文・撮影/ポプラ社 WEB asta編集部

頭の中で考えた、頭の中にしかない書店

−編集部:『頭の中書店』として連載中、本にまつわる妄想を広げた見開き2ページの物語は毎回とても大きな反響がありました。

ヨシタケ:asta*という雑誌が、書店で配られるPR誌だということを聞いていたので、本を扱う人たちや、扱われる本をテーマとして「頭の中で考えた、頭の中にしかない書店」という形で連載を進めてきました。いざはじめてみると、すごく楽しくて、あらためてぼくは本が好きなんだなということに気がつかせてもらいました。世の中にいろんな本があるのと同じように、本にまつわる妄想やアイディアも尽きなかったです。もちろん毎回とても苦労はしましたけれど(笑)。

−編集部:ページをめくるたびに、思いもよらないお話が飛び出してくる楽しさがたまりません。どんな風に発想を広げていくのですか?

ヨシタケ:この本の場合は、妄想を広げていくときにいつも「本って何だろう」という根本のところまで戻っていました。例えば、本は普通「四角いもの」ですよね。そこから発想したのが「本が四角い理由」というお話。「本ってだいたい四角いよね、でも四角くなくてもいいよね、昔はひょっとして四角くない本もあったんじゃないかしら」という感じで膨らませていって。普通に考えれば「コストが低いから本は四角い」ってことなんだけど、それだとロマンがないじゃないですか。どんなものにもほんとうの理由があるんだけど、そこは言わずに、もっともすぎない、くだらない理由なのにそれが世の中を動かしちゃうことがあるよね、みたいな思い入れで、あのお話を描きました。
月明かりの下でだけ読めるという「月光本」は、本のよさについて考えを膨らませた妄想ですね。本のよさってなんだろうって考えると、やっぱり「いつでもどこでも読める」ことだなと思ったんです。じゃあ逆に、いつでもどこでも読めるわけではない、場所とタイミングが限定されている本っていうのがあってもいいよね、という逆の発想で生まれたお話です。本って、いつでも読めると思うから読まない気がするんですよ。同じ発想から、「賞味期限があってどんどん腐っちゃう本」みたいなお話も考えましたね。

連載「頭の中書店」から、書籍『あるかしら書店』へ

−編集部:書籍化にあたり、たっぷり書き下ろしをしていただきました。タイトルも変わり、連載を読んでくださった方にも本として新たに楽しんでいただける一冊ですね。

ヨシタケ:「頭の中書店」は、「本にまつわるもの」というテーマで繋がってはいたのですが、本にするときに、一冊をとおしたストーリーの軸のようなものを作ろうということになって。それで、「○○な本ってあるかしら」と聞けば「ありますよ」と本を出してくれる、「本にまつわる本屋さん」を舞台にしようと考えて、『あるかしら書店』というタイトルにたどり着いたんです。あんまり説明的すぎない、世界観がやんわり伝わるみたいな楽しいタイトルが好きなので、『あるかしら書店』はとても気に入っています。

−編集部:「こんな本、あるかしら」ってつい聞いてみたくなってしまいますね。

ヨシタケ:僕が一番嬉しいなと思うのは、本のタイトルや内容を読んだ読者の方が、「自分だったらこう考えるな」というような感じで何かを考えはじめてくれるという現象なんです。僕が描いたものが、何かを考え始めるきっかけになったらすごく嬉しい。「本に隙間が空いている」という言い方を僕はするんですけど、本を読んでいる人個人の経験や感情が当てはまるような隙間が空いている、ついつい自分なりの考えを入れ込みたくなっちゃうような構造をしている本に出会った時に、そういう現象が起こると思っているんです。僕はそういう本を面白いと思うし、どんな本が作りたいかと聞かれればそういう本が作りたいんですね。

書店員さんという心強い存在

−編集部:『あるかしら書店』の店主は、どんな本でも取り出して紹介してくれる敏腕書店員ですね。ヨシタケさんにとって、書店員さんの存在って、どんなものなのでしょうか。

ヨシタケ:今は絵本作家として認知していただけるようになりましたが、僕が最初に『りんごかもしれない』という絵本を出した時はまだ、ただのイラストレーターで、その10年くらい前に出したイラスト集もぜんぜん売れていなかったんです。だから絵本が出ても注目してもらえるなんて思ってもいなかった。それなのに、結構多くのお店で『りんごかもしれない』をちゃんと展開してくださっていて、多くの書店員さんが「昔ヨシタケさんが出されたイラスト集を持っているんですけど、あのヨシタケさんが絵本を出したんだと思ったら嬉しくて展開してます」って言ってくれていたらしいんです。
全然売れなかったイラスト集で、正直なところ一体誰が読んでるんだろうなって思っていたんですが、書店員という生き方を選んだ人たちの中に、これを気に入っておぼえていてくれた人たちがいたんです。その人たちが、絵本をちゃんと書店に置いてくれてみんなの目に触れるようにしてくれた。僕自身が書店員さんに助けてもらったという経験があるんです。絵本が出て、あちこちの書店に行かせてもらいましたが、「わたしはこの本をここにこう置きたい」「この本をこういう人に届けたい」というプライドを持った書店員という生き方にすごく勇気付けられたし、この本を作る力にもなったと思っています。

−編集部:どんな人に読んでもらいたいですか?

今は本以外にも楽しいものがたくさんあって、本屋さんにあんまり行かないという人も多いかもしれないですよね。でもやっぱり僕は本も本屋さんもすごく面白いと思うし、まったく本を読まないひとにも「こういう紙の束ってなんか面白いよね!」とおすすめしたいんですね。とはいえ、僕自身も活字の本って実はほとんど読まないんですけど(笑)。僕はちゃんと本が読めないから、読めたらいいなあ、本ってかっこいいなあという憧れをずっと持ち続けていて、そういう気持ちで描いているところがあるので、本をそんなに高尚なものだと捉えないで、「なんだか面白そう」くらいに思って手にとってもらえたらいいなと思っています。あとは、書店員さんにも是非読んでもらいたいです。読んでニヤニヤしてもらえたらいいなあとも思います。

本の詳しい情報はこちら → 『あるかしら書店』

著者:ヨシタケ・シンスケさんについて

1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。『りんごかもしれない』で第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞、『りゆうがあります』で第8回MOE絵本屋さん大賞第1位を受賞。『もうぬげない』で第9回MOE絵本屋さん大賞第1位、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞。『このあとどうしちゃおう』で第51回新風賞を受賞。その他、著書多数。2児の父。

ヨシタケ・シンスケさんの作品一覧

この記事の提供元